【参院選/何で選ぶ?】“年収の壁”のその後…20万円アップで“働き控え”は解決したか? 参院選で問われる次の一手 各党の公約は?

国会での議論を経て、今年から“103万円の壁”ではなく、“123万円の壁”になった年収の壁。引き上げ幅20万円で働き方は変わるのか。現場を取材すると、喜びと諦め、二つの声が聞こえてきました。
“年収の壁”20万円アップで働き手に変化は?

愛知県江南市にあるスーパーマーケット「スーパーヤマト江南店」。手作りの惣菜がウリのお店です。
レジ打ち担当のパートで働く田中さん(仮名・44)は、夫と年中の子ども1人の3人家族。現在の時給は1177円で、夫の扶養に入りながら、午前中を中心に週4~5日、1日5時間程度働いています。
去年は“103万円”だった年収の壁。田中さんも、それを気にしていたひとりです。去年の取材では…。
田中さん(仮名):
「(夫の)扶養内でやっている形ですが、それ(103万円)を超えると税金とか支払いが増えちゃうということで、(103万円に)おさめるという形でやっている」※去年11月取材
年収が103万円を超えると、所得税の支払いが発生するほか、配偶者控除の対象外となり、夫の所得税や住民税の支払額が増えてしまうため、働けるのに働かない、いわゆる「働き控え」の状態でした。

去年の衆院選では、「103万円の壁」を178万円まで引き上げると訴えた国民民主党が躍進。与野党の攻防の末、今年から20万円引き上げられることになり、ボーダーラインは「123万円」となりました。
今年から引き上げられた「壁」。田中さんの働き方にも変化がありました。
田中さん(仮名):
「(手取りが)増えることでありがたい。子どもが小さいので子どもにかかるお金とか、貯蓄に関しても考えられることも増えてきた。自分にかけるお金はちょっと抑えていた部分はあったんですが、自分にかけるお金もちょっとできたかな」
“壁引き上げ”でも「シフト増やせない」 雇用側の苦悩

働き手の手取りは増える一方、雇用する側にも変化があったのでしょうか。
毎週水曜日に、2週間後のシフトを作るスーパーヤマト江南店の加藤店長。
実はこの店舗では、先月から売り上げを確保するため、これまで休みだった日曜日も営業することに。さらに、営業時間も延長しました。
スーパーヤマト江南店 加藤伸之店長:
「新規で募集をかけている。頭数を増やさないことには、どうしても所得制限の方が多数みえるので…」
「壁」を20万円引き上げただけでは、シフトは組みにくいままだといいます。
スーパーヤマト江南店 加藤伸之店長:
「一部のパートさんからは『(壁の引き上げで)20万円増えたよ』という声はいただきましたけど、月間で10時間あるかないかなので、1日あたりに直すと1時間もないくらい。各パートさんの勤務日数で考えると、実際に大きく勤務時間が増やせるかというと、そういうわけではないので…」

人手不足を補うため、周辺の店舗に負けない給料をと、先月、時給を上げました。すると今度は…
スーパーヤマト江南店 加藤伸之店長:
「パートさんからは『時給上げていただいたのはありがたいけど、ちょっと働ける時間を短くせざるを得ない』といただいている」
いまだに解消されていない、働き控えの問題。”年収の壁”は、どうあるべきなのでしょうか。
“年収の壁”による働き控え対策 各党の主な公約は?

働き手からは自分に使えるお金が増えたという声もあがった一方で、雇う側からは思ったほど働く時間が増えていないという意見も。
20万円の増額により一定の結果は出たものの、人手不足の中、“働き控え”を解消するにはまだまだ課題がありそうです。
参議院選挙では、年収の壁への対応以外の方法で働き控えを減らしていこうという考えもあるようです。各党の政策は以下のとおりです。
▼自民:物価上昇に合わせた基礎控除などの適時引き上げを含む税制改革を主張
▼公明:それに加えて社会保険料の“106万円・130万円の壁”の見直しを訴え
▼立憲:“130万円の壁“を“ガケ”と表現していて、落ち込む手取りを給付で埋めたい考え
▼国民:衆院選に引き続き178万円までの壁の引き上げを掲げる
▼共産:年収の壁の一層の引き上げを目指す
▼参政:年収の壁を今の倍ほどの212万円に引き上げると主張
▼保守:所得税で壁を解消して控除額の引き上げを訴え
▼社民:年収の壁の引き上げには賛成
▼維新:現役世代向けに“勤労税額控除”を設けたり社会保険料を年6万円減らしたりしたい考え
▼れ新:所得税の累進を強化して、中間所得層までの負担を減らしていく
どういった政策にすれば、気持ちよく働けて、雇う側も事業を続けていけるのか、しっかりと見比べていく必要がありそうです。