「愛知・知多半島の食文化を広めたい」“たまりじょうゆのうな重”きっかけで展示会 脱サラした男性の思い

愛知県半田市で知多半島の食文化を知ることができる展示会が開かれています。展示会を開いたのは愛知県外出身の男性。展示会を開催したきっかけは忘れられない「うな重」でした。

半田市にある半田赤レンガ建物。明治時代に建てられた歴史的建造物で、4月にリニューアルをしたばかりです。その一角に少し変わった展示会が開かれていました。みそにしらす。看板には「ハントーフードハント」と書かれています。

この展示会を企画した「つけたろう株式会社」の松岡研三さんです。松岡さんは日本酒の専門家です。酒好きが高じて脱サラ。会社を立ち上げ、行政などと連携して全国でイベントを開いています。お酒と同時に、数々の地方の食にも触れる「フードハント」をしてきました。

つけたろう株式会社 松岡研三さん:
「半田のみならず知多の食文化は最高だなと思って。車で30分以内になんでもある。魚だけじゃなく貝もすごいし、牛も豚もどちらもブランドを持っていて、いろんなおいしい野菜も豊富にとれる。とにかくなんでもあるんですよね」
「うな重」がきっかけに

知多半島の食文化の展示会を開くきっかけとなったのが「うな重」です。
つけたろう株式会社 松岡さん:
「知多のうな重は特徴的なことがあって、たまりじょうゆでつくられていることなんです。たまりのうま味とうなぎのうま味がかけ合わさって、ものすごい『うま味重』になっています」
知多半島はたまりじょうゆの一大産地として知られていました。しかし、いま危機が訪れています。
「県外から結婚して来たりとか仕事で来たりすると、たまりじょうゆの文化に触れてこない。接点が少なくなっているのかな」
知多半島の伝統の味が衰退しつつある現状

たまりじょうゆを作っている中定商店です。知多半島にある武豊町で約140年たまりじょうゆを作り続けています。

中定商店 中川安憲代表:
「しょうゆを買う場所としてはスーパー。その売り場を見ればわかると思うんですけど、圧倒的にたまり以外のしょうゆ、濃口しょうゆとかが幅を利かせていて。うちはかなり減りましたね。10分の1ぐらいになっています。この地域で根付いてきたものが近年、急に減ってきたのは残念ですよね」
松岡さんが開いた展示会について、中川さんは「すごくありがたいし、うれしい」と話します。

中定商店 中川代表:
「正直、いまのままだと続けていくことも大変な状況なので。使ってもらって少しでも増えていけば、次の世代にもつないでいけます」
「地元にいても知らなかった」知多半島の魅力を再発見

ほかの展示物にも、ある共通点が。
中定商店 中川代表:
「知多半島に箱すしという郷土料理があるんですけど、なかなか食べられなくなってきていると聞いて寂しいなと」
自分が「おいしい」と思ったものが、近い将来なくなってしまうかもれない。何か自分にできることはないかとの思いから、この展示会を開いていました。
しょうゆの試食コーナーも

展示会を訪れた客に話を聞いてみると「知多半島って、いろんなものがあるんだな」「地元に住んでいても知らないことがたくさんだった」と驚いた様子。
訪れた客:
「普段はスーパーのしょうゆを買ってしまうんだけど、地元民として一度使ってみたい」
展示会には実際にしょうゆなどを試食できるコーナーもありました。

訪れた客:
「昔はたまりじょうゆとか豆みそとか食べていたのに最近は食べられていないので、なつかしくて。これも買っていきたいです」
歴史ある郷土のおいしい食材がいつまでも食べられる世の中にしたい。松岡さんの思いは確かに伝わっていました。

つけたろう株式会社 松岡さん:
「特に半島とかって、高速が通ってない、電車が通ってない、アクセスが難しいとかガラパゴス化している地域があると思います。だからこそ独自に発展した食文化があるし、知られていない。そこに関わることで、知るきっかけをつくれたらうれしいなと思います」