コロナが終わっても続く「孤独感」結婚や会社など「縁」が薄れたことが要因 自治体が独自に孤独対策も

新年度で環境が変わり心が不安定になりやすい5月。孤独や孤立状態を深刻にする危険性があるなどとして、国は毎年5月を「孤独・孤立対策強化月間」と定めています。愛知県豊田市は、その対策としてボードゲームを作成しました。
5月11日、豊田市能楽堂で行われていたのは、豊田市を模した異世界の街「トヨターシ」を舞台に、プレイヤーが勇者となり魔王を倒す旅に出るというボードゲームです。
担当者:
「カードが1枚あると思うですけど、これが皆さんの主人公になります」
魔王に打ち勝つための強さを手に入れる方法は主人公の「仲間を集めること」です。ボードゲームでは、仲間を集めて、全員の戦闘力を上げていきます。魔王を倒すには戦闘力が合計75以上必要ですが合計は63となり、魔王に負けてしまいました。
ボードゲームで孤立孤独問題を知ってほしい

ゲームは失敗におわってしまいましたが、参加者に感想を聞くと…
参加者:
「どんどん仲間が増えて楽しかった」
「とても面白かった」
ゲームを監修したのは豊田市です。一体なぜ行政がゲーム作りに関わっているのでしょうか。
豊田市職員 宮口顕汰主査:
「孤独対策基本法が施行されて、5月が孤独孤立対策の強化月間となりました。まずは多くの市民に孤独・孤立という社会問題を知っていただくため、企画しました」
国は新型コロナの長期化によって、孤独孤立の問題がよりいっそう顕在化しているとして、2023年から対策に乗り出しました。5月を対策強化月間と定め、メタバース空間によるイベントや、孤独や孤立に悩む人に寄り添う「つながりサポーター」の養成講座などを開催しています。
「孤独感」があると回答は“全体の4割”

国も自治体も孤独・孤立対策に乗り出していますが、どれくらいの人が「孤独感」を感じているのでしょうか。国が2021年から毎年12月に全国の16歳以上の2万人に行っている調査です。
「孤独感がある」と回答した人の割合は、2021年から2023年にかけて約4割で変化がなく推移しています。そして2025年4月末に発表されたのが、直近2024年12月の調査結果で39.3%です。コロナが収束して孤独感が少し和らいだかと思いましたが、約4割と変化はありませんでした。
コロナ禍収束でも「孤独感」なぜ

コロナ禍収束2年でも変わらない「孤独感」いったいなぜなのか。孤独や孤立に詳しい専門家に話を聞きました。話を聞いたのは、現代の孤立問題などに詳しい早稲田大学の石田光規教授です。
早稲田大学 石田光規教授:
「潜在的に日本社会では孤独感を感じる人が一定数いたというのがはっきり出た。コロナによってそれ(孤独に)に注目が集まっていたが、基本的には2000年代あたりから孤独・孤立の話がでてきていて、そこがはっきりと出てきたのがコロナだった」
2000年代から孤独感が問題になった理由とは…
早稲田大学 石田光規教授:
「私たちの社会は結婚や会社という大きな縁に取り込まれて安心した生活をするという人生。そういったものが衰退したのが2000年代。長いことつながれるのか、継続できるのかという不安。そうなるともしかしたら1人になるかもということで孤独感を抱く」
しかし、“好きで1人でいる”という人もいるかと思いますが、孤独・孤立が進む社会は悪いことなのでしょうか。
早稲田大学 石田光規教授:
「僕自身の認識としては、個人には医学的にも心身に大きなマイナスがあるということで対策が必要。社会という点で考えると社会の分断が起こる。他者に共感する、温かい思いを持つというということができなくなるので、社会全体にもマイナスにはなる」