【参院選/何で選ぶ?】家族のあり方を決める選択的夫婦別姓の導入について、あなたはどう考える? 争点となる各党の考えは?

今回の参院選の争点の1つが「選択的夫婦別姓」です。
導入について、各党の考えは、推進、慎重、反対とさまざまです。
そこで、別々の名字を20年以上使い続けた弁護士夫婦のほか、街の人々の声を取材しました。
それぞれ違う名字を20年以上使い続けた弁護士夫婦が入籍したワケ

名古屋市中区に、弁護士夫婦の事務所があります。
入口のポストには在間(ざいま)と伊藤、2つの名字が認められます。

在間正史(ざいま・まさし)さん(75)と伊藤道子(いとう・みちこ)さん(76)は、2人とも戸籍上の名字は伊藤です。しかし、弁護士としては、それぞれ旧姓で活動しています。
49年前、妻の伊藤さんの希望で、入籍せずに事実婚を選んだ2人。
伊藤道子さん:
「私どもは夫婦ですけど、別姓でやっています。仕事上、夫は弁護士・在間正史、私は弁護士・伊藤道子で仕事をしています」

アルバムを持って現れた在間さんが見せてくれたのは、家族の姿を撮影した写真でした。
伊藤道子さん:
「(子ども2人が)生まれてから撮った4人の写真ですね。懐かしいですね。こんな時もあったんだな」
夫婦は2人の子どもに恵まれ、4人はとても仲の良い家族でした。

伊藤道子さん:
「両親の名字が違うことについて、子どもたちは『何も関係がない』と言ってました」
ただ、周りの人々の意見は違いました。
伊藤道子さん:
「どうしてそんなことをするの?というような。特に、子どもがかわいそうじゃないのという意見は確かにありました」
さらに子どもが成人した後、ある不安が2人に押し寄せてきました。
伊藤道子さん:
「例えば、パートナーが意識不明で倒れた場合、そこに私が駆けつけたとしても、住民票上では私は単なる同居人なんですよ。『あなたは関係ない人だから立ち入らないでください』と言われたらそれまで。ヘタしたら、死に目にも会えないかもしれない」
そうした事情もあり、夫の在間さんは入籍して名字を伊藤に変えることを決断しました。

ここで在間さんが取り出したのは、弁護士であることを証明する身分証明書です。
在間さんは、婚姻によって名字が変わっても社会生活では旧姓を使い続け弁護士活動を続けてきましたが、そのためには手続きが必要だったといいます。
在間正史さん:
「手続きのための届を出すことで、弁護士『伊藤正史』に変わるわけですよね。不自然です。やっぱり僕は『在間正史』。『伊藤正史』というのは仮の姿です」
2人が望むのは、夫婦の名字を同じにするか別にするかを自分たちで選べる選択的夫婦別姓の導入です

伊藤さんと在間さんの弁護士夫婦が、現在の選択的夫婦別姓の制度に対して思っているのはどんなことなのでしょうか。
伊藤道子さん:
「今の制度だと、結婚するときには姓を捨てないといけない。それだと、それまで築き上げてきた社会的実績はいったん途切れてしまいます」
在間正史さん:
「選択的夫婦別姓が早くできてほしい。それに尽きます」
選択的夫婦別姓の導入について、街の人々の声は?
法務省によりますと、夫婦の名字を同じにしなければならない国は世界で日本だけ、といいます。
また、内閣府・男女共同参画局が発表した2023年の調査結果では、94.5%の夫婦が夫の名字を選択しています。
国連の女性差別撤廃委員会は、日本のこの状況が差別的であるとして、法改正を求める勧告をこれまでに4回(03年、09年、16年、24年)出しています。
一方、経団連をはじめとした経済界からも、選択的夫婦別姓の導入を求める声が上がっています。
街の人たちに意見を求めると、賛成と反対の両方に分かれました。
選択的夫婦別姓に反対の70代女性:
「私の世代からすると別姓は反対ですね。子どもとか孫が困るのではないか。きょうだいで違う名字になると、混乱するのではないかと思う」
選択的夫婦別姓に反対の20代男性:
「反対です。無理して(制度を)変えなくてもいいのではないかと思う。名字が同じの方が(家族の)一体感が出てくると思う」
選択的夫婦別姓に賛成の20代女性2人組:
「選択肢としてどっちでもいいですよっていう制度になればいいんじゃないかなと思います。『名字が違うからあなたは家族じゃないよ』というのは、違う気がするし。本人の意識の問題だと思っています」
選択的夫婦別姓に賛成の30代女性:
「仕事しながら戸籍とか免許証とか保険証とかを変えて、仕事の登録とかも変えていくのはすごく大変だなと思っていたので、名字を自由に選べるようになったらいいなと思います」
選択的夫婦別姓に関して、各党の考えはどう違う?
それでは、選択的夫婦別姓が採用され夫婦が異なる名字になると、戸籍はどうなるのでしょうか。現在、戸籍への記載は名前だけです。法務省の公式サイトに、別姓夫婦の戸籍記載例が紹介されています。

仮に夫婦別姓になった場合には、名前だけでなく名字も記載されます。配偶者も同様に、名前といっしょに名字も記載されます。
その他の部分は変わりません。
一方で、選択的夫婦別姓に関連して、SNSなどでは「戸籍を破壊する」という意見も見られます。
それに関連して、昨年2月の国会で選択的夫婦別姓に関する質疑応答がありました。
「選択的夫婦別姓を導入すると、戸籍は壊れると思いますか?」という議員の質問に対して、当時の法務大臣は「導入された場合であっても、戸籍の機能や重要性は変わらず、大きな問題が生ずることはない」と答弁しています。

今回の参院選の争点の1つにもなっている選択的夫婦別姓の導入。各党の考えは以下の通りです。
▼推進:女性の社会進出の妨げになる。結婚で名字が変わることで、アイデンティティーを失うと感じる人も。→公明、立憲、国民、れ新、共産、社民。
▼慎重:“旧姓の通称使用(婚姻によって戸籍上の名字が変わっても、社会生活では旧姓を通称として使い続けられる)”の拡大→自民、維新。
▼反対:夫婦の名字が異なると、家族の一体感を損なう→参政、保守。