
“育休退園” 廃止に「第2子、第3子の出産を躊躇してしまう」 保護者の声に応え、育休中も全年齢で保育園の継続利用が可能に 愛知・岩倉市

愛知県岩倉市は、2025年6月から0歳児・1歳児クラスの育休退園を廃止すると発表しました。これにより、保護者が育児休業を取得した場合でも、全年齢の子どもが保育園を継続利用できるようになり、2人以上の子どもを育てる世帯への支援が大きく前進します。
保護者の切実な声を受け…育休退園を廃止した岩倉市

育休退園とは、保護者が第2子や第3子の出産のために育児休業を取得すると、家庭で保育できる環境があるとみなされ、すでに保育園に通っていた上の子どもの退園を迫られるというものです。
子ども・子育て支援法の施行規則では、育児休業中の継続利用は「保育の必要性がある場合」としていますが、対応は自治体ごとに異なります。
岩倉市では、2歳児クラス以上の子どもについては2015年度から継続利用を認めた一方で、0歳児・1歳児クラスについては、「家族で過ごすことが安心感やきょうだい関係の深まりにつながる」という考えのもと、退園を求めてきました。

しかし、乳幼児を複数抱える家庭の負担は大きく、保護者からの「家庭で乳幼児を複数見ることが不安で、第2子、第3子の出産を躊躇してしまう」という切実な声を受けて方針を見直し、全年齢で育休退園を廃止したと、市の担当者は話します。
育児休業中に保育園を継続利用する場合は、保育の要件が「産前産後要件」から「育児休業要件」に変わるため、要件変更の手続きが必要で、原則として短時間保育となり、土曜日の利用はできないということです。
第2子、第3子の出産を考えている保護者にとっては、上の子どもの保育環境が継続されることで、安心して出産・育児に臨めるようになります。
10年間で園児数が36%増加 ニーズ高まり保育環境充実へ

2025年5月1日現在、岩倉市内には公立・私立を含め13の保育園・認定こども園があり、833人の園児が通っています。2015年4月の園児数は613人だったことから、この10年で約36%増加したことになります。
保育ニーズの高まりを受け、同市は今回の育休退園廃止のほかにも、保育園送迎ステーションの開設や、使用済み紙おむつの保育園での処分、お昼寝マットの導入など、保護者の負担を軽減する取り組みを実施してきました。継続的な保育士の増員や、保育士を目指す学生を「保育サポーター」として雇用するなど、保育の質の向上にも注力。
育児休業を取得していない家庭などでも利用できる支援として、育児の負担解消を目的とした一時保育「リフレッシュ保育」、子育ての援助を受けたい人と援助したい人をマッチングする「ファミリー・サポート・センター」、研修を受けた地域の子育て経験者が訪問し、相談に乗ったり育児や家事の手助けをする「ホームスタート」なども実施しています。
さらに、老朽化した2つの保育園と子ども発達支援施設を統合した新しい保育園の建設も、2027年4月の開園を目指して進められているということです。
安心して第2子、第3子の出産・育児に臨める環境づくりは、少子化対策として重要な意味を持ちます。子育て世代の切実な声に応える形で実現した岩倉市の育休退園廃止。自治体ごとに柔軟な対応が求められるなか、こうした動きが広がっていくことが期待されます。