東海地方の主要上場企業の中間決算の注目ワードは「関税」 使われる文脈は「ポジティブ」寄りに変化

東海地方の上場企業を中心とした主要28社の、2025年9月中間決算の会見で出た言葉に注目します。中日BIZナビ編集部の杉藤貴浩編集長に聞きます。
決算会見では「関税」の使用頻度が増加

「事業」や「配当」など、決算で定番の表現以外で注目すべき言葉は「関税」です。決算会見に使われた単語の1万語当たりの使用回数を大きさで示した図です。関税は25年3月期には13.8回と全体の10位だったのに対し、25年9月中間は17.2回と頻度が上がり、上位5位に入りました。
一方で、25年3月期決算では関連ワードとして登場回数が多かった「アメリカ」は、1万語当たり5.6回と頻度を下げ、「トランプ」は上位150位から姿を消しました。いまや「関税」というだけで、トランプ大統領が推し進める一連の政策を連想させるほど、定着したといえるかもしれません。

実は「関税」ということばが使われる文脈が変わってきています。25年3月期の決算時は、どれほどのインパクトがあるのかといった先行きが不透明で、影響額や対応策についても暫定的な発言が多かった印象です。特に中部地方の経済・雇用・技術を支える自動車産業の関連企業からは追加関税に対して、不安視する声が多く上がりました。

自動車関連のアメリカの関税の変遷を見ると、トランプ政権は4月、輸入車に対して25%、次いで5月にエンジンなどの主要部品に対して25%の追加関税を発動しました。その後の日米関税交渉を経て、9月には日本から輸入する自動車と自動車部品への関税は27.5%から15%に引き下げられました。
関税の文脈が“ポジティブになった”か

税率が確定したことにより、9月中間決算時では多くの企業が通期見通しの影響額をはっきり示すようになったんです。依然として業績への負担は残っているものの、想定よりも打撃は軽く済んだと言及する経営者もいて、「関税」が語られる文脈は「ポジティブ」寄りになった印象です。

例えばトヨタ自動車は26年3月期の連結業績予想で減益を見込んでいますが、関税の打撃を緩和できたとして、従来予想を上方修正しました。

トヨタ自動車 東崇徳経理本部長:
「今回の関税の影響というのはトヨタだけではなくて、仕入れ先さんも含めまして、皆さんと一緒に乗り越えていく大きな課題だと思っております。各社さん工程を見直したり、省人化をしたり、この関税のためだけではないんですけれども、前向きに捉えてチャレンジいただいているという状況ですので、商品力に加えて、現場の力で乗り越えていきたい」
トヨタGの9月中間連結決算、売上高は7社過去最高

トヨタグループの主要部品メーカー7社の9月中間連結決算。売上高は全社過去最高、営業利益は5社が増益となりました。このうちアイシンは、関税の影響で営業利益が194億円押し下げられたとしつつ、増収増益に。会見では増収増益に貢献した前向きなチャレンジの具体的な内容も明かされました。

アイシン 近藤大介グループ経営戦略本部本部長:
「特にアメリカへの関税でいくと、日本からだとアルミ製品というふうにして輸入をしますと、税率が50%かかってしまいますが、アルミ製品でなくて自動車部品として通関できるものは、それで通関が通れば、税率の方は25%に下がりますので、今までそこは精査できてない部分がありましたので、どういった品目で通関しているかを洗い出しながら対応できるものは対応しています」

ただ「自動車関連企業は関税を織り込んだと捉えていい」とは言えません。例えばホンダは、「関税税率上昇にあわせて値上げを想定していたが、難しいと判断」。日産は「一時的だと考えていた関税税率上昇がそのまま続くようなので、マネジメントが必要」と後手に回っている印象です。

東海東京インテリジェンス・ラボの細井克己シニアアナリストに取材したところ、「アメリカ国内が物価高になってきたので、物価を下げるために、品目によって関税を見直して引き下げるというような動きが出てくる。今後も関税で振り回される可能性はある」と指摘しています。

アメリカの関税に関しては、地元企業を中心に落ち着いた見方が増えた決算となりましたが、依然として重荷であり、トランプ政権の動向に注意が必要な状況は変わりません。トヨタ自動車が北米でのハイブリッド車の販売好調で関税の影響を緩和したように、各企業とも商品力を磨いていくことが求められそうです。
(2025年11月17日放送「5時スタ」 中日BIZナビ共同企画「東海ビジネススコープ」より)





