
「最終的に原因不明。とんでもない結論」農業用水管を管理する団体の元職員が会見 愛知・蒲郡土砂崩れ

2024年8月に愛知県蒲郡市で発生した土砂崩れの調査結果を巡り、新たな動きです。現場付近の農業用水管を管理する団体の元職員が10月21日会見を開き、「第三者による再調査の必要性」を強く求めました。
土地改良区の元職員 中根徳男さん:
「最終的に原因不明になっています。とんでもない結論だ」
10月21日午後2時、蒲郡市で会見を開いたのは、土地改良区の元職員の中根徳男さんです。
2024年8月27日、愛知県蒲郡市で発生した土砂崩れでは家族5人が巻き込まれ3人が死亡、2人が重軽傷を負いました。土砂崩れが発生した現場付近は農業用水管が通っています。漏水の有無は分かりませんでしたが、二次災害を防ぐため発生から約4時間後に、農業用水管を管理している土地改良区が通水を止めました。中根さんはその「土地改良区」の元職員で1979年から2021年まで勤めていました。会見があることを知り遺族の北上泰代さんも聞きに訪れました。
報告書「客観的なデータや目撃証言を得ることができなかった」

土砂崩れ発生後、現場では愛知県砂防課や農業用水管を所有する「水資源機構」を中心としたチームが調査を行い、報告書をまとめました。そこには表流水、つまり地上に存在した大量の水が、土石流を起こした要因だと推測されると書かれている一方で
「表流水の発生元を特定する客観的なデータや目撃証言を得ることができなかった」と書かれていました。つまり、大量の水の出所は、分からないと記してあったのです。中根さんは調査の方法や結果に疑問を抱いていました。
土地改良区の元職員 中根徳男さん:
「2024年の9月6日に通水テストを行った。その結果、本管からも漏水なし。土砂崩れに影響していないと報道されたが、これを聞いた時にそんなことを簡単に決めつけてもらったらおかしい。土砂災害の時に漏れていなかったとは断定できない」
発生から1週間後に現地調査の一環として行われた通水テスト「漏水なし」
発生から1週間後に現地調査の一環として行われた通水テストでは、土砂崩れ現場付近の約1.7キロメートルの区間を水で満たしました。その結果、農業用水管の設備からの「漏水はなかった」とされています。
ただ中根さんは、農業用水管の設備は、バルブ部分にサビがはがれ落ちた破片や、落ち葉などのゴミが加わるなどわずかな変化で漏水は起こりうると言います。そのため、その日1日の通水テストだけでは、土砂崩れが起きた際に“漏水がなかった”という証明にはならないと訴えます。
土砂崩れ発生から1週間後に撮影された起点となった付近の写真を見ると、赤い線の内側部分に落ち葉がないことから、中根さんは設備からの漏水が落ち葉を流したのではないかと指摘。調査報告書の”大量の水”はこの設備からの漏水の可能性があると推測します。
元職員「再調査をしてほしい」→水資源機構「再調査は考えず」
こうした疑問解消のため、中根さんは調査の中心だった愛知県砂防課と水資源機構に追加調査を依頼しましたが、断られました。原因究明には、「第三者による現地での再調査」が必要だと強く求めています。現場の農業用水管の設備のバルブ部分に落ち葉などを挟み、強制的に漏水させるテストを行い、「水の流れ方」と「水量」を確認し土砂崩れとの因果関係をはっきりさせるべきだと訴えています。
土地改良区の元職員 中根徳男さん:
「豊川用水の施設の所有者は水資源機構。まさに利害関係者。改めて検証を行って結論を出してもらいたい」
これを受け、水資源機構は「やるべき調査をした結果、”設備に問題はない”と報告書を出している。現段階では再調査は考えていない」と回答しました。一方、愛知県砂防課からは期日までに回答が得られませんでした。会見を聞いた遺族の北上泰代さんは次のように話しました。
遺族の北上泰代さん:
「こうやって立ち上がってくださって、とてもありがたい。第三者検証委員会を立ち上げて、中根さんが提案されている方法で再調査してほしい」