クマ急増「生息範囲を広げようとする習性+ドングリ不足」専門家指摘 遭遇したら「後退して距離を保って」

秋が深まってきて紅葉狩りや登山、キャンプなど山での活動を楽しむ方もいらっしゃると思いますが注意が必要なのが、クマによる被害です。なぜクマの被害が増えているのか、原因と対策について調べました。
愛知県内では15件のツキノワグマの目撃情報

環境省によりますと2025年度クマの被害で亡くなった方は、10月30日時点で12人過去最多の人数です。人身被害や出没情報も過去最多のペース。また、愛知県内でも2025年度は15件のツキノワグマの目撃情報があります。
10月29日には、新城市の山林でニホンジカやイノシシ用のわなにツキノワグマがかかり、興奮状態でわなが外れる可能性があったため、安全確保のために殺処分されました。県によりますと、近年この周辺でのクマの目撃はありませんでした。
クマ出没増加の要因は「生息域の拡大」と「活動の長期化」か

クマの生態に詳しい東京農業大学・山崎晃司教授に取材をしました。近年クマの出没が増加している背景には、「クマの生息域の拡大」と「活動の長期化」の2つが関係しているといいます。

さらに、山里から行動範囲を広げようとするクマたちが人里にも出るようになり、人との遭遇が増えているとのこと。ここ数年はクマの餌になるドングリが不作になっているのも関係しています。山の中にクマの餌が少なくなっていることも要因の1つだといいます。

そして山崎教授によりますと、クマが冬眠する時期には個体差もありますが、だいたい11月・12月から3月ごろまで。ただ、近年は気候変動によって冬でも厳しい寒さにならず、冬眠に入るまでが遅くなっています。そのため、活動期間が長いクマもいるということです。
「クマに遭遇する前提で行動してほしい」

山崎教授は「山はクマのいる環境だと思って、遭遇する前提で行動してほしい」と話します。まず山に入る際の対策は、クマの出没情報を山のビジターセンターやキャンプ場に確認する、クマ鈴やクマよけスプレーといった道具を活用すること。山崎さんが特に大事だと話すのは食べ物の取り扱いです。

登山やキャンプでは「匂いを発する食べ物は容器に入れて持ち歩く」「食べる際は長時間放置しない」のが鉄則。クマは匂いに敏感な生き物で、信州大学の研究によると3.3キロ先にあるものの匂いを嗅ぎつけて移動したケースもあるほど嗅覚が優れているといいます。クマが食べ物の匂いに反応して近づいてこないよう注意しましょう。
家の外に食べ物や生ごみ、ペットフードを放置しない

また、最近は山の中でなくても、クマが人間の生活圏に出てくる場合もあって心配です。山崎教授は山が近くにある住宅でも注意してほしいことがあるといいます。家の外に食べ物や生ごみ、ペットフードを放置しないこと。特にペットフードはクマが好む食べ物の1つなので必ず片付けをしてください。

もし遭遇してしまった場合、まずは落ち着いてクマに背を向けずに静かに後退して距離を取ります。万が一襲われそうな場合は、うつ伏せになり両腕で頭や首を覆って急所を守ってください。クマとの遭遇を避けるための対策、遭遇した時に命を守るための行動を今一度確認しましょう。
※山崎教授の「崎」は「たつさき」





