創業200年の老舗ガラスメーカーが「コーヒー栽培」 300℃の排熱を活用してSDGs 愛知・岩倉市

創業200年、愛知県岩倉市にある老舗硝子メーカーが、工場から出る熱を活用して、新たに作り始めたものとは?
愛知県岩倉市に本社を置く、創業200年を超える「石塚硝子」。
その名の通り、様々なガラス製品をはじめ、ビンやプラスチックの容器などをつくる”総合容器メーカー”です。
そんな企業が最近、容器ではないものを作り始めたといいます。
ヒントは、ガラスを溶かす工場から少し離れたビニールハウスの中に。
「ここら辺はもうすぐ一斉に咲くところ」(石塚硝子 新事業創出グループ 両角秀勝さん)
Q.この白い花は?
「こちらはコーヒーの花」
始めたのは、「コーヒーの栽培」。
なぜガラスメーカーが栽培を始めたのでしょうか?
「日々ガラスの生産現場に触れている中で、常時流れている排熱をどうにかできないかという課題感を持っていた」(両角さん)
排熱を生かして「コーヒー栽培」

ガラスを溶かす設備は、24時間365日動かし続ける必要があり、常時300℃の熱を排出しています。
以前は風呂を沸かすことなどに使っていましたが、最近はあまり使われなくなっていました。
排熱を生かす先として、温暖な気候で育つ「コーヒー」に着目しました。
「現地での異常気象による収穫量への影響や、人件費や肥料の高騰でコーヒーの値段も高くなっているという中で、排熱を利用することで国内でコーヒーを作れないだろうかと考えた」(両角さん)
約3000万円を投資したプロジェクト

約3000万円を投資して、ビニールハウスや排熱を利用してお湯を送り込む配管などを整備。
冬であっても、コーヒーの生育に適した20℃以上を保つようにしています。
行き先がない排熱をコーヒーの安定供給につなげる、まさに”ウィンウィン”なチャレンジですが、まだ道半ばです。
「これはグアテマラから来たモカという品種」(両角さん)
Q.収穫までどれくらいかかる?
「3~4年。10種類ぐらいのコーヒーを育てていて、育てやすさ、収量、味を比べて、岩倉市で育てるのに適した品種を見極めていきたい」(両角さん)
コーヒー好きなメンバーと試行錯誤

現在育てているのは、芽が生えたばかりのものも含め約70本。
まだコーヒーが飲めるまでではありませんが、成木に近い一部の木には赤いコーヒーチェリーの実が。
「甘みもあるので、果肉を食べてみることもできるんですけど」(両角さん)
食べてみると――。
「ちょっと苦みがあるけど、ちゃんと舌で甘みを感じますね。でもコーヒーの味はあんまりしないかもしれない」(石塚莉子 記者)
ちなみに発案したのは、コーヒーが大好きな両角さんではなく、春から産休中の竹中梨恵さん。
竹中さんから思いを引き継ぎ、コーヒー好きなメンバーと試行錯誤しながら取り組んでいるといいます。
「3月ぐらいに油断していたら、夜すごく冷え込んだ時があって。芽が出た苗が枯れてしまった。コーヒーの木が成長していく、花が咲く、実がなるというところを見ていると、日々の成長をみて楽しいなとやりがいを感じるところです」(両角さん)
本格的な収穫は3年後

このほか、卵の殻を使ったガラスの製造や、消臭効果のある成分が練りこまれた歯磨き粉の開発など、新規事業への取り組みを加速させています。
ガラス製品の担当者も注目しているようで――。
「私自身がコーヒーが好きなので、コーヒー豆とガラス食器を結び付けた企画を近い将来できれば。今後も意外だなと思うガラスとの結びつきがある商品が開発されると面白いなと思う」(アデリア 広報チーム 川島健太郎さん)
本格的な収穫ができるのは3年後。
排熱を利用した栽培の仕組みや品質、収穫量を見極め、事業化を目指します。
「地元のコーヒー店とのコラボや、ふるさと納税など、岩倉市産のクラフトコーヒーみたいなものを目指していけたらいいのかなと思う」(両角さん)