旧統一教会「解散命令」から1カ月 解散後の混乱を問題視する教団 現役信者の家族「きちんと責任追及を」

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に、東京地裁から「解散命令」の決定が出されてから約1カ月がたちました。命令を不服とする教団側と、被害を訴える愛知県に住む信者の家族の今を取材しました。
三重県鈴鹿市の中日本霊園。
「天国で永遠に生きる」を意味する「本郷永生」の文字が刻まれた墓があります。
ここは旧統一教会の墓。教団の信者が眠っています。
墓は旧統一教会が契約している区画に建てることができ、建てる際は、教団に対し30万~40万円ほど献金。さらに墓石の費用も必要となります。
4月26日に行われていたのは、亡くなった信者を弔う「合同慰霊祭」。
信者やその親族約800人が集いました。
田中会長「法人格がなくなるだけの軽い問題ではない」

旧統一教会の田中富広会長が集まった信者らに対し語ったのは――。
「私の方に問い合わせがあります。『解散したらどうなりますか、霊園は?』と。私も聞きたい。この霊園は宗教施設にとって、信教の世界を形作るのにおいて重要な資産。解散したら法人格がなくなるだけという軽い問題ではないことを丁寧に訴えていきたいと思っています」(旧統一教会 田中富広 会長)
東京地裁は3月、高額献金などの問題をめぐり「看過できない規模の被害」として、旧統一教会に「解散命令」を出しました。
しかし教団は東京地裁の決定を不服として、東京高裁に「即時抗告」。
田中会長が問題視するのは、解散後の混乱についてです。
Q.信者から不安の声は?
「決定的でしょう、お墓の問題というのは。代々重なるもので自分が信仰するレベルで終わらない。方向性も見えないので、信者は不安の中にあると思う。突然ダメですよとなったときに大混乱しか見えないので、我々教団の問題ではなく、国民の問題になってくるでしょう。そんな危機感を感じています」(田中会長)
現役信者「墓を移すのはあり得ない」

参加した現役信者からも、不安の声が――。
「解散する方向であったとしても、こういう霊園や墓はそのままにしてほしいです」(現役信者)
Q.解散後、墓を移すというのは?
「それはあり得ない」(現役信者)
「実際にここが使えなくなるとか、そういうことがあれば、ちょっと心配」(現役信者)
「とても悲しいというか、納得できない。ショック」(現役信者)
「この場というのは、今後教団が解散という風になったときに、活動している教会もそうだが、そこにコミュニティーがあって、教団信徒の集いがあって、そのなかで支えながら信仰を高めていっているので、こういう環境がなくなるというのは心配であり心外」(現役信者)
母が現役信者の男性が語る「高額献金」

教団側が、解散への危機感をあらわにする一方――。
「解散命令の決定は当たり前の流れだし、当然のこと」(母親が現役信者の40代男性)
「解散命令は当然だ」と話すのは、60代の母親が現役信者だという、愛知県に住む40代の男性です。
「解散命令の話や今の状況について話すが、やっぱり聞きたがらないです。機嫌が悪くなるか、聞かないようにするか、距離を取ろうとするか」(母親が現役信者の40代男性)
男性が見せてくれた1枚のメモ。
そこには先祖を慰霊する「先祖解怨300万」や「渡韓費20万」など、高額献金の実態が記されていました。
家族「子どもの貯金を使い、借金も」

母親の高額献金により、家庭内に不和が生まれることもあったといいます。
「(自身が)小学生ぐらいの時につぼを購入するとか、子どもを置いて韓国に行っちゃうとか、そういったことがありました。つぼは70万円ぐらいしていて、これを買った経緯としては、自分と弟のお年玉で使わなかったものを郵便貯金で貯金していたが、これを勝手に黙って使って、郵便貯金がすっからかんになったということで、父や親戚一同が激怒した。家庭内に不和を生みますね」(母親が現役信者の40代男性)
高額献金は、これだけにはとどまりませんでした。
「督促状が届いたんですよ。父親が発見して『なんだこれは』と母親を問い詰めたら、十何枚もカードが出てきて総額見たら、600万円近い金額になっていた」(母親が現役信者の40代男性)
母親は自身で稼いだお金をすべて旧統一教会につぎ込んでいましたが、それでは賄うことができず、借金をしていたことが発覚。
借金は父親が完済しましたが、その後、母親とは一時別居する事態にまで発展しました。
「『宗教を選ぶか今の家族の生活を選ぶか』で宗教を捨てられないと言い、一時別居状態になった。お金を使ったこと以上に謝らない。悪いことをしたと思っていない。母親は家族のためにやっていると思っているので」(母親が現役信者の40代男性)
家族「解散後も問題はなくならない」

男性は、旧統一教会に対する「解散命令」について評価する一方、解散後もこの問題はなくなることはないと話します。
「解散したら今まで流れてきた金が取り返せるわけではないし、それを出した被害者が救われない。受けたダメージはそのまま。金銭被害や人権侵害が起きている。国を揺るがしかねないレベルの問題だという認識でいないと解決できない。信仰を理由に何でもしていいというわけではない。きちんと責任追及をしていかないといけない」(母親が現役信者の40代男性)
今後は、東京高裁が改めて「解散命令」の是非を審理します。