
「高校生からお小遣いをやりくりしよう」10代からお金の正しい知識を身につけ、資産形成の準備を

2022年度から高校の家庭科の授業で「資産形成」が必修化されました。投資信託協会の調査(※1)によると、20代の投資商品の保有経験は2016年の13.3%から2023年には32.2%に大幅に増加しています。
お金の正しい学び方とは何なのか、ファイナンシャルプランナーの山口京子さんが金城学院高校の生徒に特別授業を行いました。
※1 投資信託協会「投資信託に関するアンケート調査報告書」(2016年、2024年)より
街は「株」と「債券」と「税金」でできている

山口さんは、私たちが暮らす街は「株と債券と税金でできている」と話します。
山口さん:
「例えば新しいおしゃれなカフェを全国にオープンしようと思ったらお金が必要です。そこで株を発行して投資家にお金を出してもらいます。そして投資家(株主)はそのカフェのオーナーに。お店が繁盛すれば株の価値が上がりカフェから『儲かりました!』と、オーナーに配当金や株主優待がもらえます。街に新しいお店が増えるのも企業が成長するのも株のおかげなんです」

さらに道路や電車の線路、新しい駅などは「債券」から生まれたものといいます。
山口さん:
「国や会社が債券という“借金の借用証書”のようなものを発行して、投資家からお金を借りることで新しい鉄道を作ったり、道路を整備したりできるんです。投資家は債券を買うと利子を受け取ることができ、期限が来ると最初に払ったお金が全額戻ってきます」

ちなみに「税金」は 病院、学校、道路、警察、消防 など社会を支えています。税金がなかったら「救急車を呼ぶのに10万円かかる」なんて世界になってしまうかもしれません。
山口さん:
「皆さんがコンビニでおにぎりを買ったときの消費税も『みんなが暮らしやすい社会』のために使われているんです」
お金の正しい使い方とダメな使い方

特別授業の後半は、街の話から高校生のお金にまつわる内容にスポットを当てました。山口さんは子どもの頃にもらったお年玉をすべて貯金し、その後、家の購入に使ったといいます。
山口さん:
「亡くなったおじいちゃんや、おばあちゃん、おじさんおばさんが頑張って働いてもらったお金を、毎年お年玉としてもらっていて。そのお年玉を38年間ずっと貯金していたんです。私は”良いお金の使い方”だったと思っています。お金の使い方には正解がありません。洋服を買ったり旅行に行ったりおいしいものを食べたりする経験に使うことも素敵なこと。みなさんが、『このお金、あって良かった!』と思ったときに使うのがベストでしょう」

一方、お金の使い方で気をつけたいのはクレジットカードの支払いです。クレジットカードでの買い物は、自分の信用でお金を借りて翌月お金を払う仕組みです。いわば“借金”です。中でも、翌月全額返済するのではなく、毎月一定額にして少しずつお金を返す「リボ払い」には要注意です。
山口さん:
「リボ払いは一見『少しずつ支払うから便利』だと感じます。しかし、支払いが終わらないままどんどん利息が膨らんで気づいたら“借金地獄”になっていることもあるんです。例えば10万円の買い物をリボ払い(年利15%、月5000円返済)で払うと、完済までに約2年かかり合計12万円以上も支払うことに! なんと2万円の利息がつくんです。
これを繰り返すといつまでたってもお金が貯まりません。リボ払いの金利は一般的に15%が多いんです。銀行の普通預金の金利は0.21%。普通預金の金利のなんと7万5150倍の借金を背負うことになります」
貯蓄のプロが伝授!正しいお金の貯め方増やし方

そこで山口さんは「正しいお金の貯め方」として重要なことを生徒に伝えます。
山口さん:
「ちなみにお金を増やすには順番があります。最初のステップはお金を貯めるステップ。これは出し入れしやすい『普通預金』が良いです。2番目のステップは、預けたお金が確実に戻ってくる『定期預金』『個人向け国債』。この1番・2番のお金を増やす土台ができてから、最後の3番の投資をします。
お金は急には増えません。じっくり時間をかけて増やすことが大事です」

国債は国が出している債券のこと。「国にお金を貸す代わりに利子がもらえる」という金融商品です。国がお金を集めるために発行していて、個人が買える国債を「個人向け国債」といいます。
山口さん:
「実は個人向け国債には年齢制限がありません。個人向け国債は高校生でも買えますし、1万円から近所の銀行や信用金庫といった金融機関で購入できます」
お金について興味を持つことが資産形成の第一歩に
高校生からやっておくべき、自分でもできるお金の学び方。それは今回の授業にもあった「そもそもお金とは何か」と世の中のお金に興味を持つことから始まります。今回の授業を終えて、生徒のお金に対する意識に変化はあったのでしょうか。

金城学院高校の生徒:
「今回初めて個人向け国債について知って、今までは株とか国債とか、すべて“難しい物”というイメージで、スリルのあるものというイメージが大きかったんですけど、私の年齢でも手を出せてお金が減ることがないと知って、とても身近なものに感じました」

山口さん:
「『投資は難しい』『税金はよく分からない』と言って、興味を持たない人が多いです。高校生であれば、お小遣いをもらったときに、自分のお財布の中でそれを1カ月の中で上手にやりくりできるかな? と管理をしていくことがお金と向き合っていくという学びになって良いと思います」
■山口京子さん
愛知県名古屋市出身、金城学院大学卒業。ファイナンシャルプランナー。フリーアナウンサーからお金好きが高じ、2000年よりファイナンシャルプランナーに。プライベートでは、マイホーム購入後、持ち前の貯めワザにより住宅ローンを2年で完済。テレビ出演のほか、「KOKUSAIには愛がある in あいち」イメージキャラクターに就任。新刊「お金も人生も薔薇色!老後計画」はじめ著書多数。