
タブー描く“台湾侵攻ドラマ”がリアルすぎ「世界中に侵略行為と知ってほしい」 独立支持派見つけ密告促す

台湾で今、あるドラマが注目されている。描かれるのは、これまで台湾でタブーとされてきた中国による“台湾侵攻”だ。予告編がYouTubeで公開されると「ついに、このテーマが撮影された」「ずっと、この日を待ち望んでいた」などと歓迎コメントが溢れた話題作で、今年8月から放送が始まる。

なぜ、中国を刺激しかねない台湾侵攻をテーマに扱ったのか。作品を手がけた台湾のプロデューサー、鄭心媚(てい・しんめい)さんを訪ねた。
鄭心媚:
「戦争がますます近づいていると感じるようになり、早急にこの問題を考える必要があると強く思うようになったのです」
台湾をぐるりと囲む軍事訓練、海底ケーブルの切断、急増するサイバー攻撃…。台湾に迫りつつある危機を、今こそドラマで“見える化”する必要があったというのだ。
突然、街中のモニターが中国国営放送に

作品名は「零日攻撃 ZERO DAY ATTACK」。
悪夢は、台湾上空で消息を絶った中国軍機のニュースから始まる。中国軍は、機体の捜索を口実に台湾の周囲を海上封鎖。ATMなど金融システムはサイバー攻撃で麻痺し、中国に協力する者たちが街で暴動を起こすというシナリオだ。
中でも戦慄の場面がある。「自由がなければ台湾ではない」台湾総統が、市民に団結を呼びかけると、突然、画面が乱れ、街中のモニターが中国国営放送に切り替わる。祖国平和統一のテロップと共に登場する女性キャスターは、にこやかな表情で市民に降伏を呼びかける。そして、独立支持派を見つけたら中国軍に密告するよう求めるのだ。
「世界中に侵略行為だと知ってほしい」

1話完結で全10話、制作費は10億円以上という。ただ、制作には様々な困難があった。
鄭さん:
「例えば、出演したいという俳優がいても、スポンサーから政治的な作品に出ることを禁じられ、結局、断ってくる俳優が何人もいたのです」
政治的な問題に関われば中国に目を付けられ、仕事を失うかもしれない。中国への遠慮が、出演交渉や撮影場所の許可などに影響したという。ドラマには高橋一生さんら日本人俳優も登場する。なぜ日本人をキャストに加えたのか。
鄭さん:
「もし台湾で戦争が起これば、それは必ず日本にも影響を及ぼすと考えたからです。中国による台湾侵攻は内戦ではありません。侵略行為として世界中に認識してもらいたいのです」
これまで中国の圧力を、いつもの脅しだと、いわば高をくくってきた台湾。危機をリアルに描いたこの作品は、国際世論を大きく動かすかもしれない。
注目のドラマは、8月2日から台湾の公共テレビなどで放送、日本では8月15日から配信される。