
中国が企む“孫子の兵法”戦わずして勝つ「新型統一戦争」食べるもの、電気使えない…相手国の心を潰す作戦

悲願の台湾統一に向け、中国はこれまで武力攻撃を排除しない方針を示してきた。ところが最近は、台湾をぐるりと取り囲む軍事訓練、海底ケーブルの切断、サイバー攻撃など、非軍事的なプレッシャーが際立つ。中国の“台湾統一作戦”に、変化が起きているのだろうか。
テレビ愛知の「激論!コロシアム」に出演した、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司さんは、中国の戦い方が“新型統一戦争”に変わったと指摘する。
相手国の心を潰す「新型統一戦争」

峯村健司さん:
「人民解放軍の上級大佐が2023年に書いた本に、“新型統一戦争”をする、とはっきり書いてある。私たちはミサイルを撃ったり、上陸したりするのではと思っていたが、そういうことはしないと。むしろ戦争未満、戦争に至るまでの段階で、相手国の心を潰すと書かれていた」
武力攻撃は、中国にとってデメリットの方が大きいという。
峯村健司さん:
「中国としては無傷で台湾を統一したほうが合理的。例えば半導体。無傷なら半導体のシェアを逆転できる。また武力攻撃をすると同胞に犠牲者が出て、統一後の統治が難しくなる」
また軍事ジャーナリストの井上和彦氏は、そもそも武力による統一は現実的ではないという。「軍事的に見て、中国が今の軍事力、海軍力で200キロ離れた台湾本島に侵攻するのはなかなか難しい。だから、戦わずして勝つという“孫子の兵法”で、民心を取り込もうとしている」
台湾の電力は天然ガスに約40パーセント依存し、その備蓄は現在、約10日間とされる。また食料自給率も約30%(カロリーベース)と日本と同様に低い。台湾がぐるりと海上封鎖されれば、エネルギーや食料の輸入が途絶。食べるものがない、スマホが使えない、お金もATMで下ろせない事態となり、中国と戦う気力すらなくなるという。それが新型統一戦争の狙いだ。
「新型統一戦争」なら、アメリカ手を出せず

気になるのはアメリカの出方だ。峯村さんによると、新型統一戦争は国際法上の戦争ではなく、アメリカは“何も手を出せない”という。
峯村さん:
「アメリカは、中国と台湾の平和的な統一を支持するという立場だ。武力の定義にもよるが、人を殺すのが戦争の定義だとすれば、人を殺していないよね、平和的だよねって言えてしまう」
戦いの性質が変わる中で、もし中国が台湾を奪ったら、日本への影響はどうなるのか。
日本への影響「地獄絵図」

日本向けの石油や食料は、90%以上が台湾海峡やバシー海峡を通って輸入されているが、この2つが海上封鎖されれば日本も干上がることは間違いない。峯村さんによると「海上封鎖だけで被害額は世界で360兆円、その最大の被害者は日本であり、地獄絵図になる」という。
また、軍事的な脅威も高まるという。これまで中国の潜水艦は、水深が浅い東シナ海を通るため日米の哨戒機で監視することができた。ところが台湾の東側に、中国軍が潜水艦の基地を作った場合は、いきなり3000メートル級のマリアナ海峡まで出られるようになり、追跡できない。気づいたら東京湾に中国の潜水艦が現れることが起こりうるという。
台湾問題は煽りすぎか

台湾問題をめぐってはメディアで煽りすぎとの声もあるが、同番組に初出演した経済学者の成田悠輔さんは、こう警鐘を鳴らす。
成田悠輔さん:
「一番危機的なのは、日本に危機感がないことだ。かつて日本は輸出大国だったのに気づいたら輸出できるのは自動車しかなくなって、今、自動車産業さえヤバイ。台湾情勢もある。社会保障の危機もあり、地震もいつくるかわからない。これぐらいヤバい状態なのに、日本人の平均的な心持ちは、いまだに昭和の平和な日本を生きている。これが1番まずい」