父と子の26年 「いつか犯人を現場に立ち会わせたい…」残し続けた“現場の証拠” 名古屋・西区 女性殺害事件

26年前、名古屋市のアパートで、当時32歳の女性を殺害したとして69歳の女が逮捕された事件。いつか容疑者が逮捕された時のためにと、被害者の夫が26年にわたり、自費で家賃を払い当時のまま残してきた事件現場のアパートの部屋で、1日午後、容疑者を立ち会わせて現場検証が行われました。

事件後、立ち止まって振り返ることもできず、そのままにしていた部屋。
高羽悟さん(2000年11月取材):
「家財道具とか全部買いましたので、愛着があるというか、ほっとするというか落ち着くというか、そういった部分はありますね」

この時、高羽さんは部屋を引き払おうと考えていました。踏みとどまったのは「いつか犯人を現場に立ち会わせたい…」という思い。
高羽悟さん(2019年11月取材):
「私の生きている間に犯人を逮捕してもらいたい」
そして、一緒に情報提供を呼びかけた長男・航平さん。
高羽航平さん(2025年11月取材):
「(父親は)僕のために、そういう責任があるってたぶん自分でも思ってやっている部分もあると思うんですけど」
父と子の、先の見えない戦いは26年にも及びました。

住まいを移してからも26年間、通い続けてきた場所。高羽悟さんの妻・奈美子さんが殺害された現場の部屋です。
玄関には今も、犯人の痕跡が残っています。

高羽さん家族が事件に巻き込まれたのは、一人息子の航平さんがまだ2歳だったころ。男手ひとつで航平さんを育てながら、事件の解決を願い続けてきました。
父の思いを受け止めた航平さんも、一緒に情報提供を呼びかけました。

父と息子の活動は、「法の壁」も動かすことに。事件から11年後の2010年、法改正で、時効がなくなったのです。
高羽悟さん(2010年取材):
「こういった場面に一緒に立ち会えたことは本当に良かったと思います。今夜は少し喜びに浸って、あしたから犯人を捕まえられるように頑張りたい」
時効というタイムリミットはなくなったものの、犯人につながる有力な情報は乏しいまま。
高羽悟さん(2019年取材):
「私の生きている間に犯人を逮捕してもらいたい」
高羽航平さん(2019年取材):
「母親は死んじゃいましたけど、(母親が)「いい子に育ったな」って思えるような人間になれたらいいなと思う」

26年の間には転機も。去年、航平さんが結婚したのです。
お相手は高校時代の同級生・咲月さん。偶然にも、咲月さんの母親と奈美子さんは、当時、職場が同じで、互いの家を行き来するほど仲が良かったといいます。
高羽航平さん(2024年取材):
「結婚することで変わることはないので、これまで通りという感じです。(母が)喜んでくれたらいいんじゃないですかね」

家族に変化が訪れる一方、変わらなかったのが、この部屋。26年間、悟さんが自費で借り続けています。家賃の総額は2000万円以上。

そして、11月1日。
記者:「26年前の殺人事件の現場です。規制線の奥のアパートで容疑者を立ち会わせて現場検証が行われています」
警察が、部屋に入った方法や室内での動きなどを確認したところ、安福久美子容疑者の説明と当時の状況がおおむね一致したといいます。
この結果に県警幹部は「現場が保存されていたからこそできた。高羽さんの執念が実ったんじゃないかなと思う」。
「あの日」から26年。父と子の戦いは一つの節目を迎えました。





