全国で年間1万件以上発生している道路陥没　「どんな異常も見逃さない」AIと「カーナビ」技術で点検

全国で年間1万件以上発生している道路の陥没。防ぐためには道路を点検し、異常を早期発見することが必要ですが、多くの自治体は人手不足に悩まされています。

そんな中、愛知県の大手自動車部品メーカーが道路の点検を支援するシステムを開発しました。カギになるのは「カーナビ」の技術です。

道路の陥没は2022年の1年間、全国で1万件以上も発生

路面に空いた大きな穴。道路の陥没は2022年の1年間だけでも全国で1万件以上発生し、今や社会問題に。道路の異常は大きな事故につながりかねないだけに、定期的な点検が欠かせません。

愛知県岡崎市の点検作業に同行すると、パトロールカーのドアには「撮影中」の文字が。

岡崎市 土木建設部道路維持課 新川寛成主査：
「道路の異常を識別するカメラです。通常通りパトロールすれば、（路面の状況が）自動的にすべて撮影されます」

道路の管理を支援するシステム、「みちログ」です。カメラで路面を撮影し、AIが穴やひび割れなどがある箇所を選別。位置情報や異常の大きさなどの情報をまとめた報告書が自動で作られ、翌日にはスマートフォンなどで確認できます。

以前は修復までに数日かかるケースもありましたが、今では最短1日です。

土木建設部道路維持課 新川主査：
「（これまでは）パトロールによる人の目で見ていたところもあったので、（路面不良）すべてを把握するまでに時間を要しました」

市と民間、あわせて8台の車で路面を点検

これまでは、市民が穴などを見つけ、通報をもとに市の職員が確認に出向くことが多かったといいます。みちログの導入で、市、自らが多くの異常の発見と、状態の迅速な分析ができるようになり、修繕までのスピードが上がりました。

岡崎市が全国に先駆けて「みちログ」を導入したのは2024年4月。ごみ収集車などのほか、タクシーにもカメラを搭載し、市と民間、あわせて8台の車で路面の点検を行っています。

予算が縮小傾向で道路の管理・修復に関わる人員が年々減少する中、道路の修復件数は2023年の約400件から、2024年は約1400件と3.5倍に増加。そのうち、約1000件が「みちログ」による発見でした。

カーナビ開発で培った技術を応用

みちログを開発したのは、自動車部品大手のアイシンです。アイシンは約40年にわたってカーナビの開発を手掛けてきました。2023年には、累計販売台数が3600万台を突破した老舗です。カーナビで培った、車の位置情報と地図を紐付ける技術や、道路や建物などの最新情報をリアルタイムに更新する技術を「みちログ」に応用。道路に異常がある場所を、正確かつ迅速に割り出すシステムを作り上げました。

みちログは現在、国内の8つの自治体が導入していて、アイシンは2030年までに100の自治体での導入を目指しています。

アイシン コネクテッド基盤開発部 木村晋二主任：
「ゆくゆくは検知できるものの幅を広げていきたい。年明けにあった埼玉の八潮市の陥没事故や、そういったところは人命に関わるので、道路に埋まっている空洞や水道管の漏水（の検知を）今後みちログのソリューションで展開したいです」

日本経済新聞社 名古屋支社
淺山亮記者：
「スマホ向けのナビアプリの普及によって、カーナビ製品の市場規模は縮小傾向にあります。そんな中で、アイシンは強みであるカーナビの技術を生かしたサービスを開発し、収益の底上げを図っています」