空気以外は何でも削る!ロケット部品も手掛ける「中村製作所」...削りの極意に迫る!
掲げるモットーは「空気以外 何でも削ります」。ニッポンのモノづくりを“削って”支えるスペシャルな町工場に潜入。大手に負けない確かな技術力…とある町工場が手がけた製品は、海の中や宇宙にまで届いていた。
空気以外は何でもOK!“削る”を極めたスゴイ町工場
向かったのは、全国有数の工業都市、三重・四日市市。青い屋根が連なる工場が、今回の舞台「中村製作所」。
今年7月に打ち上げられたH3ロケットの部品も手掛けた、スペシャルな工場だ。さまざまなマシンが所狭しと並ぶこの工場では、「工作機械の部品を中心に、さまざまな部品を作っている」(野呂一真工場長)とのことで、手掛ける部品は100種類以上! 最新のマシンを使い、鉄やチタンなどの素材を超高精度で削っている。
今回は、鉄のリングの加工を見せてもらうことに。まずは、重さ約100キロの真っ黒な素材をクレーンでつり上げ、横長のマシンにセット。この真っ黒な素材が、シルバーへと変身するという。作業はコンピューター制御。刃の付近など2カ所にカメラを設置し、中の様子を撮影させてもらう。
カメラが超接近!リングを削る瞬間
先端に刃がついたマシンが動き出し、回転するリングにゆっくりと近づいていく。刃の素材は、鉄よりも硬いチタンだ。接触した際の摩擦を抑えるため、水と工業用オイルが放出され、刃がリングに当たると、削りくずが勢いよく飛び出す。
外側を30分、側面を約5分かけて作業を続けると、リングの色はピカピカのシルバーに光り輝いた。
続いて内側の工程に入るが、ここで作業員がマシンを止め、刃を交換する。内側の作業を行う際は、より硬い刃を使用するのだ。刃は「超硬チップ」と呼ばれ、チタンや鉄、鋳物など、用途によって使い分けている。
全ての面をピカピカにした後は、刃先を一点に集中させ、内側に深い溝を刻んでいく。
内側が終わったら、外側にも溝を入れる。溝一つを掘るのにかかる時間は30分。外側の溝は全部で18本あるため、合計9時間以上もかかる。作業は夜通し続き、手間暇かけた分、美しい溝に仕上がった。
しかし、これだけの作業を経ても、まだ“削る”作業は終わらない。続いて使うのは「マシニングセンタ」という機械。クレーンで慎重にリングを運び、マシンにセットすると、ドライバーのような器具が下りてきて、ネジ穴を開け始める。
作業が終わったリングを見てみると、細い枠の間ギリギリに穴が開いているのがわかる。
カメラが超接近!1000分の1ミリの世界
その後、リングはカートに乗せられ、企業秘密が多いエリアへ。ここで待ち受けていたのは、最新鋭の超高性能マシンだ。リングを釣り上げてマシンの中に移動させると、台に乗ったリングがくるくると回り始めた。
すると、上部から水色の研磨材が下りてきて、1秒間に最大150回転という途方もないスピードで磨き上げていく。この研磨こそ、“削る”を極めた「中村製作所」の真骨頂!
「どれほど細かく削るのか」番組スタッフが尋ねると、「1ミクロン。1000分の1ミリ」と野呂工場長。なんと、数ミクロンといわれるヒトの細胞よりも細かな加工を施していた。ロケットなどの精密部品には、1000分の1ミリまで大きさの規定があり、「中村製作所」では、全ての製品に1000分の1ミリ単位の研磨を施している。
超高速回転の研磨材でリングの内側を2時間磨き上げると、今度は自動で入れ替わった溝専用の研磨材が登場し、さらに3時間かけて磨き上げる。
さまざまな工程を経て、形作られた一つの機械部品。かけた時間は14時間以上! 1000分の1ミリ単位にこだわった超一級品だ。
番組概要
番組名:工場へ行こう III AMAZING FACTORY
出演者:(ナレーション) 平泉 成、城ヶ崎祐子
公式ホームページ:https://tv-aichi.co.jp/koujou3/
放送日時:毎月第1土曜午後