
不登校の子どもを守る新たな居場所「メタバース教室」 “分身”で自分らしさを取り戻し、起業を目指す子も

不登校の子どもたちの拠り所となっている、インターネット上の仮想空間での新たな居場所づくりについて考えます。

小学5年生の「なっつー」さん。
授業を受けるのは“メタバース”の教室です。
メタバースとは自分の分身“アバター”を使って、他の参加者と会話できるインターネット上の仮想空間です。
なっつーさんは、不登校の小中学生のためのフリースクール「NIJINアカデミー」に通っています。
メタバース教室と実在する教室を選ぶことができて、義務教育の出席認定を得ることができます。
「キャリア教育みたいな授業があって、SNSの使い方とかYouTuberプロデュースしてみようみたいな、未来的というか現代的な授業が一番面白い」(なっつーさん)
メタバースに特有の話しかけ方がある

なっつーさんが、メタバース教室を案内してくれました。
「5階が学習ルームで、検定やる人が多くなってきたので、検定の相談ができる場所とか、授業ルームがあったりとか。オブジェクトに接続して、カメラのボタンを押すと、こうやって顔が出てくる。顔出ししたいけどアバターじゃないとっていう人のために、キツネとかライオンとかペンギンとかあります」(なっつーさん)
メタバース特有の話しかけ方もあるそうです。
「人がいたらダブルクリックすると『ポンポン』っていう音がする。呼びかける時に『ねえねえ』って言うのと一緒で、そうすると相手に通知が送られて、それで話すことができる」(なっつーさん)
Q.横に友達がいると勉強のやる気が出る?
「そうですね。カメラオンする時もあるし、ただアバターで勉強する時もあるけど、(自分が)相手も頑張ってるんだと思うと、相手も(自分が)頑張ってると思ってどんどん進む」(なっつーさん)
全国から約300人の子どもたちが通う

このメタバース教室には、全国38都道府県から約300人の子どもたちが通っていて、これまでに150人以上が義務教育の学校に戻ったということです。
「唯一のセーフティーネットである家から、豊かな教育とか友達と出会う機会を提供してあげれば、子どもたちは自分らしさや生きる喜び、学ぶ力を取り戻せる。心理的安全な状況を作り出すことができる」(NIJIN代表取締役 星野達郎氏)
メタバース教室に通い始めたきっかけ

午前10時。メタバース教室で、全体ホームルームが始まりました。
この日は、なっつーさんが夏休みの取り組みを発表します。
「おはようございます、なっつーです。きょうは私の夏の取り組みや、サークルなどについて発表します。私が今取り組んでいることを、全部書き出してみました。レインボー新聞社、東海地方遠足グループ、レインボースター、これは起業家を目指す私が考えた会社です」(なっつーさん)
活動的ななっつーさんですが、小学3年生の時に学校に行くのがつらくなりました。
「2年生の後期に学級委員をしていた。その時は2年生だったから楽しくて、3年生になって前期で立候補したら、なんか思ってたよりも大変で。暴力を振るったり暴言を言う子がいたりして、そういうの見ているだけでもつらかったけど、一回被害にあって、それからはもう行きたくなくなっちゃって」
その後、両親が調べてきたメタバース教室に通い始めました。
「学校に行っている時よりも、非常に彼女らしくなったところがあり、そこは少しほっとした」(なっつーさんの父)
将来は「やりたいことがたくさんある」

なっつーさんは今後、楽しみながら生活のリズムを整えたいと話します。
Q.将来の夢はある?
「私は小さいころからやりたいことがありすぎて、一番はやっぱり起業家になりたい。不登校の小中学生用にゲーム感覚で楽しめる、スケジュールアプリを作ろうと今考えている」
対面でリアルな交流も

普段はメタバース教室で学ぶ子どもたちが、この日は長野県のキャンプ場に集まりました。
この日、集まったのは子どもと保護者計約50人。
対面で会うのは初めてということですが――。
Q.きょう初めて会った子もいる?
「うん。みんな初めて」
Q.初めて会ってみて緊張した?
「そんな緊張はしない」
Q.会うのが楽しみだった?
「ずっともう楽しみで、きのうは夜10時45分くらいまで起きてた」
リアルな交流を楽しむ子どもたち。
初めて会った仲間と力を合わせて挑戦したのは、夏の定番のスイカ割りです。
メタバースでも「人の営みは変わらない」

子どもを守る新たな居場所ともいえるメタバース教室は、どう広がっていくのでしょうか。
「メタバースであっても人の営みは変わらないと、私も子どもたちから教わっている。もちろんリアルに帰っていく子もたくさんいる。一方でバーチャル空間で起業したりとか、プログラミングを書いたりとか、そういう子たちも少なからずいるので、多様な子どもたちの進路や挑戦をサポートしていきたい」(星野氏)