潜水艦の模型を作る! 本物の設計図をもとに作る完全オリジナルの模型がスゴすぎた!
既製品の模型に頼らず、実際の設計図をもとにイチから軍艦を作るモデラー・野村さんが、1/200で潜水艦模型製作に挑戦。題材は、長崎県の五島列島沖に沈められた旧日本海軍の潜水艦・伊58。潜水艦という特性上、資料があまり残っていないなかで、どのように立体化していくのか。その試行錯誤の内容をお届けします。
●当時の設計図を元に制作
平面図と側面図のみを使って潜水艦模型を製作
隠密行動が基本の潜水艦は、ほかの軍艦と比べて写真や設計図があまり残っていません。模型作りには、船体を真上からみた平面図、真横からみた側面図、船首から船尾に向かって一定間隔で輪切りにした正面図が必要ですが、伊58は平面図と側面図しかみつけることができませんでした。
それ以外では写真資料を参考にするも、手がかりはたったの4枚
正面図は同型艦の伊15のものでカバー
伊58より数年前に建造された同型艦である伊15の正面図
製作する伊58より数年前に建造された同型艦である伊15の正面図が現存していたため、そちらを参考に全体のフォルムを整えていきます。
船体の製作
肋骨を組み込んで骨組みを製作
図面を参考に作られた船体。塩ビパイプの軸に、正面図をもとに製作した肋骨を組み込んで骨組みを作ります。
外周を細いプラスチックで覆っていく
プラ板同士の隙間や凹凸をパテで埋めて、ツライチに整えれば大まかな形は完成
●潜水艦ならではの甲板の製作
すのこのようになっている潜水艦の甲板
潜水艦の甲板は軍艦とは異なり、すのこのような状態になっているため、隙間になっている部分も再現していきます。
甲板表現に使う1ミリの角材の2面を黒く塗っておく
実物ではそれなりの隙間があっても1/200に縮尺すると、約0.2ミリ幅。そのまま再現しても隙間が全く目立ちません。そこで、甲板表現に使う1ミリの角材の2面を黒く塗っておきます。
土台に接着
0.2ミリ厚の透明プラ板を用意し、角材の黒く塗った面で挟みながら土台に接着。その後透明プラ板を外せば、0.2ミリに隙間が完成。
甲板の隙間表現がはっきりと分かる仕上がりに
そのままだと単なる木目調の甲板になるところ、隙間表現がはっきりと分かる仕上がりとなりました。
●300ある潜水艦の排水口を再現
潜水と浮上を行なう潜水艦にとって排水口は重要の設備。ここをしっかり表現することで完成度に大きく影響してきます。
船体の側面にある無数の穴が排水口。両側面合わせておよそ300個ある
パソコンで排水口のアウトラインを作り、プリンターを使って薄いプラ板にプリント。一つずつナイフでアウトラインになぞって切り抜く
そのままだと切り抜いた跡が角張っているので、ドリルを使って実物の楕円状に整える
出来上がった排水口
出来上がったのがこちら。形を整えるだけでおよそ3時間と途方もない数です。
甲板の一部に解釈が分かれる部分がありましたが、今回は平面図を参考に仕上げています。
●完成品はこちら!
フルクルラッチモデルとは思えないビジュアル
こうして、70年以上海底に沈んでしまっている伊58の勇姿を1/200で蘇らせることに成功。ゼロから作り上げた、いわゆるフルクルラッチモデルとは思えないほどのディテール感と、有機的なフォルムを表現しています。
軍艦旗はあえてつけないこだわり
その他の重要なポイントとして、戦争を連想させる軍艦旗は、あえてあしらわれていません。兵器としてではなく、その時代を飾った建造物としての歴史と魅力を感じてほしいという思いが伝わってきます。