製造工程で廃棄される八丁味噌が「紙」に大変身 名刺として加工し愛知・岡崎の盛り上げにも一役

愛知県岡崎市の名産「八丁味噌」。製造の際に捨てられる多くの味噌がある商品に変わりました。従来は家畜の餌になっていましたが、生まれ変わったのはビジネスに欠かせないもの。開発の経緯や製造過程を取材しました。
捨てられるみその有効活用

愛知県岡崎市にある創業688年の老舗「まるや八丁味噌」。大豆と塩と水のみを原料に、木桶の中で2年間熟成させて八丁味噌を作っています。

しかし、この製造過程で、食用には向かず捨てられてしまうみそがあります。3トンもの石を積み上げた蓋の周りにつく、固くなったみそです。ホコリなどが付着し固くなってしまうため、これまでは家畜の飼料として使っていました。その量は月に1トンにもなります。
まるや八丁味噌の加藤敦取締役は、「かなりの量が出てしまうので、何か有効的に使えないか」と悩んでいました。
捨てられる特産品を“紙”に

そんな中、老舗の悩みを解決したのが、同じく岡崎市にある岡田印刷でした。以前から、地域の名物や特産品の廃棄物を紙にアップサイクルするアイデアを温めていた岡田さん。過去に岡崎の特産品である「石」の廃棄物で紙を作ろうとしたことがありましたが、石の粉が落ちてしまい、製品化には至りませんでした。

悪戦苦闘していたとき、加藤さんから「蓋(ふた)味噌」の存在を聞き、興味を持った岡田さんが自ら「紙にさせてほしい」とオファーしました。
まるや八丁味噌 加藤さん:
「岡崎市の八丁味噌を使って紙にして、それをいろいろなものに使えたら岡崎も盛り上がるのではないか、と思ったんです」
みその割合が濃いと紙が破れてしまう

こうして始まったみそ入りの紙作り。固くなったみそを製紙工場へ運び、水と混ぜ合わせた後、大量の再生紙を投入します。これを混ぜ合わせてシート状に伸ばし、乾燥させるとみそ入りの紙が完成します。

紙を作る上でこだわったのは、「配合率」です。みその割合が濃すぎると紙が破れてしまうため、味噌汁の割合(8%)よりも濃く、かつ破れないギリギリのラインを見極め、15%という配合率にたどり着きました。

「面白い名刺ができた」と、完成したみそ入りの名刺を手にした当時を振り返る加藤さん。
「普通の名刺を渡すよりも、この名刺を渡したときのお客さんの反応からいろいろな会話が始まるな、と思いました」

岡田印刷 岡田翔さん:
「1人でも多くの人に知っていただいて、そして使っていただくのが第一の目標です」
捨てられるはずだったみそが、老舗と町工場のアイデアと技術によって新たな価値を持つ商品に生まれ変わりました。