酷暑で“夏祭り”が“秋祭り”に 江戸時代から続くユネスコ無形文化遺産が「苦渋の決断」 三重・四日市市

連日の危険な暑さを受けて、江戸時代から続く伝統の祭りも、命を守るために「苦渋の決断」を迫られています。
6mを超える船の形に大きな車輪。三重県四日市市の夏の風物詩「鯨船まつり」の山車です。
約250年前から続く鳥出神社の神事「鯨船まつり」。
重さ2tもの船の形をした山車4台が、“豊かさ”の象徴と見立てた張り子のクジラを仕留めて神社へと奉納する、全国的にも珍しい陸上で行われる模擬捕鯨の神事です。
2016年には「山・鉾・屋台行事」の1つとして、ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。
本来、祭りが行われる1カ月前のこの時期は、山車を組み立て、演技の練習などが始まっているはずですが…。
Q.今年の祭りの準備は?
「今年は祭りをちょっと遅くしたので、準備も1カ月ずれます」(富田捕鯨保存会連合会 加藤正彦 会長)
例年、8月14日と15日に祭りを開催していましたが、今年は1カ月以上遅い9月27日と28日に延期しました。夏祭りのはずが、実質”秋祭り”に。
「8月の14・15日は夏でも1番暑くて、熱中症情報も『危険・危険』が続く」(加藤会長)
子どもから高齢者まで参加する、歴史ある地元の祭り。時期をずらす判断には、葛藤もあったといいます。
「伝統行事なので、そこに思い入れのある人達にしてみれば『これはちょっとね』というのはあると思う。この地域の風習を変えることにもなってしまう。抵抗があるが、それ以上に暑い盛りに熱中症で人が亡くなったらどうするんだと」(加藤会長)
地元の人には賛否両論

これまではお盆の時期だったので、帰省してきた人や夏休み中の子どもが参加できていましたが…。
「『その時期(9月下旬)だったら来られない』と言う人はいる。人が集まるのかどうかは一番大きな課題」(加藤会長)
9月に実施される今年の祭りについて、地元の人はどう思っているのでしょうか。
「“人が死んだら祭りも終わり”という考え方。5割5割の賛成・反対。土曜日が自営業の人などは参加しにくい」(60代)
「(息子は)今年仕事で参加できない。晴天だと9月末でも暑いので…先が読めない」(50代)
年々厳しくなる暑さの影響で、恒例の祭りの日程変更を余儀なくされたことについて、四日市市の担当者は―。
「激しく動く祭りなので、夏場は体調が気になっていた。観光資源の一つですし、江戸時代から続く伝統的な大事な行事なので、長く継承してもらうよう支援していきたい」(四日市市 文化課 葛山拓也 課長補佐)