火事があっても伝統の「灯り」を守る 江戸時代から続く老舗和ろうそく店 地元仲間の助けを借りて復活

愛知県岡崎市にある「磯部ろうそく店」は、江戸時代から300年以上続く老舗ろうそく店。一度は火事によって伝統の「灯り」が消えかけましたが、地元の仲間たちの支えから、再起を果たしました。その美しい和ろうそくの火は、いまなお職人の手によって守り続けられています。
手作業でロウを塗り重ねる

磯部ろうそく店の「和ろうそく」は、職人の手によって1本ずつ作られています。芯をロウにひたして、塗り重ねる作業を何回も行うことで、少しずつろうそくの形に。大きいサイズの和ろうそくになると、作業から完成まで約1週間かかるそうです。

磯部ろうそく店 磯部亮次さん:
「乾いては塗って、乾いては塗って。和ろうそくは上から見ると木の年輪みたいになっています」

和ろうそくの特徴はゆらゆらと揺れる炎です。どうして揺れるのか、磯部さんに聞いてみると「なんでですかねぇ。空気の流れがあったり、芯のロウの吸い上げ方があったりするのかな」と笑います。
火事で全焼 地元の仲間たちの支えから復興

300年守り続けてきた伝統の和ろうそくですが、いまから14年前、その灯りが消えました。漏電により磯部ろうそく店は火事で全焼。自宅と、大切な仕事場、仕事道具。磯部さんはすべてを失いました。
磯部ろうそく店 磯部さん:
「もう跡形もなく、終わったと思いましたよ。何もかも、すべて終わった。代々うちで大切にしてきた道具からなにから全部燃えてなくなったので、ろうそく店は無理だなって」
しかし、磯部ろうそく店全焼のニュースを見た地元の仲間たちが磯部さんのもとに駆けつけ、再興計画を考えてくれたといいます。

磯部ろうそく店 磯部さん:
「朝になってから、ヤフーのヘッドラインで300年続いた和ろうそく店が焼けたっていうのが出て。仲間たちがそれを見てすぐかけつけてくれて。仲間はろうそく店よりも、地元のいろいろな業種の仲間がみえたので。僕が考えるよりも先に磯部ろうそく店の再興計画みたいな、『どうやってここを再興するんだ』って話をその人たちがしてくれました」
地元の商工会などにも顔を出して、仲間も多かった磯部さん。たくさんの人たちが応援してくれました。

名古屋で廃業した「和ろうそく店」から道具を譲り受け、さらに仲間の支援を受けて、磯部ろうそく店は、火事から1年後の2012年に復活しました。

徳川家とも縁が深い大樹寺の野村顕弘さんも、磯部ろうそく店の復活を心待ちにしていた1人です。
大樹寺 野村顕弘さん:
「ずっと工房で一生懸命昔からつくっている姿を見ていたので、一から立て直されたのはすばらしいことですし、頭が下がる思いです」

磯部ろうそく店 磯部さん:
「皆さんのおかげで再興できたわけで、ろうそくの灯りも見てもらいたいですし、ここに人が集まって語ってもらう。そして地元の小中学校の子どもたちが社会見学でよく来られますので、地元の子たちにも見てもらいます。仕事について知っていただける場所として、ここを使っています」
応援してくれた仲間への恩返しのために、これからも磯部さんは、ろうそくをつくり続けます。