「習近平国家主席が一番欲しいものは台湾」激しさ増す米中の関税戦争のウラで、余裕を見せる「中国」の思惑

アメリカと中国との関税戦争が厳しさを増す中、中国の習近平国家主席が5月8日、ロシアのプーチン大統領と会談します。対トランプを見据えた中国の思惑や中国とアメリカの本音について専門家に話を聞きました。

ロボット塔里夫:
「私は塔里夫(たりふ)です。国際的な財政機能を担うロボットです」
塔里夫というロボットが主役のこの動画は、中国国営通信の新華社が制作しました。関税を英語でいうとタリフであることから、この動画は中国側がトランプ関税を意識して制作したことが分かります。
動画の中で塔里夫は、アメリカ国民の利益を守るために輸入品に関税をかけるように指示されます。しかし、次第にアメリカ国内が失業率の上昇や物価高の課題に直面します。すると塔里夫は自爆しました。

今、アメリカと中国との関税戦争が続いています。アメリカが中国に対して、合わせて145%の追加関税を課す一方、中国はアメリカに対して合わせて125%の追加関税を課すとしています。
そんな中、中国の習近平国家主席は4月、貿易相手国として重視するベトナム、マレーシア、カンボジアを訪問し、関係を強化しました。さらに7日からロシアを公式訪問し、8日にプーチン大統領と会談します。

対立が激化する米中関税戦争の裏側にある中国とアメリカの本音について、朝日新聞で、北京やワシントンの特派員を9年間務めた峯村健司さんに話を聞きました。
ーーー習近平国家主席がロシアのプーチン大統領と会談かという状況になっている。狙いはなんでしょうか。
トランプ政権の最大のターゲットは中国。中国は孤立してしまうことは非常に恐れている。なので、ここはある意味1人ぼっちにならないように、一番仲のいい友達であるプーチンと会っておいて、今後のトランプとのガチンコのぶつかり合いの前に備えておきたいという意図があると思う。
ーーー中国とアメリカどちらが優位すべきでしょうか。
私は中国だと思う。パッと見ると多くの人たちはアメリカが優位だと見ている。今後、モノがないのはどちらかというとやはりアメリカ。アメリカの方が相当、中国製に依存している。だからこそ中国製品がなくなると困るという状況。
中国の方も当然、アメリカに輸出で頼っていた製造業などはどんどん潰れている。だが、中国の方がある程度準備をしてきた。製造業だけではなく、ほかの地域にも拡散したり、アメリカ以外に輸出をしたりしている。そこを考えると中国の方が優位だと思う。
ーーー米中の関税戦争はどのように終わりを迎えますか。
交渉で一番欲しいものを出すと思う。アメリカからすると貿易赤字を減らせというところは間違いないと思う。トランプからすると一期目からぶれていないが、貿易赤字が全ての悪。それがいまアメリカの富を奪っていると信じている。だから貿易赤字を減らさなければいけない。その貿易赤字を一番抱えているのは中国。だから中国に腹が立って一番関税をかけている。それを解決してくれ、というところだと思う。

ーーー中国の狙いはなんでしょうか。
習近平氏からすると、貿易ではなく台湾。台湾の統一は習近平氏がトップになった2012年からずっと言い続けている。やらなきゃいけない、と。ここでなんらかの譲歩をしてくれと、アメリカに求めてくる可能性がある。中国からすると貿易赤字で多少お金を払ったとしても、一番欲しいものである台湾さえとれれば安い買い物とみる可能性がある。
ーーー関税戦争から本当の戦争に発展する可能性もありますか。
多くの専門家が言っているのは、ミサイルをぶっぱなして船が上陸して…という可能性は高くないと思う。むしろ中国がやろうとしているのは、島の周りを包囲する形にして物流を止めるような形で『話し合え』というやり方が可能性として高いと思う。
ーーー関税戦争はどう終結すると予想しますか。
どう考えても長い間継続できるものではない。結果としては、ある程度話し合いをして、ディールをして、落ち着くところに落ち着くだろうという可能性が高い。落ち着いたときに、誰が勝ち組になっているかがポイント。そこに日本が勝っていられるのか。
日本は今の段階だと、トランプ政権から先頭に立っていると言われている。これが失敗すると、下手したら一番最後になってしまう。負け組になるかもしれない。日本だけ高い関税が残って、貧しくなって、戦争にも巻き込まれるという地獄のような状況になりかねない。今、非常に大事なポイントにあるとみている。