
三重初のJリーグ目指す「FC.ISE-SHIMA」 真珠加工や福祉などの仕事と両立する選手たち

東海3県にあるJリーグのチームといえば、愛知にJ1の名古屋グランパス、岐阜にJ3のFC岐阜がありますが、これまで三重県にはJリーグのチームがないんです。そんな三重で“初”のJリーグを目指す伊勢のチームを追いました。

Q.何をしているんですか?
「(真珠の)色の選別をやっていて、色を分けています」
三重県伊勢市の真珠加工会社で働く28歳は、仕事と両立しながら、ある夢を追いかけています。
「伊勢でJリーグをというのに貢献したい」
三重初のJリーグを目指す「FC.ISE-SHIMA」のフォワード西口亮城選手(28)。
在籍7年目。地元・伊勢市出身のストライカーです。
「地元でやるとみんな応援に来てくれたり、街中で声を掛けてくれるのがうれしい。それが頑張れる要因でもある」(西口選手)
午前中しか練習できない理由

ある日の平日。午前7時半に「FC.ISE-SHIMA」の選手たちがいたのは、伊勢市内にある公園。
この日は9時からしかグラウンドが使えないため、隣の公園でウォーミングアップをしていました。
ようやくグラウンドに入っても、練習できるのは11時までの2時間のみ。
午前中だけしかトレーニングできない理由があるんです。
Jリーグ・JFLの下のカテゴリー、地域リーグの「東海サッカーリーグ」に所属する「FC.ISE-SHIMA」。
プロの選手と違い、全員が仕事をしながらサッカーをしています。
そのため午後にはそれぞれの会社に出社。仕事が待っているんです。
会社も選手をサポート

練習がない平日は、1日中働いている選手が大半。
さらに土日は試合があるため、休みはほとんどありません。それでも――。
「会社の人にもサポートしてもらっているので、不安・きつさは感じていない」(西口選手)
よく試合の応援に行くという職場の上司も、西口選手の働きぶりを評価しています。
「朝から練習してきたのかというくらい、一生懸命働いてくれる。社交的ではないとは思うが…スポーツマンらしい好青年」(工場長 小牧正拓さん)
エース選手のもう一つの顔

そして、もう1人。
西口選手と同じ伊勢市出身で、Jリーグの舞台へ人一倍熱い思いを持つ選手がいます。
去年、東海サッカーリーグでMVPと得点王に輝いた濱田竜輝選手(25)。
FC.ISE-SHIMAのエース。もう一つの顔は?
「お茶入れたのでゆっくり飲んでください」
「ありがとう」
伊勢市の隣、明和町にある福祉施設。気迫あるプレーとは打って変わって、優しく穏やかな雰囲気で入居者と接しています。
「とても丁寧に介護してくれてありがたい」(入居者)
「サッカーがあるから今の仕事もできている」

入居者の皆さんにサッカーをしている姿を見てもらいたくても、地域リーグの試合はJリーグと違い、テレビ放送やネット配信が頻繁にあるわけではありません。
「見に行けないのが残念」(入居者)
「テレビかなんかでやればね」(濱田選手)
「また連れていってください」(入居者)
「僕はサッカーが大好きで、サッカーがあるから今の仕事もできている。サッカーができていることが幸せ。社会人になって経験できることではないので、すごく楽しんで生活しています」(濱田選手)
去年、地域リーグで悲願の初優勝

FC.ISE-SHIMAの理事長は、元日本代表の小倉隆史さん(51)。
“レフティモンスター”の異名を持ち、グランパスでも活躍しました。
仕事と両立する選手たちの頑張りに、小倉さんは――。
「練習して仕事してという毎日。もっと上のレベルでやりたいと努力している姿は尊敬できる。よく頑張っている。直接は言いたくないですけど(笑)」
去年、FC.ISE-SHIMAは東海サッカーリーグで悲願の初優勝!
Jリーグのひとつ下のカテゴリー、JFL昇格がかかるステージに進出しました。
しかし、結果は3戦全敗と昇格ならず――。
「個人のクオリティーが全然違う、僕らはそんなにうまくないから、体を張って粘り強くやるスタイルをより磨き上げていきたい」(西口選手)
選手たちの挑戦は続く

迎えた今シーズン。持ち味である体を張った守備で、失点はリーグ最少!
中盤にさしかかり、優勝争いは混戦です。
真珠加工会社で働く西口選手に、福祉施設で働く濱田選手もゴールを挙げるなど、チームに貢献しています。
「今年は(去年と)ほとんど同じメンバー、プラスで選手が入ってきてという形。チームとして上積みはできている。勝つ自信はある」(濱田選手)
三重県からJリーグへ。仕事と両立しながら夢を追う選手たちの挑戦は続きます。
「今回こそは必ずJFLに昇格して、昇格した姿をみなさんに見せられるよう頑張りたい」(濱田選手)
(2025年6月12日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ+』じもスポコーナーより)