
週末は森のオーナーに 「森レンタル」で手に入れる“大人の秘密基地” 地球温暖化や獣害対策にも一役買う放置された森の新たな活用術 岐阜・東白川村

地球温暖化対策として重要な森。それが放置されて問題となる中、森を1年間借りて自分好みの空間にできるというサービスが評判になっています。今、注目を集める「森レンタル」。その魅力に迫ります。
自分だけの森で過ごす贅沢な休日 広がる「森レンタル」という選択肢

緑豊かな岐阜県東白川村。ここでは、年単位で森が借りられる「フォレンタ」というサービスがあり、多くの人が契約しています。

岐阜県可児市から通っている市原さんは、借りている区画の石を掘り返して、砕いて、積んで、1年半かけて小屋を作りました。ベッドや椅子もあり、生活できる空間になっています。
市原さんが契約するこの森は、117区画に分けられていて、ひと区画の広さは200坪から300坪ほど。年間のレンタル料は6万6000円で、ほとんどの区画が埋まっています。
落ちている木や石は自由に使ってよく、細い木であれば切ってもいいルールです。

岐阜・可児市から通う 市原さん:
「もともとピザ釜を作ってピザを焼く練習をしだして、ピザでもパンでも焼けるように。こんな感じで小屋建てたりってなかなかできないので、重宝させてもらってます」

森の使い方は、人それぞれ。
森をレンタルして丸4年になる長縄さんは、定期的に通い続けたからこその喜びがあるといいます。

愛知・弥富市から通う 長縄さん:
「鳥小屋いくつか作ったら、本当にそこを使ってくれて、卵を産んでヒナを育てていた。大人になって、こんなに初めてのことがたくさんあるって感動ですね」
みなさん思い思いに「森レンタル」を楽しんでいるようです。
放置林対策にも期待! 全国29カ所の森で展開

森レンタルの仕掛け人は、祖父の代から東白川村で林業・製材の会社を営んでいるという田口さんです。

田口さんが貸し出している森は、木材として使われるスギやヒノキなどを育てるための人工林。そこで森レンタルを始めたのにはワケがありました。
シシガミカンパニー 田口房国社長:
「昔は木を切って売れば、それなりにいいお金になった。でも、最近はそういうふうではなくなって」

かつては家や家具づくりに欠かせなかった木材。しかし、コンクリートや鉄筋などが建物に使われるようになると、その価値は急降下。木を切って売る方が赤字になる所も出てきて、オーナーが森を放置する、いわゆる“放置林”が全国で問題になっているのです。

農林水産省の元職員で森の専門家でもある長野さんも、放置林の問題を指摘します。
モリアゲ 長野麻子代表取締役:
「人の手でつくられた森は、ある程度、人の手を入れ続ける必要がある。例えば、間伐しないでいると下に光が届かず土がむき出しになり、土砂崩れを誘因したりする」

田口さんの森レンタルサービスは、放置林の対策として期待されていて、北海道や鹿児島など全国29カ所の森で展開されています。
モリアゲ 長野麻子代表取締役:
「森を借りた人たちって、自分で水をひいたり、自分たちでフィールドを整えたり、力のある人たちだと思うので、そういう人たちが森に入って、お手入れが進むという面がある」
新たな可能性を見いだす森レンタル。意外な効果を生んでいました。
「ここはまだ人がいる場所」 森レンタルが動物との境界線を取り戻す

岡崎市から車で2時間かけて来るという中谷さんも利用者の一人。この日は、荒れ放題だった地面をならして、テントを張るための場所を作っていました。

すると、おもむろに作業の合間のモグモグタイムに。具材は赤ウインナーだけのシンプルなラーメンです。最後にこだわりのマイ調味料をふりかければ完成!
岡崎市から通う 中谷さん:
「赤ウインナーと塩ラーメンが好きなんで。作業していて塩分が欲しいので、混合調味料的なやつです。山で食べるラーメンって、なんでこんなにおいしいんですかね」

マイペースに自分の空間を楽しむ中谷さんですが、普段は仕事に追われる毎日だといいます。
岡崎市から通う 中谷さん:
「平日に考えたり悩んだりすることを、ここで単純作業をすることで、だいぶ頭の中が整理できるようになった。すごいしんどくなっても『エエわ、次の週末山行けるわ』とかね」

そんな中谷さんが、ぼそっと気になることをつぶやきました。
岡崎市から通う 中谷さん:
「その辺の裏とかにシカのトイレがあった。もう今は自分が(森に)入ったので、いなくなっちゃいましたけどね」
かつて、人が管理していた森が放置されたことで、動物が人里に近づく原因となっていました。しかし、森レンタルをきっかけに人が戻ったことで、こうした状況に変化が現れているようです。
モリアゲ 長野麻子代表取締役:
「(放置された)山に人が入ることは『まだここは人が使うんですよ』と、野生動物に対しての意思表示になる」
獣害対策にもなる森レンタル。再び人が森に入ることで、様々な環境課題を改善するのか。今後も注目です。