
正社員の1割が“副業”する時代…高校の先生が“すきま時間”にビール作り「理科の知識は役立っている」 会社員が農業も…魅力は収入?働き甲斐?

2018年に厚生労働省がガイドラインの整備などを進めた「副業」。その後、7年がたち「副業」は世の中にどう広がっているのか調べました。
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世はまさに「副業時代」。社員の副業を認める企業の割合は6割を超え、副業をしている正社員は10人に1人に。
とあるビール醸造所で働いていたのは…理科の先生⁉さらに大根を収穫しているのは会社員!副業のイマを調べました。
こだわりビールを作っているのは…先生⁉
名古屋・栄のイタリア料理店「クォーコ・ディ・マーレ」。ここで提供されているのが、ことし9月に発売されたばかりの、ミックスベリーが入ったフルーツビール。
(客)
「すごく飲みやすいです。苦みがない」
「おいしくて飲み過ぎ注意」
作っているのは、名古屋市東区にある「Dragon Brewing」というクラフトビールの会社です。写真館の旧社宅を醸造所に改築し、ことし8月にビールの醸造を始めたばかり。
(Dragon Brewing・杉本有優代表取締役)
「いかにフルーティーなものに仕上げるかというところにこだわっている」
ビールの発酵段階でフルーツを加え、仕上げで果汁をプラスするこだわり。この
「Dragon Brewing」にはある変わった特徴が。それは…
「普段は理科の教員を務めている」
「学年主任と1クラス担任をしている」
「物理学を教えている」
朝礼前の午前6時に来て作業することも…
ビールの醸造に関わるのは、名古屋市内の私立中学・高校の先生たちです。
(杉本代表取締役)
「学校の朝礼が8時15分なので、その前にここで(ビールの)様子を見なきゃいけない。6時台に来て作業することもあります」
授業前や放課後の空き時間を利用して、発酵やラベル貼りなどの作業を進めています。
(Dragon Brewing・宮地邦樹取締役)
「例えばいま三者面談をやっていて、そうすると夕方になってしまうので、午後7時から作業をすることもある」
学校側は副業を快諾 「モノづくりを生徒たちの教育に」
「Dragon Brewing」は2024年、学生や社会人が参加する起業アイデアを競うビジネスコンテストで見事優勝。
ビールづくりを始めるきっかけになりました。
(宮地取締役)
「教員が本業だが、往々にして閉鎖的な職場で、言い方は悪いが時代遅れになりがち。社会に開かれた製造業をやっていると、出会う人は絶対に学校では出会わない人たち。そこに生徒を連れて行けると、学校自体が開かれていいかなと」
モノづくりを生徒たちへの教育に繋げたい…。思いを受け止めた学校側も、副業を快諾したといいます。
(杉本代表取締役)
「ビールづくりは酵母という生き物を相手にするとか、化学反応の結果できるものなので、理科の先生の知識は役に立っている。いろいろ試行錯誤して苦労することで出てくるものの良さを、改めて子どもたちに伝えられたら」
冷凍庫を自分たちで改造し発酵機を作ったり、商品を自分たちで届けたりと、試行錯誤しながら一から手作業でビールづくりを行っています。
(杉本代表取締役)
「もしこれを命令されてやっていたら、めちゃくちゃブラックです。僕たちはビールづくりにも本気。むしろこの苦労が、将来(教育に)どう種まきになるか、花咲くか考えるとワクワクする」
副業を認める企業の割合は6割超
先生たちの“挑戦”を間近で見ている生徒たちは…
(高校2年)
「授業で(ビールづくりの)話をしてくれて、面白いなと思った」
「一つのことをやりながら、もう一つのことも本気で頑張れるのはすごい」
「ビールづくりみたいに、やりたいことをやれるので、すごくいい環境だし楽しそう」
Q.将来の夢は?
「教師には憧れがある。これは本当です」
副業を認める企業は増え続けています。パーソル総合研究所によりますと、社員の副業を認める企業の割合は、6割を超えています。また、正社員の副業実施率は調査開始以来、最高の11%に。“副業で好きなことをやりたい”“趣味を仕事にしたい”
という人が増えているそう。
一方で、街の人からはこんな声も…
(20代会社員)
「好きなことに使えるお金が増えそうなので、自分に負担でなければ(副業を)やってみたい」
(30代会社員)
「“これを副業にしたら、お金になるかな”というものはあるが、なかなか本業が忙しいと手が出せない」
会社員が“すき間バイト”で農業
こうした声がある中で、いま人気を集めているサービスが。愛知県扶桑町の農園。大根の収穫作業をしていたのは、“農家”さんたちではなく…
(30代会社員)「普段は会社員と個人事業を少しやっている」
(50代会社員)「(普段は)デスクワーク系の仕事をしている」
本業は会社員、農業は“すき間バイト”という2人。この日は4時間、大根の収穫と葉や根を包丁で切る作業などを行いました。
(30代会社員)
「(大根を)すぱっと切るのが気持ちいい」
(50代会社員)
「めちゃくちゃ気持ちいい。普段こんなに太陽に当たる機会もないので」
東海地方では約1300の農園が実施
2人が利用したのは、豊橋市の「アグリトリオ」という会社が提供するサービスで、その名も「農How」。人手が足りない農家と農業をやってみたいという人をマッチングするもの。
農家は数時間から1日単位で、農作業のアルバイトを募集することができ、現在、東海地方を中心に約1300の農園がサービスを利用しています。
収穫期には、約40万本の大根を収穫するというこちらの農園でも、すき間バイトが大きな戦力になっています。
(扶桑農産・小川素央社長)
「(普通に募集すると)1か月に1人2人来て、1回やってみて続かないことが多かった。このサービスは手軽に応募して、(たくさんの人に)来ていただけるので、
すごく重宝している」
働き手は、履歴書や面接は不要。事前に作業マニュアルも用意されています。ちなみに、この日の時給は1140円でした。
(50代会社員)
「ちょっとお小遣いじゃないけども、健康づくりも兼ねている」
登録者に“ある変化” 男性会社員が増加
2019年に始まったこのサービス。元々は30代~40代の主婦が主に利用していましたが、いまある変化が起きているそう。
(アグリトリオ・深谷祐貴社長)
「近年20代~40代男性の登録者が増えている。日本全体で働き方が柔軟になってきた背景があって、こうした農業で1日単位で働くユーザーが増えているのかなと」
副業を解禁する企業の増加に伴い、「農How」の働き手として登録する人は年々増え、現在は約2万7000人が登録しています。
サービス開始当初、1割程度だった会社員の割合は6年で4割程度にまで増えました。
(50代会社員)
「疲れたが達成感に満ちている。(物の値段も)いろいろ高騰している。自分のタイミングで働けることと、収入を(本業と)別でというのは魅力的」
それぞれのライフスタイルにあわせて選択できるようになった“副業”。その広がりは、今後も続きそうです。





