三重の海で進む“砂漠化” アワビやサザエが姿を消した… 「黒潮大蛇行」終息で海は変わるのか?

台風が過ぎ去るとまた、暑さとの戦いが続きます。先週、気象庁から「黒潮大蛇行」の終息が発表されましたが、三重県の海は海水温上昇でどんな影響を受けてきたのか、海の中の異変を取材しました。
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全国の海女は約2000人、このうち半数が三重県に暮らしています。
この夏、志摩市の海に潜った海女の口からは…
(海女)
Q.アワビですか?
「いいや“フクダメ”」
この日とれた貝類はすべて「トコブシ」。ここでは“フクダメ”と呼ばれています。
海女漁であがる象徴的な高級な貝類は「アワビ」に「サザエ」。しかし、この志摩市の海から姿を消したという証言が…。
(海女 北井寿々美さん)
「1990(平成2)年くらいからアワビが(消えて)ことしはサザエがとれなかった」
姿を消した要因の1つは、海水温の上昇が考えられます。
海水上昇で海の“砂漠化” 被害は深刻…
海で起きていたのは「磯焼け」という現象。海水温の上昇に伴って、海藻をエサとして食べる魚などが増え、いわば海の“砂漠化”が進みました。このため「アワビ」などの貝類の餌場もなくなってきて…
(海女 大山美知子さん)
「去年からタコも見やへんな」
そして、伊勢志摩の海を代表する、あの伊勢エビが…
(北井さん)
「10月と11月は伊勢エビ漁も行っていたが(去年は)もうダメだった」
この海水温上昇の1つとして考えられてきたのが『黒潮大蛇行』です。日本の太平洋岸を流れる黒潮が紀伊半島沖で大きく南に蛇行する現象で、この黒潮の支流が志摩半島沿岸に流れ込み、海水温の上昇を引き起こしたとみられるのです。しかし…
(気象庁 大気海洋部 髙槻靖予報官)
「大きな蛇行になったところが、2025年4月で終息した」
気象庁と海上保安庁は先週、調査結果を発表。1965年以降の観測では最長となっていた今回の「黒潮大蛇行」は、ことし4月に終息。その期間は2017年8月からの7年9か月でした。
岩場から消えた海藻 元の姿に戻るには時間がかかる
三重大学の松田浩一教授の研究チームは、4年前から海の調査を続けています。
志摩半島沿岸の海藻の生育状況はいま、どうなんでしょうか?
(三重大学 水産実験所 松田浩一教授)
「時期的にも一番海藻が少ない時期ですが、ほぼ海藻はない」
岩場から消えてしまった海藻。しかし、海水温はこの日は23℃。去年の同じ時期より低くなっていました。
(松田教授)
「大蛇行がピークの時には30℃ほどあった水温ですので、ことしはずいぶん低いかなと」
『黒潮大蛇行』の終息は朗報と言えそうですが、一度消えた「藻場」が元の姿に戻るには時間がかかります。
(松田教授)
「アラメとかカジメ(などの海藻類)は胞子を海に放出するが、近くに親の海藻がないと種も届かないので、なかなか回復には時間がかかる」
そして、列島で続いている猛暑も海水温の上昇に大きく影響しています。
(松田教授)
「気温が1℃上がると海水温が0.7℃くらい上がりますので、地球温暖化による気温の上昇というのは沿岸水温の上昇に繋がっている」
夏の平均気温は3年連続で過去最高を更新。人は自然に抗うことはできませんが、「美し国 三重」の海と暮らしを守る手だてが見つかること…期待します。