事故の夜行バス、緩いカーブを曲がらず防風林に突っ込んだか 亡くなった運転手「大きな持病なし」

前の停留所を出発してわずか10分後に起こった三重県御浜町の夜行バスの事故。一体何があったのでしょうか?バスの乗客が、当時の状況を話しました。
「こちらが事故を起こした大型バスです。前方部分に木がめり込んでいて、足元を見ると扉が外れているのがわかります」(メ~テレ 前田怜実 記者)
防風林に突っ込んだ大型バス。フロントガラスは、くもの巣状に無数のヒビが入り、前方が大きく潰れてしまっています。
22日午後8時半ごろ、三重県御浜町の国道42号で和歌山県那智勝浦町からさいたま市に向かう途中の夜行バスが防風林に突っ込みました。
「ドーンッと音がした。衝撃の音だった。エンジンがかかったままで止まっていて、その後救急隊が来た」(近所の人)
この事故で、バスを運転していた橋爪悟司さん(57)が死亡。乗客21人も病院に運ばれました。中には骨折や入院をした人もいましたが、いずれも命に別状はないということです。
緩いカーブを曲がらず突っ込んだか

現場周辺は、海岸線に沿ったほぼまっすぐの道で、制限速度は時速50kmです。一体、どのような場所なのか。事故直後の現場を見た人は…。
「一直線で見通しもよいので、大きな事故が起きるのも見たことがないし、多分想定もしないと思う。(事故現場を)見たときは『なんで?』という感じ。対向車線側の防風林に突っ込んでいたので何があったのかなという感じ」(事故現場を見た人)
運転する人にとって、この道路は走りやすいといいます。事故現場周辺を実際に走ってみると…。
「国道42号です。事故現場の直前には緩やかなカーブがかかっています」(メ~テレ 福田真依 記者)
事故現場の100mほど手前にある緩やかなカーブ。
バスはカーブを曲がることなく、車線を越えて林に突っ込んだとみられます。
乗客「血を流している方もいた」

事故当時、一体何が起きていたのでしょうか。バスに乗っていた男性が、メ~テレの取材に応じました。
「カーテンが閉まっていたので状況はよく分からなかった。急にガタンと落ちる感じがあって、そのあと木にぶつかる感じがあった」(事故をしたバスに乗車していた 笹之内壮多さん)
笹之内さんは東京へ向かうため、22日午後8時20分ごろ七里御浜の停留所からこのバスに乗車。
事故が起きたのは、停留所を出発してから約10分後のことだったといいます。
「ガタンと来て、ドンと何かにぶつかったような感じだった。その時はわからなかったが、ひざが痛かったのでひざを打ったと思う。頭から血を流している人や鼻や口を切って血を流している人もいた」(笹之内さん)
事故の前のバスの状況については…。
「思い返しても蛇行運転をしていたり、急ハンドルを切ったりなどは分からなかった」(笹之内さん)
死亡の運転手「大きな持病はなし」

「午前8時半過ぎの事故現場です。たった今、大型のクレーン車が到着しました」(メ~テレ 石部隼之介 記者)
2台のクレーン車によって吊り上げられたバス。
事故現場からの撤去作業は、23日の午前中に完了しました。
事故の原因はまだわかっていませんが、警察によりますと道路上にブレーキの痕はなかったといいます。
バスを運行する西武観光バスによりますと、運転手の男性は事故前日の21日夜、埼玉の大宮営業所を出発。夜行バスを運転し、22日の朝に勝浦温泉に到着しました。
午前9時過ぎには退勤。休憩や睡眠をとった後、午後7時前には出勤し、その約45分後に出発するバスに乗り込みました。
那智勝浦町を出発してから、約1時間後に起きた今回の事故。
運転手の男性に大きな持病などはなく、当日の点呼も問題はなかったといいます。
また、バスについても当日の点検や、2月の法定点検に異常はなかったということです。
三重県警は24日、「西武観光バス大宮営業所」に過失運転致傷の疑いで家宅捜索に入りました。
運転手の勤務状況などについて、資料を押収して、事故の詳しい原因を調べる方針です。
長時間のバスでは一般道でもシートベルトを
当時の様子を話してくれた笹之内さんによりますと、途中の停留所で乗り込んだ際に、車内でのシートベルト着用に関するアナウンスがあったそうです。
シートベルトの重要性について、日本バス協会にも話を聞きました。
夜行バスや高速バス、観光バスなど、長時間の乗車の際に「高速道路に乗ったらシートベルトをすればいい」と思われている乗客の方も多いそうです。
安全のためにも、たとえ一般道でも、しっかりシートベルトを締める。ここを徹底してほしいと話していました。