手羽先の名店「世界の山ちゃん」 入社8カ月で店長に、デザートの注文数全国2位 「幻の手羽先」新規事業も
「元気な企業には会社の原動力となる“わが社の星”がいる」ということで、東海地方の有名企業を訪問。会社で輝く社員を直撃し、元気な会社の秘密を探る。
入社8カ月でスピード出世!驚異のコミュニケーション能力を持つ店長
今回訪れたのは、手羽先の名店「世界の山ちゃん」を運営する「株式会社エスワイフード」。2024年6月には、期間限定で「世界の山ちゃん 名古屋駅1番線店」(名古屋市)が復活。今、勢いに乗っている。
直撃したのは、名鉄太田川駅から徒歩1分の「太田川駅前店(東海市)」。デザートの注文数を競う「山ちゃんデザートキャンペーン」で、新宿店(東京・新宿区)や栄店(名古屋市)を抑えて全国2位という好成績を上げた店舗だが、入社わずか8カ月で店長に抜てきされた"わが社の星"が成し遂げた功績だという。
「太田川駅前店」店長の伊藤孝浩さん。他の飲食店やプログラマー、携帯電話の販売員などさまざまな職種を経験し中途入社。わずか8カ月という異例のスピードで店長に就任した。
伊藤さんを店長に抜てきしたのは、エリアマネージャーの浅井章充さん。浅井さんによると、伊藤さんはコミュニケーション能力が高く、アルバイトスタッフと親しくなることでみんなが働きやすい環境にしているという。それがお客さんにも伝わり、お店全体に活気が出ているそう。
「太田川駅前店」では、会社規定の名札の他、期間限定メニューやおすすめメニューを記載した名札をエプロンに付けている。この名札がきっかけでお客さんとの会話が生まれ、ホールスタッフも盛り上がるのだ。
先代がやらなかった"新規事業"で危機脱出!
続いては、本社の社屋へ。「世界の山ちゃん」の看板でおなじみのキャラクターは、創業者・山本重雄さんがモデル。看板商品「幻の手羽先」は、山本さんが試行錯誤の末に生み出した「幻のコショウ」が味の決め手で、その作り方は今も門外不出だ。
1981年の創業から、40年以上にわたり愛され続けている「世界の山ちゃん」。しかし、2020年にピンチが訪れた。
それは、新型コロナウイルス感染症による売り上げの低下。売り上げ95パーセント減、25店舗以上閉店と、エスワイフードは倒産の危機に。この危機を救ったのが、先代がかたくなに拒んできた"新規事業"だった。
手掛けたのは、外販部主任の市原洋さん。「世界の山ちゃん」といえば店舗で食べるイメージが強いが、店舗の売り上げが落ち込む中、市原さんが中心となり、手羽先の冷凍食品を開発。電子レンジで簡単に調理できる手軽さに加え、味付けに冷凍食品用に改良された「幻のコショウ」を使用したことで、累計200万個を売り上げる大人気商品となった。
この外販事業こそ、先代がかたくなに拒んでいた新規事業。先代は、「『幻の手羽先』がどこでも食べられると、店舗を訪れるお客が減るのでは?」と危惧していたが、それを払拭したのが市原さんだった。
現在、エスワイフードの代表取締役を務めるのは、先代の妻・山本久美さん。元々は専業主婦として先代を支えていたが、2016年に先代が病により急逝、その想いを引き継ぎ、代表に就任した。
実は久美さんは、先代から“ある業務”を任されていた。
それが、2000年から手書きで作っている店舗向けの社内報「てばさ記」。結婚前、学校の先生だった久美さんは、学級新聞のイメージでこれを制作。月に1回発行し、2024年6月で283号を迎える。
バックナンバーには、先代のだじゃれを記した"だじゃれコーナー"も。久美さんによると、先代はおやじギャグが大好きで、記事に盛り込んでいたという。
「てばさ記」の発行について、「先代がくれた私の大きな仕事。今でも使命感を持ってやっています」と久美さん。今も他の社員に任せることなく、自ら手がけている。
コロナ禍に会社のピンチを救った事業はもう一つ。それが、外販部とともに新設されたキッチンカー事業部だ。現在、エスワイフードではキッチンカーを4台所持しており、土日平日問わず、福岡から北海道まで、全国30都道府県を回って手羽先を届けている。
キッチンカーには店舗とほぼ同じサイズのフライヤーが設置され、お店と変わらぬ味の「幻の手羽先」を提供。多い日で約5000本、1000人前を売り上げるという。