物流大手は増収増益「2024年問題」どうなった? 製造業の“荷物量減”で影響軽微も続く人手不足

働き方改革によるトラックドライバーの労働時間規制により、運べる荷物の量が大幅に減るとして懸念されていた「物流の2024年問題」。しかし2024年度の物流大手の決算会見では「それほど大きな影響はなかった」という声も上がっています。いったいなぜなのか。専門家に理由と物流業界の現状について話を聞きました。
2024年の影響は限定的 セイノーHD決算は過去最高の売上高

物流大手のセイノーホールディングスが5月14日に発表した2025年3月期の決算は増収増益で、売上高は過去最高でした。
セイノーホールディングスの2025年3月期の連結決算は、前の期と比べ売上高が14.7%増の7373億円、最終的な利益を示す純利益は32.2%増の192億円でした。売上高は過去最高で、4期連続の増収です。2024年10月に連結子会社化したMDロジスと業務効率化を進めたことや、運賃の値上げが浸透したことが要因です。
物流2024年問題の影響については…
セイノーホールディングス 田口義隆社長:
「西濃運輸自体はそれほど大きな影響はなかった。協力会社で『これから仕事を続けられない』という会社があるので、そこへの補完が課題になると思う」
働き方改革でトラックドライバーの拘束時間は年間216時間減

「物流の2024年問題」とは、働き方改革の一環で2024年4月1日にトラックドライバーの労働時間の基準が見直され、年間の拘束時間が216時間少なくなったことで、運べる荷物の量が減るとされていた問題です。国が発表したデータでは、2024年度の営業用トラックの輸送能力は、2019年度と比べて4億トン分、率にして14.2%不足すると試算されていました。
「2019年に比べ、2024年の荷物量は約1割減少」

物流の2024年問題と物流業界の現状について、立教大学経済学部の首藤若菜教授に話を聞きました。
立教大学 首藤若菜教授:
「荷物が運べなくなると言われていたが、基本的には大きな物流の混乱なく推移して2024年が終わった」
混乱が起きなかった理由は「荷物量」にあります。
立教大学 首藤若菜教授:
「2019年に比べて、2024年の荷物量は約1割ぐらい少なかったことがわかっています。推計の計算をしていた時点では、コロナが明けると、また人々の経済活動が活発になって、荷物の量が増えると予想されて、2019年のレベルに戻るというように考えられていたんですけれども、実はそれが戻らなかった」
コロナ禍でインターネット通販の需要は伸びたものの、影響は限定的だったと指摘。一方で、製造業の生産活動がコロナ前の水準に戻らず、荷物量が減ったといいます。
「法令の遵守ができていない事業者も…」

また物流企業や荷主企業の取り組みも功を奏しました。
立教大学 首藤若菜教授:
「効率的な物流をするために企業を超えて、(1台のトラックに複数社の荷物を載せる)共同物流を始めているということが、ここ数年の新しい動きとしてあると思います。その結果、運べないと考えられていた荷物量が、問題なく運べるようになったところもあると思っています」
さらには…
立教大学 首藤若菜教授:
「現場をいろいろ見て歩いていると、法令の遵守ができていないという事業者も中には存在をしていることは確かです。そのために、物流の混乱がなくてすんだ面もある」
ドライバー確保に「賃金の底支えも考えていく必要」

ただ今後、人手不足で輸送力不足に陥る懸念があると指摘します。
立教大学 首藤若菜教授:
「ドライバーの平均年齢は、大型車ですともう50歳を超えている。60代や70代でドライバーで働いてる人もたくさんいらっしゃるわけです。若い人が入ってくるのかというと、なかなか入ってこないし、目途の見通しも持てないという事業者の声を多数聞いています。そう考えると、着実にドライバーの数って減っていく可能性があって、(ドライバー確保のためにも)ドライバーの賃金の底支えも考えていく必要もあるのかもしれないと思っています」