再生回数20万回突破!夢はレールを駆け巡る。1ミリ単位でこだわってきた鉄道模型人生の集大成に密着!
車やプラモデル、カメラなど、趣味の世界を楽しむ大人たちに密着してその魅力を調査する『極上ライフ おとなの秘密基地』。2016年~2018年までテレビ愛知で放送され、現在はLocipoでアーカイブを見ることができる。60年間作り続けた鉄道模型の集大成として、63両目の蒸気機関車を作る鈴木英一さん。車両だけでなくレールまでも1ミリ単位でこだわるほどの愛情を注ぐ、鉄道模型の魅力に迫る。
鈴木さんが作る蒸気機関車模型のスケールは、80分の1。本物の蒸気機関車に近づけるため、車輪の部分には特にこだわってきた。日本の80分の1スケールの鉄道模型は、「車体とレールが同じスケールじゃないという一番大きな問題がある」と鈴木さんは語る。
もともとヨーロッパで始まった鉄道模型のレール幅は、イギリスのレールを基準に作られている。しかし日本の蒸気機関車のレール幅は、イギリスより狭いのだ。80分の1スケールの模型はイギリスの基準に合わせているため、レール幅だけ大きく作られているものが多い。
鉄道模型を始めた頃から、リアルな再現を追求してきた鈴木さん。レール幅も日本の蒸気機関車の縮尺に合わせ、13ミリというサイズにこだわってきた。そこで、今回も16.5ミリの幅を13ミリに改良することに。
まず、車輪をバラすところから始める。車軸を取り出しドリルで3.5ミリ切り落として、長さをぴったり13ミリにして組み立て直すのだ。
レールももちろん13ミリ。その作り方にもこだわりがあり、昔ながらのレールづくりを再現している。枕木は一本一本切り出したお手製を使用するのだ。「枕木を敷いて、実物と同じように数がすごいたくさん必要」と鈴木さんは話す。
このジオラマには、およそ1万4000本の枕木を使ったとか。等間隔に並べた枕木の上にレールを敷き、固定させる。この時用いるのが、昔の線路作りに使われていた犬釘。地方のローカル線に行くとまだ犬釘が残っているらしい。この犬釘を一本一本埋めていくという、気が遠くなるような作業。レール作りも蒸気機関車が走っていた頃の方法を再現する、それが鈴木さんのこだわりなのだ。
ある日曜日、鈴木さんと同じ13ミリのレール幅にこだわる鉄道模型愛好家たちの集会が行われた。自慢の作品を持ち寄っての情報交換。皆さんと一緒に鈴木さんも持って来たD51形蒸気機関車を走らせる。
楽しんでいた鈴木さんだったが、D51形が止まってしまい原因を探る。「格好をつけてギリギリにするから」と鈴木さんが言う。止まった原因は、車輪とブレーキの間が狭すぎたことにあった。本物の再現にこだわるあまり、隙間を0.1ミリまで追い込んで作っていたのだ。「鈴木さんみたいに作り込まない。一生懸命作ろうとしちゃうんで、どうしてもそういうのが出てくる。いかに手を抜くかっていうことがもう人生長いんだからわかんなきゃダメだよ」と鉄道模型仲間に言われるものの、どこか嬉しそうな鈴木さんであった。
蒸気機関車模型に魅せられて60年。未だ作っていなかったC60形に挑む、鈴木さん。作り始めておよそ1か月が経ち、いよいよ完成の時が近づいてきた。「最後の工程として、このブレーキ装置を取り付けると完成。実物と同じような再現できたなと思っている」と満足そうに語る。
鈴木さんの鉄道模型人生の集大成、C60形蒸気機関車。本物の機関車と同じC59形を改良して作ったのだ。
わずか1ミリ幅の違いにこだわった、運転室の中の様子も忠実に再現されている。そしてこだわりのレール幅も16.5ミリから13ミリに改造し、日本の蒸気機関車らしいリアルな姿に生まれ変わった。蒸気機関車の命とも言える動輪は、今にも動き出しそうな精密さと重厚感にあふれている。
鈴木さんは、試運転のために線路へ向かった。蒸気機関車がちゃんと走ってくれることを祈る。「いやぁおもしろい。やっぱり作ることに生きがいがある。死ぬまで作ってるんじゃないかな」としみじみ語る。堂々たる走りを見せる、鈴木さんの蒸気機関車。夢はレールを駆け巡る。
『極上ライフ おとなの秘密基地』
【放送局】テレビ愛知 2016〜2018年放送(現在はLocipoでアーカイブを視聴可能)
【番組HP】https://tv-aichi.co.jp/himitsukichi/
【You Tube】https://youtu.be/I9a_DfKS13U