愛知万博から大阪・関西万博に“笑顔のバトン” 名古屋出身アートディレクターの「メリープロジェクト」

20年前の「愛知万博」から大阪・関西万博へ。名古屋市出身のアートディレクターが繋いだのは、子どもたちの”笑顔のバトン”です。
「子どもたちの笑顔は未来への希望です。世界はひとつ、ひとつの夢、そして平和です。1.2.3、MERRY!」
傘から、世界中の子どもたちの笑顔が広がります。
世界各地で子どもの笑顔を撮影し、発信している名古屋市出身のアートディレクター・水谷孝次さん(74)。子どもたちの未来に笑顔を繋げようと、SDGsの活動などを行っています。
地球を「笑顔」で幸せな世界にしよう。それが「MERRY PROJECT(メリープロジェクト)」です。
「戦争のない、笑顔いっぱいあふれる世界にしたい。そういう仕事がしたいと思い続けて、1999年にメリープロジェクトを始めた。それから26年続けている」(メリープロジェクト 代表 水谷孝次さん)
これまで訪れたのは世界40カ国。5万人以上に「あなたにとってのMERRY(幸せ)」を問いかけてきました。
愛知万博で「『笑顔』は平和の橋渡しとなる」と手ごたえを感じ、その後も各国で行われた万博会場を回りました。
2021年に開催されたドバイ万博にも参加した水谷さん。会期中にロシアがウクライナへの侵攻を開始した時は、ウクライナのパビリオンの応援に参加しました。
ウクライナやネパールを応援

今回の大阪・関西万博のウクライナ館は、コモンズ館の一角という小さなスペースになりましたが、国の実情に迫る展示内容を水谷さんは賞賛します。
「グラフィックデザイナーとしても、やられたなと思うぐらい素敵でした。声高々に戦争を言うわけではなくて、かわいいグラフィカルなものにデータを読み取る。そこから悲惨な画像が、いまのウクライナの状況が浮かび上がってくる」(水谷さん)
一方、水谷さんが支援を続けているネパールでは、パビリオンの建設費の未払いが起き、オープンが3カ月あまり遅れました。
「ネパール地震(2015年)とインドからコロナが入ってきて年々経済が悪くなり、かなりネパールの状況は悪い」(水谷さん)
水谷さんは、ネパールの蒸し餃子「モモ」をモチーフに「MOMOタロー」をデザイン。ネパールの子どもたちに絵本を届けるなどの活動を続けています。
「笑顔」をたずさえて、戦争や貧困、災害の現場の人々を励まし続ける水谷さん。同じように世界の子どもたちに目を向ける人物がいます。水谷さんはイベントへの参加をお願いしました。
サヘル・ローズさんも参加

イラン出身の俳優サヘル・ローズさん。35年前「イラン・イラク戦争」のさなか4歳で家族と生き別れ、8歳で日本にやってきました。
サヘルさんは難民キャンプなどを訪問して、子どもたちと交流しています。
「難民となってしまった人たちには“難民”という名前ではなく、ひとりひとりに名前がある。ひとりひとりに尊厳と人権がある。難民という数字としてデータで見る前に、その人たちが同じ人間であることを知っていてほしい」(サヘルさん)
明るい未来を映し出す万博会場で、サヘルさんは「アグ」という女の子の手紙を朗読しました。
「女の子として、自分で生きていたい
お父さんよりも、ずっと年が上の人と結婚させられたくない。
ワタシは家族を幸せにしたいの
国と国じゃ友達になれなくても、人間と人間は友達になれるんじゃないかな
いじめあうより みんなの笑顔がたくさんできたら
戦争はおびえて 消えていくよ」(アグさんの手紙より)
「まだ7、8歳なのに、自分が大人になれるかどうかも、その年齢まで生きているかさえも分からない。生きられないこともわかってしまう子たちがたくさんいる」
「みなさんにお願いがあるのは、どうか“無関心”というスイッチを“関心”というスイッチにいれてもらい、世の中で起きていることに対してちゃんと自分の意識を向けてほしい」(サヘルさん)
サヘル・ローズさんのメッセージのあと、子どもたちの笑顔がひとりひとりの心に刻まれていきます。
万博会場に届ける「笑顔」のメッセージ

笑顔を求めることは、簡単なようで難しいところもあります。
「一人でも多くの子どもが泣くのではなくて、笑顔で心から笑える時代。そんな世界を求めてメリープロジェクトに、私も本当のスマイルが世界中にあふれてほしい」(サヘルさん)
万博会場に「笑顔」のメッセージを届けた水谷さん。サヘルさんとともに手ごたえを感じています。
「人間は神様が与えた大きな力として笑顔の力があるのに、AIとテクノロジーで消えていってしまっている。万博に来ると、みんな笑いながらいろんな国の人と話ができる。万博みたいな所が世界に広がるといいと思う」(水谷さん)
大阪・関西万博での今後の活動予定としては、9月21日の「国際平和デー」にあわせて行われるイベントに参加。
会場で再び、子どもたちの”笑顔の傘”がみられるということです。