
特別すぎる「熱中症特別警戒アラート」役立つアラートになるには 環境省が見直し発表

環境省は11月13日、熱中症への警戒を呼びかける「熱中症特別警戒アラート」について発表基準を見直す方針を示しました。現在、熱中症については「熱中症警戒アラート」とそのワンランク上の「熱中症特別警戒アラート」の2つが運用されています。「熱中症特別警戒アラート」は去年4月の運用開始以降、1度も発表されていません。国が基準を見直すと発表した際「やはりそうか」と感じました。私より経験が長い気象予報士にも「熱中症特別警戒アラートが出る可能性は限りなくゼロに近い」と話す人が。私は9月にもこの「熱中症特別警戒アラート」を取り上げました。今回はこの「特別すぎる」アラートについて分析したデータを紹介します。
■熱中症特別警戒アラート なぜ発表の可能性はほぼゼロか

メ~テレの放送エリアの愛知・岐阜・三重の東海3県では、表のように今シーズン多くの「熱中症警戒アラート」発表されました。
全国の都道府県と地方で発表された回数は1749回に上ります。
それに対して、「熱中症特別警戒アラート」の発表はゼロでした。今シーズンは群馬県伊勢崎市で国内観測史上最高気温となる41.8度が観測されましたが、発表の基準には達しませんでした。
「熱中症特別警戒アラート」の発表基準は「都道府県内のすべての観測地点で翌日の暑さ指数(WBGT)が35に達すると予想される場合など」と環境省が定めています。
これをデータで分析してみると「発表の可能性はほぼゼロ」ということが見えてきます。
■東海3県の「暑さ指数」分析してみると…

「暑さ指数」を観測する地点は愛知県内に11地点、岐阜県内に23地点、三重県内に12地点あります。
「熱中症特別警戒アラート」が発表されるケースは、各県のすべての観測点で、「暑さ指数」が35以上になると予想されたときです。
グラフは今シーズン、東海3県の全観測地点(愛知11地点 岐阜23地点 三重12地点)の「暑さ指数」を分析したものです。県ごとの観測地点の中で、日別に「暑さ指数」が最も高かったデータを取り出して、グラフで示しました。
県ごとの観測地点の中で、その日に最も高かった「暑さ指数」の推移が分かります。
グラフの最も上の目盛りが「暑さ指数35」、つまり「熱中症特別警戒アラート」が発表される基準です。東海3県で「暑さ指数」の最も高いデータを集めてみても、今シーズンは「暑さ指数35」に達した日は1日もありません。
各県には観測点が複数あり、最高となった地点以外の「暑さ指数」は、より低い数字になります。「各県のすべての観測点で「暑さ指数」が35に達する」ということはいかに高いハードルなのか、「可能性は限りなくゼロに近い」ということが分かってもらえるのではないでしょうか。
■「熱中症特別警戒アラート」ローカルに警鐘鳴らすアラートに

制度として運用するのであれば、危険な時に注意喚起を促すアラートであってほしいと感じています。
環境省では、都道府県に応じて標高が高い地域などは発表基準から除外する地点を設けるなど、基準を変更するとしています。
分析したデータを見ると、一部の地点を除いたとしても「暑さ指数35」は依然としてかなり高いハードルに感じます。特別なアラートなので頻繁に出る基準ではいけませんが、特別すぎる基準であってもいけないと思います。
「熱中症警戒アラート」「熱中症特別警戒アラート」は、都道府県単位で発表されていますが、「より細かいエリアごとに発表する」という方法もあると思います。
地域の人に、よりピンポイントでアラートを発信したほうが、注意喚起につながります。
見直された熱中症特別警戒アラートは、早ければ来シーズンから運用されます。伝えるメディアも、その情報を十分に活用して注意喚起をしなければいけないと考えています。
【関連】今年の名古屋は暑かった「熱中症特別警戒アラート」東海3県で発表の可能性は
https://www.nagoyatv.com/news/?id=032178
(メ~テレ災害担当デスク 気象予報士 柴田正登志)





