
”地球沸騰化”の救世主は、子どもたちに人気の”あの生き物”⁉ 双子の兄弟が立ち上げたキノコの菌床の有効利用できる事業とはー

「猛暑は恐ろしい影響をもたらしている。人類は地獄の門を開けてしまった」
2023年7月、国連のグテーレス事務総長は記者会見の場で警告しました。

地球は温暖化を通り越して、沸騰化時代に突入しようという危機的状況にあります。
かつてない暑さが続き、日本の平均気温は過去最高を2年連続で更新しています。
待ったなしの沸騰化対策が求められる中、ある生き物の活躍が期待されています。

その生き物は、カブトムシ!
「羽根の部分がすごくきれいな見た目をしていますし。かわいさでいくと、角の下の毛ですね」
カブトムシ愛あふれるこの方は、石田陽佑さん(27)です。

石田さんは双子の弟として生まれました。兄の健佑さんも同じくカブトムシが大好き。
そんな2人が立ち上げたのが、カブトムシなどの昆虫に関連した事業を行うベンチャー企業「TOMUSHI」です。
石田さんによりますと、7年前にカブトムシの繁殖を始めたところ、驚きの生態を発見したといいます。

TOMUSHI代表取締役CEO石田陽佑さん:
「カブトムシがあるものをエサとして食べることで、人間が困っている部分を解決できるんだなって。やってみて初めてわかったことですね」
カブトムシはどんなものを食べて、困りごとを解決しているのでしょうか。

福岡県・大木町(おおきまち)のキノコ工場を訪ねました。
この町は日本有数のキノコの生産地です。
工場で育てていたのはシメジ。ここで課題となっているのが、"菌床"と呼ばれる部分の処分方法です。

キノコ工場の担当者:
「(菌床は)使い道がなくて燃やして捨てるだけなんです。だいたい1か月で100トンくらいのゴミが出ます」

おがくずなどからできている菌床。焼却処分した場合、大量の二酸化炭素(CO2)が排出されてしまいます。
そこで救世主となるのがカブトムシです。

細かく砕いた菌床の中にいるのは、カブトムシの幼虫。
菌床を幼虫のエサに利用することで焼却せずに済み、CO2排出量を20分の1に削減できるということです。
さらに、幼虫が大量に排出するふんは畑の肥料となるほか、幼虫の粉末を養殖魚のエサにする実験も開始されました。
"カブトムシパワー"は、地球温暖化だけでなく廃棄物処理や食料問題の解決も期待できるといいます。
カブトムシで課題解決の道を開いた兄弟。でも、兄は別の道へ…

まさに二人三脚でカブトムシの事業を育ててきた石田兄弟。
過去には、こんなピンチに見舞われていました。
TOMUSHI代表取締役CEO石田陽佑さん:
「真冬に停電になったことがあって…。飼育している部屋の温度が下がったらカブトムシが死んじゃうかもしれないから、夜な夜な2人で体を動かして自分たちの体温を上げて。その熱気で少しでも部屋を暖めようとしてピンチを乗り切ろうとしたことがあります」

しかし、兄の健佑さんは現在、会社を離れているといいます。
2024年9月、健佑さんは地元・秋田県大館市の市長選に出馬して当選し、27歳で全国最年少の市長になりました。そのため、弟の陽佑さんに事業を託して、自身は故郷の課題解決に奔走しているといいます。
カブトムシが大好きだった兄弟は、カブトムシと歩み続けて人生を変えてきました。

こだわりの社用車は、大好きなカブトムシカラー!
イベントの時にはカブトムシの角を装着して展示しています。
「社用車をせっかく買うなら、カブトムシっぽいのがいいかな」と決めたそうです。

今では、大木町と同じ仕組みを全国80か所で展開しています。
TOMUSHI代表取締役CEO石田陽佑さん:
「僕らからすると、ゴミの処理もそうですし未利用資源の利活用もそうですし、カブトムシがものすごく頑張ってくれる。『お前、頑張ったな。次の世代につないでくれよ』と感謝の思いでいっぱいです」
かっこいいだけではないカブトムシ! 地球環境を守る新たな可能性も秘めています。