ロシア「アメリカ提案のウクライナとの停戦応じず」前嶋和弘さんが解説 「交渉難しい」予想ズバリ的中

アメリカのトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が18日、電話会談しました。トランプ氏がロシアとウクライナの双方にエネルギー施設への攻撃を30日間やめるよう提案し、プーチン氏は直ちに中止するよう軍に命じました。一方でプーチン氏はウクライナへの軍事支援の完全停止を要求。アメリカが示した30日間の停戦案には応じませんでした。この会談の前に、現代アメリカの政治や外交が専門の前嶋和弘さんに話を聞きました。
ロシア側は、より高い要求をしてくるのでは

【アメリカが示した停戦案】
・暫定的な30日間の停戦、当事者の合意で延長可能
・ロシアも同時に実施することが条件
――アメリカが示した停戦案は、すんなりと通るのでしょうか。
難しいかと思います。2023年6月にウクライナ側が反転攻勢をしましたが、十分ではなく基本的にはロシア側が勝っています。アメリカとしては戦争をやめるためにはロシアと話して、ロシアに止めてもらわないといけない戦争です。さらに経済制裁もロシアにはあまり効いていない。
逆に言うと、今回の停戦案を飲まなくても、ロシア側としてはアメリカ側に結構高いボールを投げることができる状況です。ロシアにとってみれば、またとないタイミングでプーチンさんと比較的仲が良いトランプさんが電話にかけてくる。より高い要求をしてくると思われます。
まずは戦争を止めさせないといけない

ロシアが強気に出られる状況にある中で、トランプ大統領は記者から「プーチン大統領からどのような情報を引き出すのか」と記者に問われると、こう答えました。
「領土について話すだろう。土地の多くが戦争前と比べて変わっている。発電所についても話す。我々は多くのことをすでにウクライナとロシア双方と話し合っている。特定の資産を分けることについてだ」
――双方と話し合っていると言いながら、アメリカはロシアとの交渉でどれくらいウクライナ側に立つのでしょうか。
まず、戦争を止めさせないといけません。そのためにロシア側に立っていく形になると思います。領土について、いまロシアがウクライナに攻め入って占領しているところ、東部と南部。さらに2014年のクリミアの3つについては、ウクライナ側が諦めなさいという形で話すと思います。
発電所もザポリージャ原発をロシア側にする、あるいは最後の特定の資産については鉱物とかの資産がウクライナ側の領土だったはずですが、ロシアがすでに占領している部分にレアアースがあります。このあたりも、ウクライナ側に立たずロシア側に立ってアメリカとロシアがウクライナの将来について話すかもしれません。
ウクライナ、そして自分たちの戦争でもあるヨーロッパにとってみれば、自分たちは蚊帳の外にあり大国で話していくという感じになると思います。
国際社会の強い反発

――一方で、ウクライナ側を置き去りにしたような交渉を行うことは、国際社会からかなり風当たりも強いのではないでしょうか。
国際社会から風当たりは強いと思います。そもそも国連の常任理事国であるロシアが現状変更をして国際法を破り、他の国に攻め込んで土地を分捕ってしまう。これは明らかな戦争犯罪です。
トランプさんの立場に立ってみると、トランプさんの思想としては「ウクライナはもういい」と。「ウクライナに出すお金があるのならラストベルトへ」「アメリカの大変な場所に配ってくれ」「ウクライナの戦争は止めて、アメリカファーストなんだ」というトランプさんの言葉になびいている人たちもいます。
アメリカの中の論議を国際社会に持ってくるのはつらいところがありますが、アメリカの分断とともに、国際社会の強い反発を目の当たりにするでしょう。
(2025年3月18日放送「5時スタ」より)