クマへの警戒感が高まる岐阜・中津川 猟師「耕作放棄地が原因かな」人口減少や高齢化で放置の畑が増加

東海地方各地で紅葉の名所が見ごろを迎えていますが、山に近い場所ということもあり、心配なのはクマです。岐阜で活動する猟師もクマの「行動の変化」を感じているといいます。
愛知県新城市の鳳来寺山。紅葉の見ごろを迎え、この3連休は多くの人が訪れました。そんな秋の山々に暗い影を落としているのがクマです。
新城市では今年、クマの目撃情報が2件あったといいます。全国的にも出没が相次いでいることから、鳳来寺山では初めて、注意を呼び掛ける看板を設置しました。
「クマ出るのかと思って、怖いなと思って」(訪れた人)
「遭遇したことがないから現実味がわかない」(訪れた人)
新城市は、紅葉を見に山に入る際は、鈴やラジオなど、音が出るものを携帯するほか、遊歩道から脇道にそれないよう注意をしながら紅葉を楽しんでほしいと話しています。
クマ警戒続く、5年前から

多くの山々に囲まれる岐阜県中津川市でもクマへの警戒感が高まっています。
9月には、帰宅途中だった高校1年の男子生徒(16)がクマに襲われ、けがをする被害が発生。
それ以降もクマの目撃情報が相次いでいます。
「今週は3件目撃情報があった。すべて住宅の近くで人の生活圏の中だ」(坂下猟友会会長 吉村俊廣会長)
この地域で50年以上狩猟を行う、坂下猟友会の会長・吉村さんは、その都度、見回りなどの対応に追われています。
取材をした19日も、高校の近くで目撃情報があったといいます。
「目撃情報は何回もあるが(人がいる)こういった場所が多い。街の中全体でどこに出てもおかしくない」(坂下猟友会 吉村会長)
吉村さんによりますと、坂下地区では5年ほど前から人里でのクマの目撃情報が増えていて、この5年間で11頭が捕獲・駆除されたといいます。
去年8月にはこんなケースも…。
坂下地区で農業を行う原さんは、自宅近くの倉庫に保管していた肥料用の「米ぬか」がクマに食べられる被害にあったと話します。
「クマが米ぬかをもっていってトタンの柵をまたいで下へ降りていって、河原で食べていた」(倉庫の所有者 原利春さん)
その一部始終を防犯カメラが捉えていました。
米ぬか狙って、何度もクマが

写っていたのは体長140センチを超える大きな「ツキノワグマ」。
原さんは、1度被害にあった後、米ぬかを冷凍庫の中にしまいましたが、その後何度もクマは姿を現したといいます。
冷凍庫には、今もくっきりとしたクマの爪痕が残っています。
冷凍庫を空にしても、クマが現れ続けたため、猟友会が倉庫内に「わな」を設置しました。
「一度人里に来て自分が危険に出会わない限りは必ずまた来る」(坂下猟友会 吉村会長)
わなを設置してから約1カ月。ようやくクマがわなにかかり、駆除したということです。
吉村さんは、クマが人里に現れるようになった1番の原因として 「人とクマが住む場所の境目があいまいになったこと」を挙げます。
「一番なのは耕作放棄地が原因かなと思う。草が生えて、動物の隠れ場になるとそれで街中に出てくるようになった」(坂下猟友会 吉村会長)

坂下地区は2つの山に挟まれていて、クマが暖かい時期に行動する山と、冬眠する山との間に位置しています。
そのため「クマの通り道」と呼ばれる場所が近くにあります。
「この上流1キロぐらいのところに、クマの通り道というのがあって、(冬眠場所に向かう)途中でこの川を渡るので川を渡るときに川に両方から隠れることができる。これに合わせて街の中に出てくるクマが時々目撃されている」(坂下猟友会 吉村会長)
以前は、人の生活エリアとクマの生息エリアが近い場所では畑などの手入れが行き届いていたため、それぞれの生活圏が明確に分かれていましたが、人口減少や地域の高齢化で、放置される畑などが増えたことで人とクマの「境界」があいまいに―。
吉村さんは、根本的なクマの対策として、人の生活エリアにある茂みや不要な果樹を伐採し、「境界」をはっきりさせることが必要だとしています。
人間とクマ。共存するための対策が急がれています。





