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サリン攻撃にクラスター爆弾 非人道的な兵器が使われたシリアの今 アサド政権崩壊後の復興の課題

テレビ愛知
05.22(木)15:57

アサド政権の崩壊から半年。いま、シリアはどうなっているのでしょうか。シリアで内戦に至った経緯とともに、現地を取材したジャーナリストの西谷文和さんに話を聞きました。

2024年12月にHTS(反体制派)がアサド政権を倒す

シリアは地中海の東側に面していて、面積は日本の半分程度です。周辺国はトルコ、イラク、ヨルダン、レバノン、イスラエルです。内戦のきっかけとなったのは2010年に始まった「アラブの春」。中東や北アフリカ地域で起きた民主化運動の波は、シリアのアサド政権にも及びました。

アサド政権は抗議デモを武力で弾圧。その結果、反体制派が各地で武装蜂起して内戦となりました。そして2024年12月、その反体制派の1つ「HTS」がアサド政権を倒しました。

ジャーナリストが緊急取材

アレッポ城

西谷さんが向かったのは、シリア北部の都市、アレッポです。見えてきたのは、世界遺産のアレッポ城。「アレッポ城」は12世紀に十字軍の侵攻を防ぐため要塞として改築され、“難攻不落の城”として有名になりました。

このアレッポ城を最近まで支配していたのが「アサド軍」。アサド軍は、町全体を見渡せる場所から反政府勢力を攻撃していました。

「初めて遺書を書いたのがこの町」

ジャーナリスト 西谷文和さん

西谷文和さん:
「戦争中、ここがアサド軍の拠点になっていました。ここからロケット弾を撃っていました。

たくさんの建物を壊された。実は12年前、私はあの町で下の方から撮っていました。大変怖かったです。運が悪ければ死んでしまうなと思いました。実は12年前、初めて遺書を書いたところがこの町です」

デモに参加したことを理由に攻撃

カブーンで現地取材をする西谷さん

続いて西谷さんが訪れたのは、ダマスカス市のカブーンという地区です。ここで、アサド軍の容赦ない攻撃の実態を知ることになります。

西谷さん:
「ダマスカスの北東、カブーンという街にいます。2015年、16年ごろにアサド軍がこの町を空爆、そして、銃撃で襲い、人々を全部追い出しまして、そして全てのものを奪っていったということです。

なぜこの町が狙われたのかというと、この町の人々がアサド反対のデモに参加したから。それだけの理由で、この町全体を潰しているわけです」

瓦礫が一面に

アサド軍に襲われた町は、瓦礫の町になっていました。

シリアの現地ガイド:
「アサド軍は空爆し、銃撃し、人々を追い出して、家財道具を全て盗みました。鉄も電線もタイルも全てです。その後また空爆して、この状態にしました。これは組織的な戦争犯罪です」

町の住民

この町の住民に話を聞くことができました。

町の住民:
「2011年から爆撃が始まって、ずっと戦火の中で住み続けてきましたが、2016年に逃げて避難民となりました。親戚が1人殺されましたが、あとは無事でした」

アイン・タルマでは化学兵器・サリンの攻撃も

サリン攻撃を受けた人

アイン・タルマという町では、アサド軍が化学兵器サリンを使った攻撃をし、大勢の人が犠牲になりました。西谷さんは、当時の数少ない生存者に話を聞くことができました。

「何度も気を失い、目も見えず。意識を取り戻しては、また気を失いました」

アサド軍はサリン攻撃の前に、クラスター爆弾を仕掛けてきたといいます。

クラスター爆弾の親爆弾

西谷さん:
「アサド軍が使ったクラスター爆弾の親爆弾ですね。化学兵器の攻撃の前にたくさんのクラスター爆弾を撃った、この親爆弾から出た500から600発の小さい爆弾がビルに飛び込んで、たくさんの人が殺されたということで、その後、化学兵器を使ったんです」

82人の親族を失った

取材をしていると、1人の男性が小型爆弾を見つけました。その男性も、大勢の親族を失いました。

サリン攻撃を受けた人:
「(犠牲になった親戚は)82人です。2カ月は目が見えず、1カ月は震えが止まらなかったです。少しずつ回復することができました」

現地を取材した、ジャーナリストの西谷文和さんに話を聞きました。

シリアは徹底的に攻撃されていた

「今のところ平和が保たれている」と西谷さん

――現地で悲惨な状況を目の当たりにして、率直にどう感じましたか。

「私はもう20年以上イラクとかアフガニスタンとか色んな国に行っていまして、瓦礫の町はたしかに多々ありますが、これほど広大に、徹底的にやっているのはシリアですね。やはり一番ひどいですね」

――全体がこのような壊滅的な状況になっているのでしょうか。

「アサドに反対した地域ですね。シリアのアサド政権はイスラム教のアラウィー派という少数派の政権で、国民の多数はスンニ派で大体70%くらいいました。アサドに反対する人が多い地域がやられたわけです」

――いまは武器を用いたような争いは国の中では起きていないのでしょうか。

「そうです。暫定大統領になったシャラアさんが『絶対に報復するな』と命令を出しています。スンニ派の人たちはたくさん殺されているのですけれども、アサド支持派を攻撃していません。

そういう意味では、いまのところ平和が保たれていて、おそらくこのまま平和で復興していくのだろうと思います」

シリア全体の人たちが納得するような暫定政権に

――HTSの「暫定政権の報復をするな」という発言の意図はどんなところにありますか。

「アサド支持派はまだ武器を隠し持っているから、もし報復するとまた内戦になるわけですね。国民は内戦はこりごりですから、もちろん恨みを持っている人は多くいますが、仕返しをしても何もなりません。それよりは、多文化共生・宗派間を和解して何とか平和になろうということでまとまっています」

――どのように多文化共生や平和をつくっているのでしょうか。

「このシャラア大統領は相当よくできた人で、周囲をスンニ派で固めなかったのです。つまり、アラウィー派、アサド支持派の人を大臣にしたり、女性も労働大臣にしたりしています。キリスト教徒も大臣にして、とりあえずいまの政権をシリア全体の人たちが納得するような形で暫定政権を作りましたので、そういう意味ではアラウィー派も大分、安心していると思います」

21世紀型の平和と和解を目指す

――そうした新たな国作り、体制作りを実感できるような場所は現地であったのでしょうか。

「僕がシリアへ取材に行ったときは、トランプ大統領がまだ経済制裁をかけていて銀行が開かれていなかったのです。そのため、お医者さんとか先生の給料が払われなく、ATMの前に長蛇の列ができていたんです。ところが経済制裁が解けたことで、これからインフラ復興なので、おそらく欧米諸国の建設会社が入ればシリア人は真面目に働きますから、ヨーロッパもアメリカもシリアもWin-Winになれると思います」

――他国からの支援も当然求められていくという中で、「HTS」という組織は国際的にはテロ組織としても見られていた組織ですよね。そういった人たちが主導する国作りというのは、信用して良いのでしょうか。

「“アルカイダ”と言うと、ビン・ラディンのイメージがあります。しかしシャラアさんはものすごく穏健になりました。アサド政権を支えていたのがロシアとイランだったわけです。それに反対していますから、暫定政権の拠り所は欧米なのです。そのため、欧米と調和を持って進む必要があるし、20世紀型の独裁政治ではダメというのも分かっている。21世紀型の平和と和解、シリアをもう一度つくり直そうと思っているはずです」

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