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教科書から消えた“集団自決は軍の強制”…沖縄戦の体験者が訴える『伝承の課題』歴史は曲げられてしまうのか

東海テレビ
08.12(火)21:00

 2025年6月23日、沖縄は80回目の「慰霊の日」を迎えた。戦争の記憶が薄れつつある中、沖縄戦の体験者からは「いつか正しく伝わらなくなるのでは」という懸念の声が上がっている。

■沖縄戦80年「まだ忘れない」慰霊の日に祈り

 沖縄県糸満市の平和祈念公園。梅雨が明けた空から、強い日差しが降り注ぐ中、人々が祈りを捧げていた。 戦争体験者の女性: 「お父さんも亡くなるし、おじさんも亡くなるし、妹2人も亡くなるし」 Q.80年経ってどうですか? 「まだ忘れないね」

およそ24万人の沖縄戦の犠牲者の名前が刻まれた「平和の礎」には、戦後80年が経った2025年にも、新たに犠牲者の名前が刻まれた。

沖縄戦では、激しい地上戦を含む、長期間の戦闘が繰り広げられた。大量の爆弾が次々に投下され、その激しい攻撃は“鉄の暴風”という例えで語り継がれている。

6月23日、沖縄は深い祈りに包まれた。沖縄戦が終了したとされるあの日から80年が経ち、凄惨な歴史を後世に語り継ぐことが課題となっている。

■生き延びた91歳「毎日死人をみた」

 那覇市出身の玉寄哲永さん(91)は、沖縄での戦禍を生き延びた1人だ。 玉寄哲永さん: 「沖縄戦の時は小学5年ですけれど、沖縄戦の実態っていうのは、私の目から見て地獄でした。毎日死人を見ない日はないんです。田んぼのあぜ道には、いっぱい死人です。私はあれを見た瞬間、なんでこうも人間が死に追いやられていいのか。本当に死人の山を見ているんです」

目の前には死者の山…米軍の攻撃から家族4人で逃げ惑ったが、3歳だった弟は、戦争で負った傷がもとで命を落とした。 玉寄さん: 「私は弟が亡くなって10年ぶりにこの前平和の礎に、ちょっと行けそうもなかったのですが行きましたよ。名前をなぞりながらもう声が出ない、『ごめんね』って。たった3歳で人の生き方を終えてしまう、これが許せなかったですね」

90歳を過ぎても、まぶたに焼き付く地獄のような光景と、家族を失った悲しみ。玉寄さんは、その経験を伝え続ける一方で、「歴史」が語り継がれるうえでの課題を訴える。 玉寄さん: 「教科書問題で、『軍命』の2文字が消えたと。沖縄戦では集団自決、これは生き残りの証言としてある。高等学校の女学生が『醜くてもいいから真実を知りたい、また伝えたい』と言っていましたので、私の胸にしっかりとしみ込んでいる、応えていくのが、私らの役割だ」

■「醜くても真実を知りたい」 教科書から消えた“軍の強制”

 2007年9月、宜野湾海浜公園に11万人の県民らが集まった。

玉寄哲永さん(当時73歳): 「県外、本土の方へ向けて、燃え広がっております」 発端は2006年度に実施された文部科学省の教科書検定だった。沖縄戦での集団自決について、それまでの高校日本史の教科書には、「日本軍に集団自決を強いられた」といった記述があった。

しかし、「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」などとして、文科省が各教科書会社に修正などを求める検定意見を付け、『日本軍による集団自決の強制・関与』といった記述が一斉に消される事態となった。 県民集会に参加した高校生代表: 「この記述をなくそうしている人たちは、私たちのおじい、おばあたちが嘘をついていると言いたいのでしょうか」 「たとえ醜くても真実を知りたい、学びたい」

戦争体験者の証言を否定するかのような国の姿勢に、沖縄の空には怒りの声が轟いた。 こうした世論の高まりなどを受けて、文科省は「日本軍の関与」という形での記述は認めたものの、教科書に「強制」という表現は復活しなかった。 沖縄戦の歴史を語り継ぐ人がいなくなるだけでなく、歴史を曲げられてしまうのか…。 玉寄さん: 「これは私もずっと言います。歴史をいじくるような人たち、実態を踏まえた上で、やはり平和への道を切り開いていく、みなさんに伝えるのはそれです」

■沖縄戦正しく伝えていくために…「歴史学ぶ機会」新たな取り組みも

 平和を学ぶ場でも課題が浮上している。 沖縄県内200の小・中学校などに実施したアンケートでは、年間の指導計画で「沖縄の歴史」を学ぶ時間を「4時間以上とっていない」という回答が、合わせて66パーセントに達したのだ。沖縄ですら、“忘れてはいけない歴史”を学ぶ機会が、十分に取られていない現状が浮き彫りになった。

平和教育に詳しい専門家も、警鐘を鳴らす。 名桜大学の嘉納英明教授: 「非体験者が次の非体験者にどのように紡いでいくのか、語りを、経験をどのようにつないでいくかということは、非常に大きな教育的には意義のある、検討すべき課題じゃないかと思っています。沖縄戦をどういうふうな形で教材化していくのか、仲間と一緒に共同的に作っていくということが、僕は非常に問われているのかなと思います」

薄れゆく沖縄の歴史を未来につなげようと、新たなプロジェクトも始まった。 琉球王国の王の墓、玉陵(たまうどぅん)では、小・中学校教師のOBなどで構成する団体が、地元の制作会社と始めた「学習動画」の撮影が行われていた。

沖縄県小中学校歴史教育研究会の山内治さん(64): 「いま作っているところは、“琉球のあけぼの”というところですね。今後も頑張って学校で使えるような教材ということで、最終的には現代までつながっていく形で、いま考えています」 沖縄の歴史を学ぶ機会が減っている中、クラウドファンディングで資金を募り、興味を持ってもらう教材として、動画制作をスタートさせた。琉球王国時代から時間を進め、将来的には沖縄戦を描くことを目指している。

現在撮影している「琉球王国編」は、2026年夏の完成を目指す。関心を持って学ぶ姿勢を持つことが、沖縄戦を知ることにつながることを期待する。 山内さん: 「いわゆる間違った歴史認識というよりも、正しく子供たちが学んでいって、それから自分たちの意見をしっかり持てるように、やっていければいいかなと考えています」 80回目を迎えた「慰霊の日」。伝わらなくなることへの危機感は、沖縄の人の心に課題として宿っている。

20代の女性: 「実体験が聞けなくなるんですよね。実際に経験している人の言葉って大きいと思うので」 30代の女性: 「いま生きている方々の証言をもとに、本当のことを伝えられればなと思います」

80年という時間の経過で色濃くにじむ、「正しく伝える」難しさ。戦争経験者の思いや悲しみを、私たちが受け取ることができるのは、もう、今しかない。 2025年6月27日放送

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