
反対派からも市長への不満が…豊橋市の新アリーナ事業は住民投票を経て“継続”へ 市長が望む「ノーサイド」


7月20日に参院選と同時に投開票を迎えた、愛知県豊橋市の新アリーナをめぐる住民投票では、賛成が反対を上回る結果になりました。市を二分する対立はこれで決着、ノーサイドとなるのでしょうか。
■「賛成」が約2万票上回る…止まっていた工事は動き出すのか
豊橋公園に「新アリーナ」などを整備する総額230億円の計画。アリーナ中止が公約の長坂市長と、推進派が多数を占める市議会との激しい対立を経て、「双方が結果を尊重する」として住民投票が行われることになりました。 7月20日、豊橋市内の結婚式場に集まった新アリーナ賛成派。参院選と同時に投開票を迎えた住民投票は、午後8時の投票締め切りと同時に賛成多数が確実となりました。 賛成派: 「すごいアリーナつくっちゃえば、ええじゃないか~!」

市民の高い関心を反映して投票率は65.67%。新アリーナ事業の継続に対して、賛成が反対を2万票あまり上回る結果となりました。 豊橋市民(賛成): 「(新アリーナを)つくることによって豊橋市が活性化すれば。それぞれの言い分はあるんですけれど、市民として仲良く共存共栄していければいいのかな」 豊橋市民(反対): 「おとなしく受け入れるしかないかなと思います。(市長には)少しでもいい方向に向かうように努力してほしいと思っています」

また、新アリーナを本拠地にする前提で、新しいトップリーグへの参入が認められているBリーグ『三遠ネオフェニックス』は、「クラブの想いに耳を傾けていただいた皆さまに深く感謝申し上げます」と歓迎のコメントを出しました。
■「ノーサイド」になるのか…
長坂市長は住民投票の前の取材で、賛成多数なら新アリーナの事業を進めると明言し、そのあとは「ノーサイド」と強調していました。 長坂尚登市長(6月30日): 「結果を問わず、ノーサイドになってほしいなと思っております」 しかし、勢いづく議会側は市長に対する攻勢を強め、不信任案提出の可能性も口にしています。

自民党豊橋市議団の山本賢太郎市議: 「8カ月間、工事が止まったという責任においては、長坂市長の判断には責任が出てくるかと思います。それについては今後、不信任案も含めて協議をしていくことになるかと思います」 一方、反対派の市民団体からも市長への不満が…。

反対派市民団体の藤田茂樹共同代表 「長坂市長の態度が不明確だった、これが一番大きいと思います。今少なくとも、契約を解除する立場であると言っている豊橋市から、もう少しなぜ解除するかの情報が出なければならなかった」 すんなり「ノーサイド」とはなりそうもない中、長坂市長は21日午後3時半から報道陣の取材に応じました。

長坂市長: 「賛成多数という結果をしっかりと受け止めてですね、事業を継続いてほしいという市民の選択だと判断して、そのように進めていく所存でございます。昨日の結了後から今までの間で、気持ちとしては切り替えたつもりです」 事業を速やかに進めると明言しました。 長坂市長: 「懸念されている課題、例えば交通環境のことであったりとか含めて、子供世代・孫世代にとっても負担を残さないような良い事業となるようにしていきたい」
■専門家 住民投票の結果は“市長にとっては痛手”
市長選と住民投票で二度にわたり示された“民意”。専門家は、投票率も高く、より直接的に賛否が示された今回の住民投票を評価しつつ、長坂市長にとっては痛手だと指摘します。

愛知学院大学の森正教授: 「『アリーナ反対』というのは、市長にとってまさに一番メインの政策だったがために、首長と反対の意見が勝利したということは、首長にとっては大きなダメージ。それ以外の首長が推進している事柄も、なかなか議会の承認が得られない。市政運営にとってはマイナスという言い方ができるかもしれません」 豊橋市の「ノーサイド」は実現するのでしょうか…。 愛知学院大学の森正教授: 「推進するかしないかの1か0の話で、間がなかなか見えてこない。どれだけお互いのしこりを、ある意味解消していく形で、この問題をどうプラスに働かせていけるかということが、推進派にも反対派にも望まれることなのかなと思います」
■市長への評価 「支持」が5割弱に
長坂市長ですが、東海テレビと中日新聞で実施した出口調査では、新アリーナ中止を掲げてきた市長への評価も聞いています。

「強く支持する」と「やや支持する」が合わせて5割弱なのに対し、「全く支持しない」と「あまり支持しない」は合わせて3割弱でした。

住民投票で新アリーナに賛成・反対した人のそれぞれでみると、反対の人だけでなく賛成した人にも、市長支持が一定数います。市長から民意が離れたとまでは言えないかもしれません。