午後9時から翌朝10時までは無人営業 街の書店が減少する中、三洋堂書店が24時間に活路
愛知県豊田市にある三洋堂書店・本新店は、2月から無人営業を開始し、売り上げを増加させています。特に深夜から早朝にかけて利用する客が多く、24時間営業のメリットを最大限に活用しています。今回はその取り組みと成果を取材しました。
無人営業の仕組みと利用状況
愛知県豊田市にある三洋堂書店・本新店は、午後9時から翌朝10時までの時間帯に無人営業を行っています。入口に設置されたカメラに顔を向けると自動扉が開いて入店。この時間帯には店員がいませんが、多くの客が訪れています。
深夜の利用者たち
深夜の無人営業を利用する客の中に、IT企業に勤務する60代の男性がいました。「仕事が遅く、この時間にしか来られなかった」。実物の本を手に取って選ぶことのメリットを感じているといいます。また、大学生の女性は「バイトが終わってから秘書検定の本を買いにきた。めちゃめちゃ助かる」と、同書店の便利さに笑みをこぼします。
売り上げ増加と経営への影響
この日、無人営業の時間帯に来店した客は80人。合わせて84冊の本を購入しました。三洋堂書店では、無人営業を始めてから売り上げが4%増加し、店の売り上げに占める無人営業の割合は11%となっています。
三洋堂ホールディングス社長の加藤和裕さんは「最低時給の上昇に伴い、人手を確保するのが難しい中、無人営業はお客様から支持をいただけている」と語ります。
三洋堂ホールディングス 加藤和裕社長:
「無人営業を取り入れた店は、すべて前年の売り上げを上回っています。お客さまから支持をいただけている仕組みです」
万引き対策と顔認証システム
無人営業の開始にあたり、三洋堂書店は入口に顔認証システムを導入しました。どの客が何時に入店したかを把握でき、万引き被害を防げるのです。システムの導入に約100万円かかりましたが、その費用は半年で回収できました。
日本経済新聞社 名古屋支社 山名直花記者:
「日本国内の書店の数はこの10年間で約3割減っていて、今後も減少に歯止めがかからない状況です。三洋堂書店では、人経費をかけずに売り上げを伸ばせる無人営業に、書店経営の活路を見いだそうとしています」
三洋堂書店の取り組みは、書店業界全体に新たな可能性を示すものであり、今後の展開が期待されます。