
名古屋の中学校 給食は愛知県で唯一「弁当持参」か「冷めたおかずのスクールランチ」の2択 政令市でただ一つ 継続の方針なぜ?

名古屋市は全国でも珍しい、「お弁当」か「業者が作ったスクールランチ」かを選ぶ選択制給食です。
全員同じメニューの給食とどう違うのか、生徒や親はどう考えているのか。
「深掘り」してみました。
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長久手市立長久手中学校。この日は卒業式前日で、3年生の教室では最後の給食です。お赤飯に鶏のから揚げ、スープなどの卒業祝いメニュー。もちろんすべて温かいままです。
「いただきます」と同時に黒板の方に集まる生徒たち。
余ったおかずの争奪戦、名付けて「牛乳じゃんけん」は毎日の恒例でした。
先生も巻き込みながら盛り上がります。
小学校から9年間、慣れ親しんだ給食ともきょうでお別れです。生徒たちも…
(生徒)
「めっちゃおいしかった。私たちのために考えて作られているのでありがたい」
「すごく幸せな時間でした。温かくておいしいし、じゃんけんで盛り上がるのが楽しかった」
「学校に来るモチベーションが“牛乳じゃんけん”だった。“牛乳じゃんけん”があって良かったと心の底から思っている」
このクラスにとって給食は絆を作ってくれた「同じ釜のめし」なんです。
(生徒)
「給食が残らないときはもっとうれしさが増した。『みんなで食べ切った』という達成感みたいなものが得られてうれしかった」
「弁当持参」か?「おかずが冷めたスクールランチ」か?
一方、こちら名古屋市立明豊中学校。
お昼の給食は長久手市のように全員同じメニューではありません。
家から持ってくる「お弁当」か学校が業者に発注する「スクールランチ」かを選ぶ、選択制給食です。
スクールランチは1食320円。3日前までの予約が必要です。教室で食べる場合はランチボックス。おかずは食中毒対策で10℃以下に冷やして持ってくるため温かくはありません。
お弁当か、スクールランチか。生徒に好みを聞いてみると・・・
(弁当派の生徒)
「いつも弁当です。最高です」
Qスクールランチに浮気は?
「ないです。親が作る弁当が一番おいしいからです」
「毎日お弁当を作ってくれていて本当に感謝しています」
「いつもは量が多くて食べきれないけど、きょうは食べ切れそうだったのでスクールランチにした」
(スクールランチ派の生徒)
「ほぼ毎日スクールランチです」
名古屋市の“選択制給食”継続は政令市で唯一
選ぶことを通じて自主性を育てるのが意義だといいますが、こうした形での給食、実はごく少数派なのが実態です。
名古屋市に隣接する自治体は長久手市も含め全員制の給食。
そして県内の他の市町村も全てそうです。全国20の政令指定都市で見ても名古屋市以外の全市が全員制になっています。
その一つ、来年1月に完全移行する神戸市では。
(神戸市教育委員会事務局 川西聡子 健康教育課長)
「兵庫県下でも『温かい給食』をやっていないのは神戸市だけだった。世間的にも温かい全員給食が普通です。これはやるしかないと。ランチボックスの時は(量が)足りない子は足りないし、多い子は残してしまって『食品ロス』の観点からもあまりよくない」
神戸市は4年前、「全員給食がいいか」、「温かく量も調整できるのがいいか」を聞いたところ、9割近くが賛同したためすぐに実施を決定したといいます。
一方名古屋市はおととし、現在の選択制給食について「今の方法でいいか」を聞いたところ9割近くが「今のままでいい」と回答。
しかしスクールランチは量が多く時間内に食べきれない生徒が多いことも分かりました。
名古屋市全体でスクールランチを選ぶ生徒は約半数で他の生徒はお弁当です。
「朝は大変です」保護者は弁当づくりに奮闘 全員給食を望む声も
名古屋市のある家庭では、余裕が無い中、お弁当を毎日作っているといいます。
(中1女子の母)
「仕事(開始)が朝早いときがあるので、そのときは5時に起きてお弁当を作って身支度も調えている。朝は大変です。お米の価格が毎月上がっている中で冷凍食品も入れるけど、それも値上がりしている。野菜もすごく高い。お弁当にしたら安くできると思っていたけど…」
そして名古屋の公立中学校の卒業式で保護者に「頑張ったこと」について尋ねると。
(卒業生の母)
「毎日のお弁当作りです。朝早く起きるのがつらかったが、娘のために頑張った」
「お弁当と、朝起こすことですね。よく頑張った」
「全員制の給食はぜひ検討してほしい。少しでもお母さんたちの負担軽減になる」
去年、名古屋市長選挙で争点になった「小学校」の給食費無償化について街で聞いたときもこんな声が聞かれました。
(街の人)
「名古屋市民としては無償化よりも、中学で給食を作ってくれた方がありがたいです。尾張旭市など隣の市は中学校給食があったので・・・」
やはり親にとっては大きな負担です。温かい全員給食を望む声も決して少なくはありません。
学校給食や子どもの貧困などを研究する大学教授は、そもそも給食は全員制が理想だと話します。
(跡見学園女子大学 マネジメント学部 鳫咲子 教授)
「安心して家庭の格差がお弁当に反映されるということがなく、(全員)給食を食べられることが望ましい。子どもたちにとって何がいいのかと考えると『みんなが同じメニューを安心して食べられる給食』という意義。小学生だけではなく中学生以上にも利益を受けてもらいたい」
名古屋の給食の今後について名古屋市の広沢市長に聞くと・・・。
(名古屋市 広沢一郎市長)
「圧倒的多数が小学校と同じような給食を望むようであれば、そうしていくべきだと思うし、『今くらいでちょうどいい』という声が多ければ、継続ということになるかと思う」
Qスクールランチのメリットは?
「まだ『お弁当を持たせたい』という家庭もあるので、『お弁当がいい』家庭はお弁当、『スクールランチがいい』家庭はスクールランチと、『選べるようになった』というのはメリット」
今後も選択制給食を続けるという名古屋市。
どちらにせよランチは学校生活で最も楽しい時間の一つ。
子どもたちにとってより良いものになってほしいものです。