うつ病寸前で「脱サラ」　ブルーベリー農園経営で人生に輝き　今では悩める中高年にアドバイスも

07.07(月)16:57

愛知県岡崎市にひと夏で約1万人が訪れる人気のブルーベリー農園があります。農園を経営するのは大手企業を45歳で辞めた男性です。なぜ脱サラして農園を経営しているのでしょうか？

ポットに植えられているのは、ぷっくりと大きなブルーベリーです。岡崎市にあるブルーベリーファームおかざき。約8000平方メートルの広い土地に1500本のブルーベリーが植えられていて、ひと夏で1万人が訪れる人気の観光スポットです。

多忙を極めたサラリーマン時代

農園を経営するのは、畔柳茂樹（くろやなぎ・しげき）さん。ブルーベリー農園をオープンしたのは今から17年前、それまでは20年間、サラリーマンとして朝早くから夜遅くまで働いていました。

ブルーベリーファームおかざき
畔柳茂樹社長：
「土日をつぶすのは当たり前だったし、自分の時間はまったくない。家族との時間も限られていました。精神的に追い詰められていて、うつ病寸前だなという感じです」

大手企業で主に企画業務の仕事をしていた畔柳さん。課長になってから仕事に追われる毎日に、限界を感じていました。

ブルーベリーファームおかざき畔柳社長：
「このままじゃいけないんじゃないか。別の道を歩んだほうがいいんじゃないか。今の働き方は全く自分らしくないな、と毎日考えていましたね」

家族のために失敗はできない

家族や今後の生活のことを考えると、悩むことはありましたが、45歳の時に一大決心して会社を辞めることに。子どもの頃から何かを育てることが好きだった畔柳さん。次の仕事は農業にしようと決めていました。しかし、まったく経験のない農業に家族は「泣いた記憶がある」といいます。

長女：
「貧乏になる、と。何にも買えないし旅行も行けなくなるなって」

家族のためにも、失敗はできません。何の作物を育てようか悩んでいるときに出会ったのが、ブルーベリーでした。

心を揺さぶるブルーベリーとの出会い

ブルーベリーファームおかざき畔柳社長：
「めちゃくちゃおいしいブルーベリーに出会って。家に帰って調べたら『ブルーベリーって、日本で本格的にやっている人いないよね』となって。これで日本の第一人者になろうと思ったんです」

“時間無制限で食べ放題”のブルーベリーが人気に

会社を辞めてから2年。念願の農園を開業すると、ブルーベリーが時間無制限で食べ放題と話題を呼び大成功。成功に導いたのは、サラリーマン時代の経験でした。

ブルーベリーファームおかざき畔柳社長：
「農業は長時間労働が当たり前で、お金の勘定はどんぶり勘定でいいという人がこの業界は多いです。現状を分析して、どこを改善して利益が出るのかというのを、サラリーマンの企画時代に学んでいました。最後は嫌で辞めたんですけど、そこで学んだことが大いに生かされています」

客に収穫をしてもらう観光農園化、肥料と水を設定した時間にまいてくれる養液栽培など、大胆なコストカットが功を奏しました。そして働く時間がサラリーマン時代と比べ短くなったことにより、長年持てていなかった家族との時間が戻ってきました。

長女：
「塾とかも送り迎えしてくれたり、いろいろやりたいこともやらせてもらえたりしたので、良かったなとも思います」

働き方に悩む中高年に寄り添う

さらに畔柳さんは、講演会などをきっかけに「働き方に悩んでいる人がたくさんいる」ことに気づいたといいます。かつての自分のように、働き方に苦しんでいる中高年の人たちの力になるため、ブルーベリー農園のノウハウを惜しむことなく伝えました。

高浜市にあるブルーベリー農園「ブルーベリースターみかわ」。この農園を経営する禰宜田浩市さんも、畔柳さんの講演会を聞き、自分も生き方を変えてみたいと脱サラを決意した1人です。

ブルーベリースターみかわ園主禰宜田浩市さん：
「会社に縛られているよりは自分で何かを育てて、作ったもので人を喜ばせたい。自分の好きなときに働いて、自分の好きなときに休めます。やってよかったですね」

苦しいときには、逃げたっていい――。全国に100以上のブルーベリー農園を増やした畔柳さんは、これからも起業しようか、悩んでいる人を後押しします。

ブルーベリーファームおかざき畔柳社長：
「働き方に悩んでいる人たちの力になりたい。背中を押してあげたい。ブルーベリーって、アメリカと比べると日本ってなんでこんなに食べないんだろう？　っていうぐらい食べません。『イチゴよりブルーベリーだよね』ぐらいにメジャーな存在にするのが僕の夢です」