
「国の政策がコロコロ変わって本当に困る」 コメ価格高騰で異変 増産は難しく輸入米を売るしかない…アメリカ米の味は?【大石邦彦が現場取材】

高値が続いているコメは今、田植えの時期を迎えています。国はコメの増産を打ち出していますが、現場の農家は「急に言われても無理だ」と困惑しています。
こうした中、アメリカ米が市場にも入ってきています。コメを巡る実情はどうなっているのでしょうか。
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名古屋市内のスーパーの店頭にもようやく備蓄米が並び始める中、大手スーパーにはこんなコメも登場しています。
カリフォルニア米8割と国産米2割のブレンド米「二穂の匠」。価格は4kgで約3000円です。
(大石邦彦アンカーマン 以下:大石)「ここの部分、見てください。『米国産・国産ブレンド』、これを“べいこくさん”と読めるかですね。すぐにはアメリカ産が入っていると気づかない」
元々1kg190円程度と、前は460円程度だった国産より、大幅に安いアメリカ米。国はこれにkgあたり341円の関税をかけることで国産米を保護してきました。ところが今回の記録的なコメの高騰で、今や国産米は1kg900円を超え、関税を含めてもアメリカ米の方が大幅に安いのです。
「在庫では全然足りない…」輸入米販売の決断
一方、国産米にこだわってきた街の小売店も、輸入米の販売に踏み切らざるを得ません。
(大石)「ここには備蓄米はあるんですか」
(渡辺米穀店 渡邊正明 店主)
「もともと自分たちのルートには(備蓄米は)下りてこないと言われていたので、ずっと業界内で言われていたので、その通り入らない」
「まだ新米までは半年弱ある。それまでこの在庫では全然足りない」
そんな中で販売を決めたのが…
(渡辺米穀店 渡邊正明 店主)「アメリカ産カルローズです」
約30年前の記録的なコメ不足以来という、カリフォルニア米の販売。国産米と比べ粒が少し大きく、細長い形をしていますが、見た目にはほとんどわかりません。
では、肝心の味はどうなのか。産地を伏せて食べ比べてみると…
カリフォルニア米のお味は…
比べたのはカリフォルニア米100%と、カリフォルニア米70%と国産米30%のブレンドです。
(大石)
「私は山形県出身、コメどころです。おコメが大好きだから、絶対に間違えたくないです!」
「(食べてみて…)普通においしいですね。甘味があっておいしいな…。…わからない」
(大石)「整いました。これ(赤シール)がカリフォルニア米100%、これ(緑)が愛知のかおりとのブレンド米、これ(黄)がコシヒカリとのブレンドではないかなと思います」
正解は…。
(大石)「赤はアメリカ産、当たった!緑がコシヒカリか…」
(渡辺米穀店 渡邊正明 店主)「(赤のおコメは)一番淡泊ですよね」
(大石)「淡泊なのと、ちょっとパラパラしている感じはしました」
(渡辺米穀店 渡邊正明 店主)「そうですね、水もだいぶ増やして炊いてはいますが」
(大石)「正直もっと(国産米と)味が違うのかと思いました」
輸入米を売るしかない 台湾産米も…
カリフォルニア米は国産より1000円ほど安い、5kg3400円程度で販売予定。このほかにも台湾産米の入荷を決めています。いま、輸入米でも入れなければ売るものがないという現実も。
(渡辺米穀店 渡邊正明 店主)
「多少なりとも(外国産米を)使わないといけないと思っている。だけども本当はそんなことをせずに、やっぱりおコメはせめて国産をずっと使ってほしいと思います」
一方、国はコメ不足の中、基本政策の転換を図ろうとしています。
(3月19日 参議院予算委員会・石破茂 総理大臣)
「これからギリギリでいくのではなく、コメの生産を増やしていく。あるいは輸出を視野に入れて、食料の安全保障を考えていく。コメ政策全体について、もう一度議論が必要」
総理大臣も明言したコメの増産。では今年のコメ作りはどうなるのか。田植えはすでに始まっています。
「ここまでの増産は聞いたことがない」
早くも田植えが始まった弥富市のこちらの農家。国の方針を受け、主食米の作付面積を拡大しました。
(鍋八農産 八木輝治 代表)「うちの面積で換算すると、8ヘクタールだけですね」
(大石)「8ヘクタール主食米が増えて、加工米が減った」
(鍋八農産 八木輝治 代表)「そうですね」
国は毎年、コメの生産量の目安を立てて農家向けに提示していますが、それによると愛知県のことしの作付面積は2万6532ヘクタール。去年に比べ約1260ヘクタール拡大し、コメの量にして5300トンの増産となります。
国はコメの生産を抑えることで、価格の下落を防ぐ「減反政策」を長年行ってきました。制度としては2018年に廃止されましたが、その後も国は毎年生産量の目安を提示したり、小麦などへの転作を奨励したりすることで、コメ作りを抑制してきました。
(鍋八農産 八木輝治 代表)「増産は初めてですね。ここまでの増産は聞いたことない」
政策の180度転換ともいえますが、突然の増産には問題も。
「コロコロ変わって本当に困る」
(鍋八農産 八木輝治 代表)「これから使うやつですね。これが稲の種です」
(大石)「これが種なんですね」
(鍋八農産 八木輝治 代表)「(作付)面積を増やすということは、増やした分だけの種が要ります。今、種がないという話も出ている」
苗にする種もみの量は、前の年の収穫後まもなく決めてしまうため、後から急にコメを増産しろと言われても増やせないのです。
日本の稲作はこのままで大丈夫なのか?農家の本音を聞きました。
(大石)「国の政策がコロコロ変わって本当に困るんだよ、という方手を挙げてください。あ、これは全員ですね」
(4月16日 JAあいち海部・農家ら)
「大事なのは国が必要な(コメの)量をしっかり把握して、それ以上に作って価格も安定させながら、多い分だけ輸出する枠組みを作る。やっぱり足りないのに減反をして、足りないから輸入するという考えがそもそもおかしい」
「(アメリカ米は)1キロ341円の関税がかかっても安いので。僕らが首を絞められる」
主食米の増産については…
「増やせ、急にまた減らせ」は困る
(農家)「(正確な生産の)目標が定められないので、とりあえず安定した去年の数字で勝負をかける。増やせと言われても、急にまた減らせと言われても困るので、だから皆さん困って増やしもできないし、減らしもできない」
こちらの男性は最大限、増産の努力はしているとしたうえで。
(農家)「半年前から種やいろんな物が注文されて、このコメも主食・加工・飼料なのか契約も終わっているので。ことし『増産してくれ』と言われてもできない」
(石破茂 総理大臣)「コメの生産を増やしていく。コメ政策全体についてもう一度議論が必要」
長年続いた減反と、価格の自由競争に任せてきた中で起きたコメ不足と価格の高止まり。単に増産を呼びかけるのではなく、主食であるコメをどう保護するのかなど政策の根本的な転換も必要といえます。