
出産目前に車にはねられ死亡 緊急手術で生まれた娘は意識不明 初公判で被告「どんな処罰も…」

愛知県一宮市で、妊娠9カ月の女性が車にはねられて亡くなり、事故直後に緊急手術で生まれた女の子は意識不明の状態が続いています。注目の初公判が開かれました。

「怒りは収まらないし、今まで感じたことがないような感情が出てきたので、とにかく事故の真実を明らかにしてほしい」(研谷沙也香さんの夫・友太さん)
初公判を受けて、やり切れない思いを語るのは夫の研谷友太さん(33)です。
妻の研谷沙也香さんは交通事故で31歳で亡くなりました。
事故があったのは、5月21日の午後4時ごろ。一宮市で、路側帯を歩いていた沙也香さんの背後から車が突っ込みました。
当時車を運転していたのは、一宮市の無職・児野尚子被告(50)。沙也香さんを車ではねて死亡させたとして、過失運転致死の罪で起訴されました。
2日の初公判で松葉杖をついて現れた児野被告は…。
「おふたりに対するどのような処罰も受けます。本当に申し訳ありませんでした」(児野被告)
児野被告は泣き声を上げながら罪を認め、席を立ちあがり、遺族に対し頭を下げました。
被害者として認められていない小さな命
この裁判には、被害者として認められていない、赤ちゃんがいます。
沙也香さんは、当時妊娠9カ月。出産に備えて、日課の散歩をしていたところ、車にはねられました。 救急搬送された沙也香さんは、緊急の帝王切開で娘の日七未ちゃんを出産。その2日後、娘を抱くことなく息を引き取りました。
「出産を目前にしてすぐそこに幸せな生活が待っていたのに、それが迎えられなかったことが無念でしょうがない」(友太さん)
日七未ちゃんは、事故の影響で脳に酸素が行き渡らず、重い障害を負い、今も意識のない状態が続いています。
2日から始まった裁判の起訴状には、事故当時おなかの中にいた日七未ちゃんに対する罪は記載されていません。日本の刑法では、原則として胎児は「母体の一部」とみなされるためです。
訴因変更を求め、署名活動
「起訴状を見たときに一切(日七未ちゃんの)名前が入っていない。娘が何もなかったかのような形にされてしまう。親として許せなかったし、違和感を感じた」(友太さん)
娘の将来を奪った罪は問われないのか。友太さんは日七未ちゃんに対する過失運転致傷罪も含めるよう検察に訴因変更を求め、8月からオンラインで署名を集めました。
そして2日、11万人余りの署名を名古屋地検に提出しました。
「頑張っている娘がいるということを伝えたいという思いがあって、“被害者”として扱ってもらうためにはどういうことができるか、妻のため、娘のために何か残せることをと思った時に署名ならできるかな、やらないと後悔するなと始めた」(友太さん)
2日の公判で検察は、日七未ちゃんが受けたダメージの状況などについて、追加捜査することを明らかにしています。