
3年でびん3つ分⁉ ゴミを出さないレストラン 驚きの削減術 愛知・あま市

深刻さを増す地球温暖化。
地球の未来を守るために、この地方で様々な取り組みが実践されています。
愛知県あま市のレストランは、「ゴミを出さない」を掲げて日々の営業を行っていて、3年間で排出したゴミは、わずかガラスびん3つ分。
そのワケを探ると、地球に優しいアイデアが満載でした。
「ゴミを出さないレストラン」の細やかな工夫

「めっちゃおいしかった」
「野菜ってこんなにおいしく食べれるんや~みたいな」
女性客の顔から笑みがこぼれます。

ここは、旬の新鮮な野菜を生かした、こだわりのコース料理が魅力のレストラン。
人気の理由は、おいしい料理だけではありません。
来店していた客:
「キャッチフレーズというか、“ゴミを出さないお店”というのが気になって…」

“ゴミを出さない”飲食店という高い壁に挑んでいるのは、武田さん夫婦。
愛知県あま市にあるレストラン「nico.chan(ニコチャン)」を経営しています。
オーナーの武田菜奈果さんは、レストランについてこのように話します。
武田菜奈果さん:
「どこまでできるかという挑戦でもあるんですけど。こういうこともできるんだ、とお客様にお伝えしていきたいなと思っていて」
レストランの取り組みには、地球の未来を守るためのたくさんのアイデア“いまある資源を大切に使う”が表現されていました。

佐野祐子アナウンサー:
「お店の看板に『ゴミを出さないレストラン』って書いてありましたよね。でも、普通はレストランってゴミがたくさん出ますよね」
武田菜奈果さん:
「そうですね。ただ、うちではできる限り、仕込みとか調理の際に出るゴミは極限まで減らすように試みています」

武田菜奈果さん:
「これは、当店での仕入れに関わるゴミをオープン当初から入れています。まもなく3年になります」
佐野祐子アナウンサー:
「3年間でたったこれだけのゴミですか」
3年間で出たゴミは、ガラスびん3つのみ。
いったい、どうしてこれほどゴミが少ないんでしょうか。

武田菜奈果さん:
「例えばコーヒー豆だったりとか、お塩とかも、量り売りで買ったりとかしていて。保存容器に直接入れてくださるので、(仕入れでは)ほとんどゴミは出ないです」
食材や調味料は容器を持参して、ゴミになってしまう包装を削減しています。

武田菜奈果さん:
「うちでは、ラップはもう使わないです。買ってないです、ここ数年」
キッチンに必需品のラップですが、洗って何度でも使える代用品を活用しています。

調理するときにどうしても出てしまう生ゴミは、捨てるのではなく、敷地内のコンポストで堆肥化しています。

ゴミを出さない工夫は、お客さんから見えるところにも。
武田菜奈果さん:
「テーブルには布製のナプキンを置かせていただき、汚れた際には『自由にお使いください』とお伝えしています」
レストラン内のお客さんの座るテーブルには使い捨てのおしぼりではなく布ナプキン、トイレ外の手洗い場にはペーパータオルではなく手ぬぐいを置いて、ここでもゴミを出しません。

冷たいドリンクを飲むときのストローは、洗うことができて口当たりも良いガラス製のものなどを使っています。

佐野祐子アナウンサー:
「あっ、ちょっと待って。意地悪かもしれないですけど、洗剤は(ゴミ)出ますよね?」
武田菜奈果さん:
「これは食器用の洗剤なんですけど、量り売りで洗剤を買えるので、そういうものを使ったりしています」
佐野祐子アナウンサー:
「プラスチックあった!と思ったんですけど。これも量り売りのもので、1回使っただけで捨てる容器じゃないんですね。徹底してますね」

数あるこだわりの中でも、1番は…?
武田菜奈果さん:
「うちは直接、農家さんからお野菜を仕入れていまして」
週に1回、車で約30分かかる農家に足を運び、買い付けを直接行っています。

シェフである夫の知典さんが目利きをして、旬の野菜を仕入れます。
武田知典さん:
「いろんな形があって、とてもかわいいですね、スーパーだときれいなものしか置いていないじゃないですか。こういういびつなやつがかわいいです」
知典さんによると、採れたての野菜に触れると料理のインスピレーションが得やすいといいます。
武田知典さん:
「野菜としゃべりながら料理を作るんですよ。会話するんですよ。どういうふうに彩ったらいい?とかこの子たちとしゃべって、料理がおいしくなるっていう」
武田菜奈果さん:
「料理している時に話しかけると怒られますね」
知典さんが真心込めて選んだ野菜を使った料理は、いったいどんな味に仕上がっているんでしょうか。

佐野祐子アナウンサー:
「きれい! 絵みたいに美しいですね。色鮮やか。せっかくなので葉付きにんじんから。すごいですね、皮もそのままだ。おいしそう!」

佐野祐子アナウンサー:
「いただきます!甘い! 野菜の味がすごく濃くて、ぎゅーっと濃縮されている」
武田菜奈果さん:
「あえて味付けはシンプルにガーリックオイルと塩、コショウのみ。素材の味を楽しんでいただけるような調理方法で提供させていただいています」

地元特産の七宝味噌を使ったオニオンスープは約1週間、継ぎ足し煮込んだシェフの自信作。
佐野祐子アナウンサー:
「すごい! タマネギたっぷり! とろとろだ! タマネギの甘みが出ていますね。普通のオニオンスープにはないお味噌のコクが加わってタマネギの味もすごく濃い。唯一無二のオニオンスープですね」
「ゴミを出さない」ためのささやかな心がけ

“ゴミを出さない”というレストランのコンセプトを提案したのは、妻の菜奈果さんです。
6年ほど前に環境問題に興味を持ち、ジョギングをしながらゴミを拾う「プロギング」を日本に普及させようとするなど、菜奈果さんはこれまで環境活動に携わってきました。

一方、夫の知典さんには「飲食店を開きたい」という思いがありました。
二人三脚でのオープンが実現し、レストランのコンセプトをどうするのかについて、夫婦で考えをめぐらせました。
佐野祐子アナウンサー:
「最初、コンセプトを聞いた時、ご主人はどう思いましたか?」
武田知典さん:
「マジで?ですよね。できるわけないだろうなという考えです。飲食店はやりたいけど、ゴミを出さないなんて。まあ、でも、この人が考えるなら何か策があって『未来があるからやるんだな』と思って、一緒にやろうと決意しました」
包装なしで仕入れができなければ食材を使わないなどの制約はありながらも、2人で知恵をしぼり「地球にも体にも優しいレストラン」ができあがりました。

佐野祐子アナウンサー:
「ぶつかることはないですか?」
武田菜奈果さん:
「ありますよ」
武田知典さん:
「めちゃめちゃ…ありますよ」

武田菜奈果さん:
「オープンから1周年を迎えた時に、7月の1か月間だけプラスチックを使わない『プラスチックフリージュライ』を宣言したいと思い立って」

武田知典さん:
「ある日、酔っ払ってケガしちゃって足が痛くて、湿布を貼っちゃったんですよ。湿布は、(ゴミが)出るじゃないですか。そしたら「それ、なに?」って話になっちゃって、もうめちゃめちゃキレられて」
武田菜奈果さん:
「宣言を果たせなかった理由が理由ですからね。それも、お酒に酔っ払って…。それで私も反省して、やっぱり、できることをやるっていうのが、いちばん持続可能なんじゃないかな」
“完璧を求めすぎると続かない”
そう気付いた武田夫婦の自宅には、無理せずゴミを減らすアイデアにあふれていました。
自宅では頑張りすぎず、できる範囲で取り組んでいるといいます。

武田菜奈果さん:
「水筒とかタンブラーは、繰り返し使えるものを活用しています」

武田菜奈果さん:
「この子ども用の靴は、サブスクで借りている靴です」
成長が早い幼児の身の回り品はすぐにサイズに合わなくなってしまうため、「サンダルを夏だけ借りて、時期が終わったら取り替えもできるので」と菜奈果さんは話します。
「ゴミを出さない」小さな工夫の積み重ねが、節約にもつながっています。
小さな行動ひとつひとつが、地球環境を守るための大切な一歩です。