
図記号で「どんな災害のための避難場所なのか」掲示 災害によって避難場所が違う場合も【暮らしの防災】

以前の記事で「災害の種類により避難場所が違うケースがある」と紹介しましたが、改めて少し詳しく説明します。まず、おさらいです。緊急時に避難する安全な場所は「避難場所」、被災者が一時的に暮らすことになる場所は「避難所」です。避難場所は、災害対策基本法では「緊急避難場所」とされています。単に「避難場所」または「避難地」とも呼ばれています。そこには図記号(イラスト)で、「どんな災害のための避難場所なのか」が掲示されています。
災害の種別ごとの図記号

避難場所、避難所の図記号による掲示例は次の通りです。
それぞれの看板の右側に示されているのが「災害の種類」です。避難場所は災害の種類ごとに「被害が及ばない場所」が指定されています。どの災害に対応した場所・施設なのか「〇X」で表示されています。
そして、避難場所は、それぞれ法律に基づいて決められています。
洪水・内水氾濫

洪水=水防法の浸水想定区域(同法第14条第1項)に該当しない場所
内水氾濫=水防法の浸水想定区域(同法第14条の2第1項)に該当しない場所
津波・高潮

津波=津波防災地域づくりに関する法律の津波浸水想定(同法第8条)に該当しない場所
高潮=水防法の浸水想定区域(同法第14 条の3第1項)に該当しない場所
土石流 崖崩れ・地滑り

土石流 崖崩れ・地滑り
=土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の土砂災害警戒区域(同法第6条第1項)、土砂災害特別警戒区域(同法第8条第1項)に該当しない場所
=国土交通省所管の土砂災害危険箇所に該当しない場所
=林野庁所管の山地災害危険地区に該当しない場所
=農林水産省農村振興局所管の地すべり危険箇所に該当しない場所
大規模な火事

大規模な火事
=各地方公共団体において作成されている延焼危険度を示す地図等や、地震時等に著しく危険な密集市街地等において大規模な火事による輻射熱等の影響が及ぶ範囲に該当しない場所
<ハザードマップの色塗りエリアの外=白いエリア>
避難場所は、ハザードマップで赤や黄に塗られている区域の外側=白いエリアにあります。津波の場合は、想定浸水域内では「津波避難ビル」「高い場所(高台)」が避難場所に指定されています。
想定浸水域の外まで避難する余裕があれば、そこまで逃げた方がより安全です。しかし時間的な余裕が無い時は「津波避難ビル」「高い場所(高台)」に避難してください。
想定南海トラフ巨大地震の場合、三重県の南部、愛知県の外海に接している地域は地震発生から大津波到達まで時間の余裕がないとされています。激しい揺れが終わったら、すぐに落ちてくる物や足元に気をつけて逃げてください。
<普段からチェック>
避難場所の表示は、普段から気にするようにしましょう。住んでいるエリア、ちょっとした出かけ先、遠くへの旅先でも、街を歩く時は「避難施設」「避難所」の掲示を見かけたらチェックしましょう。その位置だけでなく、どんな災害の可能性があるのかも把握しましょう。
旅先の街で「災害」にもチェック!とか言われると、楽しい旅行へのテンションが下がるかもしれません。しかし、日本の多くの街は災害を経験し、乗り越えて「いま」があります。街そのものの「つくり」「主要施設の位置」など、過去の災害での教訓を反映させていることがあります。
インターネットで調べたり、市役所や町村役場・郷土資料館にある災害史のパンフレットをチェックしたりすると、その街をより深く知ることができます。
「避難施設」「避難所」の掲示を、ぜひチェックするようにしてください。
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被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。
■五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。