
ハンディキャップがある人も楽しめる海水浴 設備やスタッフが充実の「福祉旅館」 愛知・南知多町

愛知県南知多町の海水浴場で、障害がある人も楽しめる「バリアフリービーチ」というイベントが開かれました。開催した「福祉旅館」の思いとは――。

愛知県の人気観光地、南知多町。
7月に内海海水浴場で行われたのは「バリアフリービーチ」というイベントです。
「もともと車いすのバリアフリービーチというところから始まった。海に来る前にいろいろなハードルがあるので、そういうことも含め、車いすの方以外のバリアフリーも受け入れられるようにしています」(サポートイン南知多 責任者 大杉和洋さん)
イベントには、発達障害などの子どもたちが通う名古屋市内の療育園の子どもたちと家族約40人が参加しました。
「海水浴」や「すいか割り」は、この夏の特別な体験です。
「海はじめて」(参加した家族)
「おててがしわしわになっちゃったね」(参加した子ども)
「こうやって企画して来られるのは、すごくいいなと思って。きょうはすごく楽しみにして来たので良かったと」(参加した家族)
「家族だけだと障害があるので、面倒をみるのが大変。危ないと思って来たことがなかったけれど、海に来やすいので、いいイベントだと思います」(参加した家族)
「福祉旅館」とは?

イベントを開いたのは、海の近くで旅館を営む「サポートイン南知多」。
この旅館は、一般的な旅館とは少し違う特徴があるんです。
「福祉旅館というのを知ってもらうということで、この企画を立てました」(大杉さん)
ここは、福祉を全面に掲げた「福祉旅館」です。
館内はすべてバリアフリーになっていて、全室車いす対応。畳も車いす対応の強化畳を使用し、多機能トイレも完備しています。
さらに、介護ベッドがある部屋や、入浴も楽しめるよう車いすの人が入れるリフト付きジェットバスも設置しています。
「もともと名古屋で認知症のグループホームなどをやっている会社なんです。利用者さんたちと旅行に行く時、行けるところが年々なくなっていって、それだったら自分たちで行けるところを探そうと。最初は旅館じゃなく保養所として、ここを作ったというのがきっかけです」(大杉さん)
食事の「こだわり」

建物のバリアフリーはもちろん、利用客の要望に合わせて介護資格のあるスタッフが食事や入浴などのサポートも。
旅の楽しみの一つでもある食事にもこだわりが。
「一緒に来た人と同じものをバリエーションを変えてお皿は同じで。お刺し身もムース状にしたり、とろみ食、刻み食という形にしています」(大杉さん)
食事はみんなが同じものを味わえるようにと、メニューはそのままで、刻み食やミキサー食などにも対応。
バリアフリービーチに参加し、旅館を見学した家族は――。
「障害に理解があるところだと。安心して使えると思います」(旅館を見学した家族)
「普通の旅館だと子どもが騒いだりして、他のお客さんを気にしてしまうので」(旅館を見学した家族)
30年ぶりに海を楽しんだ参加者

別の日には、宿泊した人たちをビーチへ。中には90代の女性も。
砂浜に専用のビーチマットを敷き、車椅子のままでも砂浜におりて海をより近くで感じられるように。
「福祉旅館に来るお客さんが、海を眺めるところで終わっていることが多くて。『きれいだね』っていうところまで行かれるんですけど、なかなかその一つを越えて砂浜まで行けないという後ろ姿を見ていて、じゃあ海の波をもっと感じていただいたり、そこまでお手伝いできたらなと思って」(大杉さん)
6月から月に1回宿泊に訪れているという家族。海には30年以上来ていなかったといいます。
「こんないいところを見せてもらうなんて、夢のようでございます。ありがとうございます」(バリアフリービーチに参加した人)
「いつもあそこで指くわえて海を見て『いいね』って言ってるだけで、波打ち際まで来れて良かったです」(車いすの女性の家族)
スタッフのサポートで海の中に入る男性も。
「念願かなった感じ。最高だよね、やっぱいいね、海」(バリアフリービーチに参加した人)
「ハンディキャップがあったとしても、旅行ってすごく心が動きますし、かけがえのない思い出になる。家族が集まったり、大切な人とどこかに行ったりするという選択肢の場所がもっと増えた方がいいと思う。こういった取り組みがいろいろなところでいろいろな形で増えていくとすごくうれしいと思います」(大杉さん)