辻発彦×平田良介 監督のオファーを受けた辻に落合GMが放った一言とは?
中日ドラゴンズで二軍監督と一軍コーチを歴任し、埼玉西武ライオンズで一軍監督を務めた辻発彦と、辻二軍監督の下で大活躍した平田良介が、プロ野球における監督・コーチの役割について熱くトーク。さらに、辻に一軍監督のオファーが来た際の元ドラゴンズGM・落合博満との貴重な秘話も。ここでしか明かされない貴重なエピソードが続々登場する!
選手との距離感のお手本は広岡達朗!
平田が“監督・コーチと選手との距離感”について聞くと、辻は、自身が25歳で西武ライオンズに入団した時の広岡達朗監督の姿が原点になっていると明かす。
広岡は、実際に選手たちの前で打球を拾って投げるなどし、よくお手本を見せてくれたそう。口頭で説明されるよりも説得力があるため、「この人はすごいなと思える。そうなると、その人の教えを素直に聞ける」と、辻。
そこで、自分が指導者になった際は、広岡のやり方を見習ったそう。「自分も朝、選手たちと一緒に球場に行って走ったり、体を動かしたりするようにしていた。フットワークやハンドリングを、実際に見せて教えられたらいいなと思った」(辻)。
平田も、ドラゴンズ二軍監督時代の辻が、堂上直倫や谷哲也の前で守備をやって見せている現場を目の当たりにし、その技術の高さに感動したそう。「あれは本当にカッコいいです!」と、平田。
「うまい選手は他のチームにもいっぱいいるから、選手たちには『ベンチに座ってよく見ておけ』と言っていた。見ることが一番。そこから入れば絶対にうまくなる」。広岡の薫陶を受けた辻の言葉には、重みが感じられた。
チームに必要なのはムードメーカー
「当時のドラゴンズの選手はよく練習したし、積極的で面白かった」と、辻。ドラゴンズ二軍監督時代、特に印象に残っているのが新井良太だという。「俺は新井に助けられた。明るいし前向きで、ダメでも一生懸命声を出してやる。ああいう選手がチームに1人いてくれたことで、本当に雰囲気が良かった」と、ムードメーカーとしての新井を高く評価した。
平田は、現在のドラゴンズのムードメーカーとして、ブライト健太の名を挙げる。「すごくテンションが高くて、練習もガンガンやって、試合中もずっとベンチで声を出している。何より声がよく通る」と解説すると、辻も「いいね! 野球は声を出さないヤツはダメ。声はお互いの連携に絶対に必要なことだから」とうれしそう。
ただし、自分が指導者だった時は選手の性格によって対応を変えていたそうで、「浅村(栄斗)はおとなしかった。あの性格を知っていたから、あえて選手会長をやらせた。浅村には声を出すことを望まず『背中で示せ』と言った」と、西武の一軍監督時代のエピソードも。選手との距離感に、細心の注意を払っていたことが伺える。
辻に西武一軍監督のオファーが…その時、落合GMは!?
ドラゴンズのコーチを経て、2017年に西武の一軍監督に就任した辻は、「2016年のシーズン終盤、広島のホテルにいた時に西武の本部長から電話がかかってきて、『監督で来てほしい』と言われた」と明かす。まさか古巣の西武に戻れるとは思っていなかったため、とても驚いたそうだ。
当時、ドラゴンズの一軍コーチを務めていた辻は、森繁和一軍監督に電話した後、落合博満GMに連絡。「コーチではなく、監督として声をかけられた」と伝えると、落合は「コーチだったら行かせないけど、監督だったら行け」と背中を押してくれたという。
平田が「もしも“ダメ”と言われたらどうしていましたか?」と聞くと、「もちろん行かないよ」と即答。
「俺は最初に誘いがあったところに従う。落合さんからクビと言われたらクビだし、やれと言われたらやる。落合さんが間髪入れず、『監督はなかなかできない。俺も応援するし、頑張れ』と言ってくれて驚いた」。義理人情を大切にする辻らしい答え…落合に対する感謝の気持ちをにじませた。
一軍監督と二軍監督の違いは?時代によって変わる選手との向き合い方
一軍と二軍の監督を経験している辻によると、「両者のやることはまったく違う」という。
「一軍は、そのメンバーでとにかく勝つことを考えてやる。二軍は、一軍で戦うために選手の調子を上げさせないといけないから、一軍が欲しがっている選手を優先的に使う。さらに、勝ちを優先したバッティングと守備、戦い方をしなくてはいけない。勝つためにやらないと成長しない」と力説する。
平田は、時代によって“勝つための意識”が変わってきたかどうか、辻の指導者としての考え方を聞く。「昔は、自分がアウトになってもランナーを進めるという自己犠牲の感覚や、1球でも相手のピッチャーに多く投げさせて粘るという野球だったけど、だんだん変わってきた。落合監督時代は、『3球でアウトになってもいい。それだけの信念があるのなら』というふうに変わっていった」(辻)。
時代によって変化する野球のセオリーに合わせ、指導者側の意識が変わってきたようだ。
最後に辻は、指導者としての持論をこう話す。
「試合は選手が作っている。最近“選手ファースト”とよく言うけど、俺が言っているのは意味が違う。“プレーは選手ファーストだ“と思っている。選手に考えさせて行動させて、失敗したら反省させないといけないし、諭さないといけない。選手は失敗するもので、野球は失敗するスポーツだと言われている。その失敗に対して、つべこべ言うことはしない。一人一人の選手が、その時どういう気持ちで打席に立ったのか、どういう気持ちで走塁したのか、まず選手に確認する。それが間違っていなければ、技術が足りないせいだから練習すればいい。ただ、考え方が違っていたら勉強させないといけない」。
「当時はまだ、厳しく指導する時代だったと思うが、辻さんは良い意味で“選手ファースト”。選手の話をよく聞いてから指導するというのを実践していた最先端の人だと思います」と、平田。
選手の意志を尊重しつつ、自身も体を動かして説得力を持たせる…。時代に合わせた辻流の指導法が明らかになった貴重な対談だった。
チャンネル名: TVA スポーツ CH
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配信内容:中日ドラゴンズを中心に、愛知県のプロ&アマチュアスポーツ情報を配信。バンテリンドームナゴヤでの試合をテレビ愛知が中継する日は、ドラゴンズの試合前練習をライブ配信予定。
配信日時:不定期