
年々増え続ける子どもの「スマホ依存」 依存脱却へ必要なことは?治療の最前線に密着

特に夏休み中の今、お子さんがずっとスマホに夢中になっていて悩んでいるという方も少なくないのではないでしょうか。子どもが「スマホ依存」に陥らないために何が必要なのか、治療の最前線から、改善策を探ります。

名古屋市西区にあるメンタルクリニックには親子で訪れる人が後を絶ちません。
悩んでいるのは子どもの「スマホ依存」です。
その数は年々増え続け、今では月に100人もの子どもが診察に来ているといいます。
「スマホに生活が依存していて、仕事に行けないだとか仕事に遅刻してしまう、学校にも遅刻して学業にも支障が出ていて、それを止められない、止めようとしてもやめられない、そういったところが(スマホ依存の)目安になるかなと思います」(名駅さこうクリニック 丹羽亮平 医師)
子どもがスマホに依存しているかどうかのチェックリストです。
「やめようね」といってもスマホをやめない、スマホを取り上げると機嫌が悪くなるなど、8項目あるうち、6つ以上当てはまれば、「スマホ依存」になっている可能性があります。
子ども家庭庁によりますと、10歳から17歳の子どもが平日1日に使うインターネットの平均時間は去年、初めて5時間を超え過去最多に。
「知らない人との話は楽しい」

多くは、スマートフォンの利用でした。
特に、学校がない夏休み期間中にはスマホの利用時間が気づけば長くなってしまうと自覚する子どもも少なくありません。
「(夏休みで)めっちゃ増えた。暇なときはスマホを見て暇つぶししているからあんまりよくないかなと思う」(クリニックに通う中学2年生)
「スマホは1日2時間以内」。賛否が巻き起こった愛知県豊明市のこの条例案も、こうした、スマホの利用時間の長さを問題視したものでした。
この日、依存症の治療にあたる名古屋のクリニックに診察のために訪れたのは、中学2年の女の子です。多い日には、1日に11時間もスマホに夢中だといいます。
「何もすることがないから見ちゃう。暇だから見る」(クリニックに通う中学2年生)
その様子を近くで見ている母親は、改善策が見えず悩んでいました。
「時間の制限だけはルールとして決めていて、いろいろ言うけど、あまり変わらない。どうしたらいいのか悩んでいます」(母親)
悩む母親とは対照的に、女の子はSNSで会ったこともない人とやりとりしていました。
「会ったりはしていないからトラブルには巻き込まれたりしないかな。(知らない人との話は)楽しいです。大丈夫かな?みたいなことはあるけど、そういう人だと思ったら(連絡を)切るから」(クリニックに通う中学2年生)
“見えない相手”とやりとりをする娘に対し母親はー。
知らない人と連絡をとるのは?
「まさか他の(知らない)人とつながっているとは思っていなかったので、何かに巻き込まれたらどうしようという不安は大きかった」(母親)
医師の丹羽先生によると、患者の中には「闇バイト」に誘われそうになったり、オンラインカジノに手を染めそうになったりした子どももいたそうです。
クリニックに通う親子は、試行錯誤しながら「依存」からの脱却策を見出そうとしています。
「1度(スマホから)離れる状況を作る。電波が入らないところに旅行に行くとか」(子どもがクリニックに通う母親)
「自分が携帯見てる姿を見せてたら同じようになっちゃうかなと思うので、きのうも子どもと折り紙を折ってみたり、ジェンガをしてみたり、スマホ以外に目がいくような時間を作れたら」(子どもがクリニックに通う母親)
1カ月で13万円…繰り返しスマホゲームに課金

また、丹羽先生が長い年月をかけて向き合うことで症状が改善したケースも。
「衝動的に(ゲームの)この衣装ほしいってなったらそのまま止められずにポンって課金するようになった」(専門学生20歳)
20歳の専門学生の男性は、中学生のころ没頭したスマホゲームで課金を繰り返しました。その額、1カ月で13万円。中学生に払える金額ではありません。
自分のお金で?
「親のクレジットカードで。目を盗んで財布の中からとって入力した」(専門学生20歳)
休みの日には、14時間ほどスマホゲームに没頭し、自分でも依存症だと認識していたという男性。
変われたきっかけは、“相談できる大人の存在”だったようです。
「(丹羽先生が)寄り添って話してくれる、家族のようにこうしたほうがいいと提案してくれて、できなかったら次の提案をしてくれるので、それが一番大きかったです」(専門学生20歳)
子どもが相談しやすい環境を作ることに加えて、ゲーム以外に熱中できることを一緒に探すのも、親や周りの大人ができる“改善策”だと丹羽先生は指摘します。
「スマホ以外で楽しめること、他の楽しみや、やりがいを見つけるのを手助けすること。周りが強引に変えられるものではないんですけど、長い時間かけて自分で変わっていく子はいる。親とコミュニケーションが取れているか。家で孤立しているような状況がないかとか大人でも聞いてあげることだけでも、孤独感が減って依存に陥ることが減る」(丹羽医師)