【アナウンサーが中日新聞コラムを朗読】11月4日(金)アナよみ春秋
中日新聞の看板コラム「中日春秋」を東海テレビ&CBCテレビのアナウンサーが朗読します! 「中日春秋(ちゅうにち・しゅんじゅう)」は、中日新聞の朝刊1面に毎日載っているほぼ555文字の文章。 書いた人の意見や考えが含まれた「コラム」と呼ばれる読み物です。 ▼農民から武器を没収する豊臣秀吉の刀狩りでは「集めた刀や脇指(わきざし)は、京都・東山での大仏建立で釘(くぎ)や鎹(かすがい)に使う」と説明された。刀を差し出せば仏に救われると、信心深い民に訴えた ▼農民は農耕に専念させ、武士らとの差異を明確にする狙いがあった。日本の農村には中世以来、害獣駆除や治安維持などのため武器が豊富にあり、それを担う成人男子にとって刀は名誉の表象。回収には相応の理由を要した。農村の武器を全て奪うのも現実的でなく、害獣駆逐用の鑓(やり)の所持を容認するなど運用は柔軟だったという。歴史学者の藤木久志氏の著書『刀狩り』(岩波新書)に教わった ▼どう説得すれば、隣人は危ない武器を手放してくれるのだろう。北朝鮮が昨日、ミサイルを複数、日本海方向に発射した。建物内などへの避難が呼び掛けられた県もあり、朝から肝を冷やした。一昨日も二十発余が発射され、気が休まらない ▼若き独裁者はミサイルとともに核の開発も進め、近く核実験をするとの観測も。これらの武器を差し出せば、制裁下にいる配下の民も救われるはずだが、それを考えている様子はない ▼秀吉は、刀狩りをしても武器が村に残ることを前提に喧嘩(けんか)停止も命じた。用水をめぐり複数の村が武装して争い、死傷者が出た際は代表者が成敗された ▼天下人同様、武器はあっても使えないと思わせる知恵も絞らねばなるまい。
2022.12.05(月)放送