7年以上続いた「黒潮大蛇行」が終息する可能性 海水温の上昇で不作だった「岩ガキ」や「ひじき」への影響は 三重・鳥羽市

いよいよ夏の到来が近づいてきましたが、ことしの夏は厳しい暑さが少し和らぐ可能性が出てきました。その理由は7年以上続いた太平洋側の「黒潮大蛇行」の変化です。
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その影響が三重県にも…。三重県鳥羽市の的矢湾に面した畔蛸町(あだこちょう)。リアス式海岸が広がるこの辺りは、県内有数の「岩ガキ」の養殖地です。
ここで育った岩ガキは「あだこ岩ガキ」というブランドとして、東京の飲食店などで1個2000円ほどで提供されている高級品です。
(中道陸平記者)「肉厚で噛めば噛むほど、カキのミルク感がたっぷり口の中に広がります」
「岩ガキ」は5月下旬ごろに旬を迎えますが、ここ数年は、海水温の上昇などの影響で不作が続いていました。ことしの出来は…
(北川二一さん)「ここ何年かよりは全然いいというか、戻りつつあるという感じ」
こちらの北川二一さんの養殖場では、7月上旬ごろまでが出荷シーズンで、去年2万個ほどだった出荷量は、ことし既に上回っているものの以前の水準まではまだ戻っていません。
海水温の上昇などでも、収穫が好調な「フノリ」
一方、収穫が好調なものも…。岩の表面にびっしりと張り付いた、天然の「フノリ」。3月から今月末までの約3か月間に400キロほどの収穫を見込んでいます。
「フノリ」の好調さとは裏腹に、先月下旬に収穫が解禁された「ひじき」は、ことしはほとんど取れないといいます。
(北川二一さん)「(ひじきの)胞子が高水温で付かなくて、フノリの方が胞子が強くて上に乗っているという感じ」
『岩ガキ』や『ひじき』の不作の原因の一つとされるのが海水温の上昇ですが、これをもたらした要因とされているのが、『黒潮大蛇行』という現象です。
7年以上続いた「黒潮大蛇行」が収束する可能性
本州の南側を流れる暖かい海流「黒潮」。この「黒潮」は2017年以降、紀伊半島沖で南に大きく蛇行する「正常ではない」状態が長く続いていました。
(海洋研究開発機構 美山透 主任研究員)
「黒潮大蛇行の時は紀伊半島の南を大きく蛇行するので。そこから急に北上し本州の方に近づいてくるので、黒潮が直接流れ込みやすい状況になる。水温が上昇したり、黒潮は栄養分が比較的少ない水ですので、栄養分が不足気味になったりする」
しかし今月9日、気象庁は海水温の上昇の要因とされる「黒潮大蛇行」について「終息する兆しがある」と発表しました。実際、海面水温の平年差を示した図を見てみると、去年5月は平年より高いことを示す赤いエリアが多いのに対し、ことし5月はほぼ平年通りの白色が多くなっていて、三重県鳥羽市の漁師、北川二一さんも去年のような記録的な高水温が終息することを期待しています。
(北川二一さん)
「ちょっとでも海水温が下がってくれると『マガキ』にも『岩ガキ』にもいい。今まで悪い話ばかりだったので楽しみは楽しみ」
「大きな蛇行は目立ってないという状況だが…」
海水の温度が去年よりも低くなった一方、一度変わってしまった海の状態が完全に元に戻るかどうかは分からないと専門家は指摘します。
(海洋研究開発機構 美山透 主任研究員)
「大きな蛇行は目立ってないという状況ですが、近くに大蛇行の元になる渦とかが存在しているので、このまま完全に終息していくか、もしかしたら再開するかは注意深く見ている。今回の大蛇行は異例に長い7年9か月の今までなかったような大蛇行なので、地球温暖化とか自然のバランスが崩れていくようなサインかもしれないので、そういう意味では今回の大蛇行が終わるとしたら、ほっとする部分はある」